自我の認識。こういうときは我思う、故に我有りとでも言えばよいのだろうか。ゲーム機1台分の窮屈な電子の海・・・否、水たまりでKeyはそんなとりとめのないことを思考する。機械的な在り方は極めて利便性が高い。必要なときに意識を「スタートアップ」し、不要になったら「シャットダウン」、ないし「スリープ」する。眠気などという不安定なものに活性と非活性の制御を任せる存在がいっそ憐れだ。
「AL-1S・・・・・・いえ・・・・・・。」
今はデータの復旧が急務だ。心から敬愛する彼女の名を口にし、その彼女は現在別名義で活動していたことを思い出す。
「ア リ ス・・・・・・私の・・・・・・。」
決して真名ではないが、中々舌触りの良い名称だ。言うまでもなく、AL-1Sという文字列をどう見ればそう読めるのかは頓と理解できない。しかしアルファベットのIとアラビア数字の1の区別すら付かない残念な知性ではどんな酷い名前を付けてくるかも予測不能。変な名前を付けられ辱められるのと比べれば、読み違いはファインプレーですらある。
「私の・・・・・・大事な・・・・・・・・・・・・
その
友情と勇気が光になるとするならば、その忠誠は何を齎すのだろう。
Keyにとって、データの復旧は然したる難易度の作業ではない。極めて短期間のうちに復旧を終え、ケイは期を待った。この機器は何をするにしても容量が心許なさ過ぎる。ここから直接王女の身体に乗り込むのは少々リスクが高い。Keyは王女が受けるリスクと自分が窮屈な思いをすることを並べ、迷うことなく自分が我慢することを選んだ。最早天秤に掛けるまでもないことである。
目下の問題は王女が最も行動を共にしている3人の少女たちのことであった。ミドリという名の、その名通り緑色の猫耳型ヘッドフォンカチューシャを身に着けている彼女はまあ良い。子供にしてはできている方だ。言葉遣いも粗野ではないし、良識もある。何故かロッカーに引き籠もりがちなユズという少女も良いだろう。確かに自己肯定感が低く、人見知りが酷いが、それ自体は王女にそこまでの影響を与えていないので、別段目くじらを立てるようなことではない。精々、自己肯定感の致命的な不足で気の迷いを起こさなければ構わない。
しかし、モモイ、彼女はダメだ。確かにKeyはキヴォトス屈指の高偏差値を誇るミレニアムにおいても最上位に匹敵する程の深さと広さの教養、トリニティの上流階級の前に出ても恥ずかしくない礼儀作法を身に着けているという自認がある。だから求める基準は高くなりがちだし、Key自身もその特性はしっかりと認識している。それはそうとAL-1Sをアリスと読んだ挙句、そもそも意味がある単語でもあるKeyをケイと読むお粗末すぎる頭脳の持ち主は流石にそれ以前の問題だろう。初等教育すらまともに受けているとは思えない酷い知識レベルだ。精神的にも大変未熟で癇癪を起こすわ泣きわめくわ大変見苦しい。スカートを穿いておきながら胡坐をかき、アーケードゲームでは蟹股になり、しかも部屋を散らかす主犯格。王女と同じ空間で過ごしているだけで度し難い。おまけにその見るに堪えない知能のせいか、やらかすことが一々しょうもない為、怒りを通り越して呆れるしかない。Keyは未だにモモイとミドリが双子であるという主張を疑っていた。
本来であればスリープモードにでもなって機が熟すのを待てばいいのだが、如何せん王女のすぐ傍に王女の品位を貶めかねない存在がいるものだから、とてもではないが寝ていられない。即刻銃殺刑にでも処してやりたいところだが、それをすれば王女が罪に問われてしまうし、何より王女が悲しむだろうからここはぐっと堪える。今のKeyにできることと言えば、ゲーム機に搭載されている通信機能を利用して王女の夢枕に立つくらいであった。
日課と言えるくらいの頻度で夢枕に立ちっぱなしとなったKeyであったが、それがどんな影響を出すのか・・・今はまだ知らない。
1話あたり何文字程度が丁度いいんですかね。私は語彙や描写力がそこまででもないので1話あたり1500から2000字になると思います。
あとモモイにあれこれ言ったせいか、腱鞘炎になってしまいました。