「うむぅ・・・。」
アリスは目を覚まし、大きく伸びをする。場所はいつもの部室、周囲にはモモイとミドリが寝息を立てており、ロッカーにはいつも通りユズがいることだろう。皆で寝落ちするまでゲームをして、部室で朝を迎えるのは彼女たちにはよくあることだった。
ここ最近、アリスは毎日のように同じ夢を見る。自分とよく似た姿の人物とお話をする夢だ。夢であるために、その内容を深くは覚えていない。ただ、確からしいことといえば、その人物はアリスと姿が似ており、なおかつアリスのことを大切に思っているらしいということだ。特に後者は、根拠こそないもののはっきりと伝わってきていた。
「さてと、まずは掃除から始めましょうか!」
ゴミやクッションなど様々なものが散らかり放題の部室を見回すと、むんと気合いを入れながら立ち上がる。掃除は大切だ。先生も夢の中のそっくりさんもそう言っていたのだから間違いない。
元から散らかしっぱなしでも平気だったし、今でも散らかっている状態に忌避感はない。ただ、掃除というのは始めてみると中々に楽しく、アリスは結構ハマっていた。綺麗好きかはさておき、掃除好きとは胸を張って言える。
鼻歌を歌いつつ、それなりの手際で片付けていく。ゲーム機は棚へ、ゴミはゴミ箱へ。ガサガサ、ゴソゴソと物音を立てながら掃除をしているとミドリが起きてくる。
「あっ、ミドリ!おはようございます。」
「おはよう、アリスちゃん。」
起きたミドリと2人でガサゴソ。昨晩プレイしたゲームの感想を言いながら片付けていると今度はユズがロッカーから顔を出す。
「おはようございます、ユズ!」
「お、おはよう・・・」
出てきたユズを入れて3人、力を合わせればテキパキ進んでいく。この物をあるべき場所に戻していく作業がとても楽しいものだ。そうして部室がすっかり綺麗になって、やっとモモイが目を覚ます。
「モモイ、おはようございます!」
「おはよ〜。今日もありがとうね〜。次こそは手伝うから・・・」
1番寝ていながらも、眠そうに目を擦りながらお礼を言う。
「それもう何回も言ってるけど、結局1回も起きれてないよね、お姉ちゃん」
「うっ、だ、だって〜」
ミドリが現実を突きつけ、モモイは慌てて弁明をしようとする。ゲーム開発部の、いつも通りの朝だ。
そう、確かに朝はいつも通りだった。1件のモモトークから運命の歯車が回り始めることを、このときの4人はまだ知らない。
「あっ!アリス、先生を発見しました!」
そう言って、アリスは笑顔を浮かべながらとてとてと先生の方へと駆け出した。その後ろにはゲーム開発部の皆がいる。
「やっほー先生!・・・どうしてここに?」
”ヴェリタスに呼ばれてね・・・、みんなも?”
アリスに続いて先生に駆け寄ったモモイが質問を投げかけ、先生もそれに答えると質問を返す。ぞろぞろと、というには人数が少ないが、比較的小柄なゲーム開発部の4人が大人である先生に群がる様子は中々微笑ましいものである。
「うん!マキから面白いものを見つけたって連絡があって!」
「何かインスピレーションをもらえるんじゃないかな、と。」
「今日はなんとユズもいます!」
「うぅ・・・。」
ワクワクとしてテンションが高いモモイ、あくまで真面目な顔をしたミドリ、ある意味いつも通りのアリス、既にぐったりとしているユズ。三者三様ならぬ四者四様とでも言いたくなる状態だ。しかし4人とも、その瞳はキラキラと輝いている。
”それじゃあ、入ろうか?”
その様子に思わず笑みを浮かべながら、先生はヴェリタスの扉を開いた。