「単刀直入に聞くわ。貴女はあの力、どの程度制御できているの?」
「・・・正直、難しい状態です。アリスはあれを1人で扱うことができません。」
いきなり、一瞬だけ言うかどうか迷う質問が来る。しかし誠実に話すと決めた以上、嘘は言えなかった。その返答に、リオの顔は少し険しさを増す。だが、リオという生徒はそんな状態で思考を止めるようなことをしない。
「そう、協力者が必要なのね・・・。でも、あの場にそんな人はいなかったはずよ。」
「はい、彼女は・・・アリスの中に居ます。」
自分の中というと二重人格だろうか。いいや、そんな単純な話ではないだろう。言うまでもないことだが、リオは当然アリスの性格を把握している。だからこそ不可解だった。
「何故プロトコルATRAHASISが1度実行されたのか。そして、何故、止めることができたのか。貴女1人でどうこうできるものじゃないというなら、どんな流れでそれが為されたのか。」
リオは腕を組み、疑問点を端的に言葉にする。ゆっくりと閉じられた瞳が開かれ、その疑問点をアリスに真っ直ぐぶつけていく。
「・・・あれは、チュートリアルでした。アリスに、力の使い方を教えるための。それでいて、アリスが嫌な事をさせない。不思議な体験でした。あの人は、きっと、アリスの言ったことには従ってくれます。」
アリスは、ポツリポツリと感じたままに話した。アリスの話す人物像が正しいならきっと悪いようにはならない。
しかし、そんな保証はどこにもないというのも事実だ。
「その人と、直接話したいわね・・・。」
「基本的に、夢の中でしか会えないので。」
リオはアリスのやんわりとした否定に対し、睡眠中にダイブ装置で精神世界に入ればいけるか?などとややおっかないことも考えるが、流石にリスクが高すぎるのですぐにボツにした。
「・・・取り敢えず、拘束は解くわ。」
これ以上拘束していても大した意味はないと考え、アリスに身体的自由を与える。恐らく、アリスを質問責めにしてあまり情報は得られない。上に立つ者が力を持ちすぎると好き勝手してしまうかもしれない。しかしその立場の者が指示待ち人間のような思考回路では世界は変えられない。だから敢えて「名もなき神々の王女」たるアリスには知識も力を振るう権限も与えず、その下に忠実さと知識と力を振るえる者を用意する。なるほど、確かに一定の理があるとリオは勝手に納得した。
すると気になるのはこの「協力者」が誰に忠誠を誓っているのか、だ。アリスに誓っているなら何も問題はない。幸いにもアリスは「勇者」とやらに憧れているようで、リオとしては是非ともそのままその道を突き進み、ついでに何かの手違いで世界が滅びそうになったときにその力を存分に振るって世界を救ってもらえれば万々歳だ。合理の化身を自認するリオは、危険な力でも世界を救えるならいくらでも利用し尽くすくらいは平然とやってのける。
しかし、これが「名もなき神」たちに忠誠を誓っているなら問題しかない。前回のあれがリスクとリターンを考えて、アリスに従うフリをして体よく力を隠しただけなのだとしたら?その前提で考えれば、あれは自陣営の脅威度を見誤らせ、さらに己の立場を誤認させかねない妙手とも取れる。しかもアリス曰く、その者は夢の中では接触できる相手だ。アリスにどんな情報を与えているのか・・・は夢という記憶の定着が難しい場だから優先度の低い悩みとしても、単純接触効果は期待できる。利用するつもりでそういったことができるタイプなのだとしたら相応に厄介だ。
リオはアリスをヒマリに預けて、思考に没頭する。如何にしてこの「協力者」の立場を明確にするか。リオは自らの手札から、「アリスの身柄」をまず切った。