いつかサクラ軍団を題材にした小説を書きたかったので。
やっぱり嬉しいですね。
『スピードのサクラ、スタミナのメジロ』
これは同時期に活躍した伝統的に豊かなスピードを持つ競走馬が多かったサクラ軍団と伝統的にステイヤー育成が盛んだったメジロとの対比を表した言葉だった。
70年代後半~90年代にかけてのサクラ軍団は
サクラと聞くと何が思い浮かぶだろうか。
1400メートル以下では12戦11勝という成績を記録した日本競馬史上最強スプリンターとも評された
サクラバクシンオーか。
はたまたグランプリ史上初めてサクラの名前を刻んだ1996年年度代表馬
サクラローレルか。
それともマイルから中距離を主戦場として圧倒的なスピードを誇り天皇賞(秋)でミホシンザンを破った
サクラユタカオーか。
それぞれのサクラ軍団の快速馬達が思い出されるだろう。
しかしサクラローレルがフランス遠征時に故障を発生し引退後、サクラ軍団の勢いに陰りが見えてきた。
サクラスピードオーやサクラエキスパートなど重賞馬を輩出するもG1には届かず、サクラエキスパートが勝利した1997年の愛知杯からは重賞から遠ざかっている。
そんな中2001年4月8日、現在の北海道日高郡新ひだか町静内田原にある古和牧場である1頭の牡馬が誕生した。
「キャンドルよくやったぞ!」
キャンドルとスタッフから呼ばれたその牝馬は自分が産んだ仔馬の濡れた体を舐め、仔馬を可愛がっているように見えた。その仔馬は通常生後30、40分かかるところ、15分という早い時間で立ち上がり、スタッフや場長らはこの仔馬に少しの期待を抱いた。
「ロータリーとキャンドル… 大島さんが吹っ飛んでくるぐらいの血統だよ、こりゃどんな反応するか楽しみだ」
大島さんというのはサクラ軍団の多くの馬の主戦騎手を務めた大島太だ。八大競走•G I競走10勝含む重賞84勝を記録。このうち重賞勝利の半分はサクラ軍団であった。1996年2月をもって騎手を引退し調教師に転向。
去年にはイーグルカフェという外国産馬でNHKマイルカップを勝利してGIタイトルを調教師として初めて手に入れ、これからの調教師としてのキャリアも気になる人物だ。
大島が吹っ飛んでくるとまで言わせる血統はまさに
『サクラの結晶』
父でありロータリーと呼ばれていた馬は静内スタリオンで種牡馬として供用されていたサクラロータリーである。供用されていたというのは今年で種牡馬生活最後の年となるからである。用途変更となりどこかに保護されるのだそうだ。
母でありキャンドルと呼ばれていた馬は古和牧場で繁殖牝馬として繋養されているサクラキャンドルである。大島の引退年にエリザベス女王杯を勝利した牝馬であるがその良質なスピードを産駒に伝えることはまだできていない。
この配合はまさにサクラ軍団のスピードの結晶。
父系のトウショウボーイ、母系のサクラユタカオーともに、日本の高速な芝のG1を勝った日本最高峰の芝スピード血統で、テスコボーイ の3 × 3という非常に濃いクロスは体質の弱さや気性の激しさを生むが牧場・厩舎の調教などでカバーできれば、芝の「スピードの絶対王者」が誕生する夢の配合だ。
そして日本を彩る名血の融合。シンザン、トウショウボーイ、サクラユタカオー、ノーザンテーストという、1970〜90年代の日本競馬の黄金期を築いた血がこれでもかと凝縮された配合でもある。
ロマンの塊のような血統の仔馬はそんなことを気にする素振りはないようで、母であるキャンドルの初乳をごくごくと飲み始めた。後に2004年にクラシック戦線を戦うことになる04世代を大王と共に代表する競走馬となることを誰も予想できなかった。
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目が覚めると視界は真っ暗で何も見えなかった。
まだ真夜中なのかと錯覚してもう一度目を閉じてみるが何かおかしい。そういえば窓からの光も見えないし横に置いてあった充電中のスマホも無い。そう考えているうちに引っ張られるような感覚にあった。
抗えずなされるがままにされると、一気に光に包まれた。
自分の周りを取り囲むのは人と……馬。
意識が覚醒し出す頃には馬に体を舐められていた。
…どうやら俺は馬になったらしい。
ご覧頂きありがとうございました。
良かったと思いましたら次話を気長にお待ちください。