今度は人視点onlyです。
どうぞ。
牧場の入り口でこの古和牧場の場長である山岡とスタッフの柏木がもうすぐ到着する、ある馬主と大島を待っていた。伝えられていた時間より早めに到着するとの連絡を受けて事務所から入り口までの長い長い道を早歩きで来た2人だったがどうやら早めに出過ぎたようで車の影すら見えなかった。
それから少し経って馬主と大島を乗せた車がやってきた。
あまり高級車ではなかったが運転手がいるようだ。
「いやはやお久しぶりです、全内さんと大島さん」
Furuwa Farmと書かれた牧場関係者しか持っていない帽子を取り、頭を下げて挨拶する2人。
全内と山岡に呼ばれていた人物は
もっともサクラ軍団の黄金期を築いたのは全内植でGI勝利した競走馬を挙げても10頭以上いる。主な活躍馬を挙げるとすると
サクラバクシンオー 主な勝ち鞍 スプリンターズS
サクラショウリ 主な勝ち鞍 東京優駿
サクラチヨノオー 主な勝ち鞍 東京優駿
などなど。
ちなみに横にいるニコニコしている大島が上に挙げた3頭のうち2頭がデビュー戦から全戦騎乗している。例外だったサクラショウリはデビューから3戦以外はすべて大島が騎乗しているためほぼデビュー戦から騎乗しているといってもいいだろう。
「こちらこそお久しぶりです。中々分場に来れなくて申し訳ない限りです」
分場、というのはこの古和牧場は山岡牧場の分場。いわば山岡牧場の別拠点ということだ。
ここで山岡牧場について解説しておこう。
山岡牧場とさくらトレードコマンス(全内植)の結びつきの強さは競馬界で広く知られていたが、両者の繋がりはまずサクラ軍団の大半を管理することになる堺が山岡牧場の牧草の素晴らしさに目を留めて取引をしたことに始まった。
境が谷岡牧場から購買した第一号馬ダイイチテンホウは最初の馬主を経て全内に渡り、山岡牧場、堺勝太郎、全内植のトライアングルが築かれた最初となった。
その後、全内は生産馬の欠点も包み隠さず明らかにする山岡幸一の心性に打たれ、堺が難色を示すような馬まで含め、生産馬をほぼ丸ごと購買するようになった。
ということでさくらトレードコマンスと山岡牧場の結びつきは非常に強く、それは分場である古和牧場も例外ではない。
「全然…構わなくはないんですが… まあたまに顔は出してくださいね。早速見て行かれますか?サクラキャンドルの2001」
「ええ、大島さんが飛行機の中でも車の中でもずっとその子のことを考えているようで。困りましたよ」
やめてくださいよと少し恥ずかしそうに顔をぽりぽりと掻く大島。余程見るのが楽しみだったようだ。
そうして当歳馬たちが集う放牧地へと4人は足を運んだ。
全内と大島は久しぶりに訪れた分場を自然の美味しい空気を吸いながら前にいる2人について行った。
そうして着いた放牧地では丁度当歳馬たちが走り回っていた。その中でもやはり一際目立つのは他馬を突き放しリードを広げている鹿毛の馬だった。
「あの先頭を走っている馬は?」
「はは、あれがサクラキャンドルの2001です。スタッフからは2001年生まれなのといつも先頭を走っていることをかけてイチと呼ばれていますよ」
全内は先頭を走るイチの姿に夢中で息を止めてしまっていた。大島も険しい目付きでイチを見ていた。
「尚さん、ありゃ良い馬ですよ。テスコボーイの血を引いてるだけあって仕上がりも早そうです」
「確か父親はサクラロータリーでしたね、父も相当思い入れがあったようで。大島さんもね」
全内植は大島と同様にサクラロータリーの才能に惚れ込んでいたようでこの未完の大器をここで終わらせる訳にはいかないと種牡馬入りさせたのだ。
「ロータリーは特別な馬でしたよ、乗っている時に思ったのはトウショウボーイじゃなくてシンザン。トウショウボーイのシュッというスピードというよりも、シンザンみたいにグーッと沈み込んでどこまでも伸びていく、そんな走りをする馬だったんです」
「なるほど… イチもそんな走りをしているんでしょうか」
柏木はシンザンが実際に走っている所は見たことがないため、イチの走り方がどのようなものか表すことはできない。しかし、才能を感じさせる走りをしていることは分かっていた。
「あの走りはなんというか… 理想系のような走り方ですね。競走馬の」
「理想系…ですか?」
全内は大島が放った理想系という言葉の意味が深くは分からなかったようで大島に理想系とはどんなものなのか質問した。
「トウショウボーイのしなやかなフォームと、サクラユタカオーの圧倒的なピッチ・ストライドが融合したような感じです。綺麗な回転で前肢を大きく伸ばして叩きつけるスピード感あふれる回転の早い大飛びなフォームですね」
「それではどちらかというとトウショウボーイよりかはシンザンの方が似ている走りということですか」
「そうなりますね、おっと。走り終わったようですね」
4人がイチのことについて話しているうちに当歳馬たちが放牧地の中を走り終えたようだ。
「よろしければ連れてきましょうか?」
「いいんですか柏木さん?では、お言葉に甘えて」
どうやら全内ももっと間近で見たかったようでいつ言おうか少しタイミングを伺っていたところだった。心の中では柏木に大いに感謝している。
少し時間が経って手綱もなしにまるで犬のように柏木の後ろをついてきたイチ。その光景を信じられないようで目を丸くする柏木以外の3人。しかもさっきまで走っていたのに息切れもしてないようだ。
「柏木さん、手綱は…?」
「ああ、お2人には言っていませんでしたね。イチは手綱が要らないんですよ、言葉が伝わっていると言いますか。こちら血統表です」
イチには手綱が要らないという事実を揉み消すように柏木は血統表を2人に渡した。勢いで押し切られた2人は困惑しながら血統表を見る。
「テスコボーイ、トウショウボーイ、シンザン… ユタカオーにノーザンテーストとは!テスコボーイのクロスが少し気になりますがこれは良いですね!」
「イチはまさにサクラ軍団の結晶とも言える日本屈指のスピード血統ですよ!」
血統表に載っている名前は名馬ばかり。
父サクラロータリーと同じ良血として期待されそうだ。
父父トウショウボーイ、母父サクラユタカオーという日本競馬史を代表するスピード特化型の遺伝子が限界まで強調され、東京や京都のような直線が平坦でスピードと瞬発力が問われる舞台で真価を発揮しそうな血統だろう。
「さくらトレードコマンス代表取締役社長としてこの馬を買わない訳にはいかないでしょう!馬体も良いし流星も子供の頃見たユタカオーに似ています」
「テスコボーイ系やノーザンテースト系は仕上がりが早いのが武器ですから2歳戦から活躍できそうですね、競走馬寿命をいかに伸ばすかは腕の見せ所ですよ」
2人はもうイチを買う気のようだ。
おそらく何千万何億と出されても即決するだろう。
「ありがとうございます!金額の詳細はまた後日送らせていただきます。改めてサクラキャンドルの2001を購入して頂きありがとうございます!イチもこれでサクラ軍団の仲間入りとは…」
感慨深そうに笑う山岡。
繁殖牝馬もサクラ冠名の馬が多く、母親と同じくそのままサクラの軍門に下るということは育成者からしたら安心するのだろう。
「良い馬をありがとうございます、楽しみですよ。本当に」
馬名を募集するか悩んでいます。
UAが伸びてくれればこの後書きを見てくれる人も増えてくるとは思うのですがイマイチUAが伸びなくて…