この頃、王都のパンはもう…本当にひどい物で、たったの一口で舌がざらつく。
不思議に思い、パンをちぎってよく目を凝らしてみるとおがくずが入っていて、怒りのあまり「二度と食べるものか!」とその店に怒鳴り込んだこともある。今考えるとやりすぎた。
しかし、今は良い店を見つけたのでもうそんなことはない。値段は高いが。
それと、この店には最近はもう一つ通う理由ができた。
最初のうちは美味しいパンを食べる為だったが、いつしか店番の子を目当てに来るようになった。
ちょっと口数の少ない子だと思ったが、通っているうちに他愛のない会話をよくするようになった。今では楽しみの一つだ。
買ったパンをダメにした時、タダで新しいものを作り直してくれたことがある。
「いらっしゃい」
あいも変わらず淡白な子だ。
「どうも。今日はなにがおすすめで」
「今日は…それだね」
彼女はやけに値段の高いマフィンを指さした。
目を疑う価格だった。
「よ、47ヒーン?」
普通なら3ヒーン程度だろう、なんだその値段は。
「そう。47ヒーン」
「なんだってそんな高い値段…」
「それに、47ヒーンもあれば…ワインが買えるじゃないか。」
しゃべりながら、店の中のパンを物色する。
お。これとかいいな、焼き立てだ。
「ワイン? それはどんな?」
彼女はワインという単語に突っかかった。
「まあ例えば…アグニアのかな?」
銘柄は思いつかなかったので、濁した。
あ、あれがあったか。アロ・マリーニ。
「アグニア。へえ」
興味がなさそうだ。
「これ、お願いするよ」
カウンターにパンを置いた。
「ベーグルね、13ヒーン。」
「13ヒーン?この前より4ヒーン高いね」
財布を取り出す。
「ガラーヌの戦争のせいで、この頃は小麦とかが入ってこないの。」
彼女が喋り始めた、やっぱり不満があるのだろう。
「なるほどねぇ」
「他の店は色々工夫してなんとかしてるみたいだけど…うちは、ちゃんと美味しいのを食べてもらいたいから」
「ああ…」
苦笑い。だからか、あのパンは…
店番の娘はそう答えた。私もあれはもう二度とごめんだ。
「まあ、私も助かるよ。あ、そのままでいいよ。食べながら帰るから」
「いつものことだけど、行儀が悪いね。」
ちょっと笑った。
「別に気にする必要はないでしょ。お母さんじゃないんだから」
彼女は眉をひそめた。
「はい、13ヒーン」
「うん、ちょうど。」
「じゃ、また明日来るよ」
店を出て、ベーグルをひとくち。
「あれ?いつもより甘いな。」
小説って書くの疲れるね…