仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件 作:熊鏡
タバコを吸い終わった俺たちは個室の居酒屋に移動していた。
「⋯今日個室なんすね」
「安心しなよ。手ェ出さないから」
「普通逆では??」
「え?行く?」
「だから別サイト誘導やめてね」
「なにそれ?」
「何故か言いたくなって」
「ああそう、え?Pから「やめて」」
そっちじゃねえから。
「ああ
「違うって」
「もうひとつのP?」
「偏在じゃなくて移動しろよP」
「その点P嫌い 」
「わかります」
なんだよ動く点Pて。動くんじゃねえ!!!
じゃなくて。
「すぐえっちな方持ってくのやめてね」
「えっちな方って認識してるのは蓮くんだから蓮くんが悪くない?」
「うるさすぎだろ」
優奈さんが悪いだろ絶対に。
「んふふ」
「なんすか」
「なんかねえ。今蓮くんとお話して一緒にお酒飲んでるの不思議だなって」
私は眺めてるだけだったからね。
と、手の中でグラスを遊ばせながら優奈さんは俺を見つめる。
「ね」
「なんすか」
「好きだよ」
空いた左手に手を絡められる。
逃げられない。逃げようとも思えない。
「好き」
「ぐぬ⋯」
「蓮くんは私が嫌い⋯?」
「嫌いなわけないですけど⋯ 」
「じゃあいいじゃん。お試しでもいいんだよ?都合のいい女として付き合ったっていい」
ねぇ、私と付き合ってよ。
昏く、確かな艷を宿した黒い瞳と目がかち合う。
吸い込まれそうなくらい綺麗で、俺は気づけば
「はい。よろこんで」
「よかった」
これからよろしくね。と蕩けそうな笑顔で答える彼女を見て、俺は致命的な何かを間違えた気がした。
「じゃあ、これから恋人だね」
「そう、ですね」
「よろしくね。蓮くん」
絡ませられた手はより深く、その細さと柔らかさに心臓がドクンと音を立てた。
「じゃあ、今日は恋人記念の日だね」
「そう、ですね?」
「ぱぁーっと飲もうよ」
潰れちゃうくらい。
ドロドロと重い視線がのしかかるようにかかる。
色を宿していて、執着すら見えてきそうな眼に尻込みをしそうになって、
「いいですね」
もういいや。と踏み込んだ。
ぐしゃぐしゃに潰れて破滅するのだって悪くない。後戻り出来ないくらいの失敗をしてもいい。
「飲みましょうか。明日のことなんて考えないくらい」
「ね。飲んじゃお飲んじゃお 」
ふたりで笑いあって乾杯し直す。
「私たちのこれからを祝して」
「「乾杯」」
カチャリ、とグラスを鳴らして俺達は酒を飲み干した。
――――――――――――
目が覚める。
知らない天井だ⋯
「ッ!?」
勢いよく起き上がる。自分の身体を確認すればしっかり一糸まとわぬ産まれたての姿である。
ギギギ⋯と油の足りないブリキ人形のような動作で横を向けば。
「起きたんだ⋯おはよ」
同じく一糸まとわぬ姿でこちらを眺めながら横にいた優奈さんが居た。
瞬間、俺の脳裏に湧き出す―――――――
不味い。まずいまずいまずい⋯!!!
「何もつけないなんて大胆だったね♡」
「」
思わず頭を抱えた。
気持ちよかったなとかどこもかしこも柔らかかったなじゃねえんだよボケ!!!
「んふふ」
「ヒッ」
ああなんかもう全体的に怖い!!なんでそんな上機嫌そうなのに眼が怖いの!?
「もう逃げられないよ♡」
「終わった」
「終わったって何?」
「すみません失礼でした」
「ん」
にしたってさぁ⋯
「なんで付き合った当日に寝てんだよ」
「逃がさないため」
ベットに着いた手に手を絡められる。
指と指が絡んで、柔らかさを再確認する。
フラッシュバックするみたいに昨日の柔らかさまで思い出す。
「うぁ」
「あ♡」
彼女の目線が一箇所に集中する。
「まだチェックアウトには早いからね」
おいで。
甘い甘い毒みたいな声に誘われて、俺はまた彼女と繋がった。
――――――――――――
「いや〜スッキリした」
「うっうっ」
結局あの後足腰立たなくなるまでやられた。
今は2人揃ってホテルでタバコを吸っている。シャワーも済ませたので酷い匂いはしないだろう。
「女々しいねぇ」
「タコ負けした」
「経験が違うのよ⋯」
「ろくな経験じゃなさそう」
「それ言うのはレギュレーション違反だろうが⋯!」
「こわ」
怖いって。そんなキレなくていいじゃん。
「まぁ、これからよろしくお願いします」
「ん。よろしくね」
あーあ。なんか致命的に間違えた気がする。
マジで。
―――――――――――
「ふふ⋯ふふふふふ。あははははははっ!」
蓮くんと別れて、家に帰ったあと。
私は笑いが抑えられなかった。
やっと!やっとだ!!やっとここまで来た。
「まさか付き合うまで行ってもっと先まで行けるなんて⋯」
笑いが止まらない。
「もう逃がさない」
どこまでも引きずり込んでやる。
「楽しみにしててね、蓮くん」
ずっと一緒だよ?