【しごヤニ】仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件 作:熊鏡
更新再開です
第13話
色々とやらかしてから少しして。土曜の昼下がり、俺は自分の家で頭を抱えていた。
「…やらかしたぁ」
まじでやらかした。本当にやらかした。
「酒に任せてベッドインしちまったぁ」
最低だ。俺。せめてもうちょいさぁ…
「手順踏んでくれよマジでぇ」
うぐぐごごご…!!
「猿じゃないんだぞ俺ェ…」
マジで!!
どれだけ思考を巡らせても解決策なんて出るわけもなく。
ただ時だけが残酷に過ぎていった。
———————
彼女、水上優奈は部屋の中で上機嫌にタバコを吸っていた。
右手はタバコを咥えて。左手はスマホを開いてその画面を愛おしげに見つめていた。
「ふへへ」
そのスマホには、明らかに隠し撮りをしていたであろう真壁蓮の寝顔があった。
他にも、アルバムの中にはタバコを吸う彼の写真や動画が収まっていることを見ると、おそらく常習犯なのだろう。
「これでいくらでもコレクション増やせちゃうわ」
ツーショもいいよね。
「スタート地点までは持っていけたんだから、これからはボーナスタイム」
ズブズブにはまりこませてやる。
「楽しみだなぁ」
ね、蓮くん。
彼女はそう言って、スマホの中の連を愛おしげに撫で た。
―――――――――――
その日の夜、優奈さんから電話がかかってきた。
「どうしたんすか、優奈さん」
『んー、声が聞きたくなった。じゃダメかな?』
んぐっ
「ダメじゃないっす。嬉しいですけど」
『えへへ。そう?』
あまりに嬉しそうな声で言われるものだから、俺も照れてしまう。
『ねえ蓮くん、次のデートどこにしようか』
「うえ!?」
『え?だめ?』
「ダメじゃないっすけど」
『よかったぁ…ね。ディナーとかどう?』
「いいすね。どこの居酒屋にします?」
『なんで居酒屋限定なの!?』
「ヤニ吸えるとこ地元にあるんで」
「え…!?それって」
まぁ、そういうことです。
「一緒に地元きます?」
『い、いいの?』
「その頃にはもう付き合って四ヶ月目くらいには入るじゃないすか」
実際、なんか逃がしてくれそうにないし。ならこっちから攻めたほうが強そう。
『期待…しちゃうよ?』
「期待に添えるようにがんばりますね」
優奈さんに押し切られたとはいえ嫌いなわけないし。
もっと知りたい。
『そっか…私結構重いから。気をつけてね』
「優奈さん軽い側では?」
『物理の話な訳なくない?????』
え?????
「体重のそれじゃなかったんすか」
『張り倒すよ????』
「ごめんじゃん」
そう言うことかなって…
『な訳ないじゃん。内面の話』
「なるほど」
重い女なのか優奈さん。それはそれで…
『なんか変なこと考えてない????』
「いいえ?」
妥当なことしか考えてません。
「まぁまたデートしましょ」
『うんっ!あ、そうだ。こんど手料理振る舞わせてよ』
「手料理ですか?」
料理できたんだ優奈さん。
『家庭料理くらいだけどね〜』
「それでもすごいですよ」
俺大概コンビニ飯とか冷食で済ますのに。
『えへへ〜。そう?その時はお泊まりしようね』
ウチにお出迎えしちゃうぜ。
と、へにゃへにゃした声で言われて、思わずあの日のことがフラッシュバックした。
「…そうっすね」
『お?何を思い出したのかにゃ〜?』
「うるさ」
『んふふ』
うるさ!!!
「じゃあ、また」
『え〜?もうちょっと話そうよ』
「…じゃあ、後タバコ一本分だけ」
『やったぁ!!』
換気扇の下に移動して、オイルライターに火をつける。
タバコに近づけて火を灯し、肺に煙を吸い込む。
「ハァアア…」
大きく吐き出して、喉を貫くようなメンソールを感じる。
「これのために生きてる」
『毎回言うじゃん』
「そらそう」
そのために生きてるまであんだから。
「結局何があろうと取り敢えずタバコ吸っときゃなんとかなんすよ」
『それはそう』
まぁね。結局ね。タバコがいっちゃんのメンタルケアラーなんすよ。
揺蕩う紫煙を吐きながら明日のことを考える。日曜はいい。疲れ切った体をしっかりと休めて、心を貪る月曜への不安と向き合う日だ。
「ま、今度お家デートでもします?」
『蓮くんのえっち』
「なんでだよ」
『お、おうちデートだなんて…えっちなことするんでしょ!』
「安アパートでそんなん出来ると思うなよ」
爆速クレームだわ。
『静かにやれば良いじゃん!!』
「優奈さんには無理」
『はぁ!?』
「妥当」
妥当だろ。
『はぁああああああああ…!!これだからさぁ』
「はぁ???」
おかしいだろ絶対に。
『まったくもう…これだから蓮くんはさぁ!!』
「俺のセリフじゃん絶対に」
絶対に。アブソリュートリィ。
「ま、明日もよろしく。優奈さん」
『はぁい』
タバコの火をもみ消して、通話を切る。
ま。良い休日じゃないでしょうか。
やらかしたことに目を瞑れば。
もみ消してなお煙を立てるタバコを念入りに消して。俺はベッドに向かった。