【しごヤニ】仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件 作:熊鏡
楽しい楽しい日曜日も終わり、今となっては憂鬱な月曜日。
どうにか昼まで持ったが…
「死ねる」
「わかる」
「キッチぃ〜…」
昼休憩で先輩とだらけながらタバコを吸っていた。
「お前はいいよな。彼女がいて」
「なら先輩もつくりゃいいじゃないですか」
「できりゃあ苦労しねーの!!」
おもろ。
「こいつよぉ…!!」
キレすぎじゃないすか?
「俺だって出会いが欲しいよ」
「あるじゃないすか」
「全部メンヘラかヤンデレだけどなぁ!?」
「メンヘラとヤンデレとか実質同じじゃないですか」
「違うのだ…!!!メンヘラだって自責他責に分かれるし陰陽様々なんだよ」
「いやだよそんな解像度」
いやだよ。
「俺だっていやだよこんなん」
頭を抱えながらタバコを吸う先輩の顔は疲れ切っていた。
かわいそう。
「憐れんだように見るなァ…!!」
怖いって。
「まぁ先輩にもいい出会いが訪れますよ」
「せいぜい幸せになってクソみたいな人生の墓場に埋もれろ」
「めっちゃいい人じゃん」
「うるせ〜〜〜〜!!」
だからなんだかんだ懐きたくなるんだよなこの人。
「さてさて、じゃあ午後も頑張りますかx」
「うぃーす」
あー、午後もくそ。
————————
そうして、業務終わりのいつもの喫煙所。
「あ」
「お疲れーす」
俺がタバコを吸っていると、仕事終わりの優奈さんがきた。
「や。今日は蓮くんのほうが早いんだ」
「そうすねえ。珍しい」
優奈さんもカプセルを噛み砕き、もう馴染みになったジェットライターで火をつける。
「スゥ…スゥー…はぁああ…」
紫煙を吐き出した優奈さんは、気を取り直したように俺に話しかける。
「どうすか。楽しい月曜日は」
「最悪に楽しいです」
「あは、死んだ顔〜」
ずいぶん楽しそうな面でいうじゃんこの女。
「ったく…まぁいいすよ」
会えたんで。
そういってタバコを吸うと、優奈さんはやたらとむせていた。
「大丈夫すか?」
「えほっごほっ…!!急にデレないでくれる????」
彼女にデレるぶんには問題ないのでは??
「問題ないでしょ。彼女にデレてんだから」
「こいつまじホンマまじで…!!」
顔真っ赤ですよ^^
「うっざ」
「いた」
ローキックは無しでしょ。
「なんてことするねん」
「うるさいですわよ」
「そんなに??」
そこまでうるさくないと思うんだけど。
「はいはい。お可愛らしいことで」
「はぁ!?」
こんな時は年上に見えないんだけどなぁ。
「まったく…」
呆れている優奈さんを尻目に一本目を吸い終え、早めに二本目に入る。
「スゥ…スゥー…はぁああああ…」
うっまぁ。
「さいこーーーー…」
メンソールの清涼感が喉を確かに潤してくれる。
「最高哉最高哉」
「めっちゃ微妙に古くなるじゃん」
「古くもなりますよ」
だって幸せだし。
「大袈裟ぁ…」
そうでもない。
「ま、いいんじゃね」
「ま、いいけどねー」
二人並んで紫煙を吐き出す。こんな月曜も悪くない。
「今日帰ったらどうする?」
「今日は明日に備えて寝ちゃおうかなって」
「いいね。寝る前に動画見過ぎちゃダメだよ?」
急に年上感出してくるじゃん。
「まぁ、考えます」
「それやんないやつー」
「やるよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
うわすっごいジト目。信用な。
「寝れなかったら承知しないから」
「こわ」
ま、それもやむなし。
「それとも…ウチ、泊まってく?」
「やめておきます」
俺の体が持たないので。
「けち」
ケチじゃない。
「まったく…ま、そろそろ出ますか」
「えー?」
まったく、仕方なさげに俺はタバコを取り出して、火をつける。
「ん。タバコ出してください」
「え?わかった」
そうして、タバコを咥えた優奈さんにタバコを咥えたまま、顔を近づける。すると
「!?!?」
無言でめちゃくちゃ驚く優奈さんが目に入る。おもろ。
「ん」
しっかりと照準を合わせてタバコの先端同士をくっつける。
公衆の面前でシガーキスとか何やってんねんという話だが。まぁ、俺も絆されたってことで。
「これ吸ったら帰りましょーね?」
「ふひゃい」
ふひゃい??
「急にデレんのはダメでしょ…!!」
「はぁ???」
別に付き合ってればこんくらい普通でしょ。
「まじかこいつ…まじか」
そんなに???大袈裟過ぎでしょこの人。
「優奈さんは大袈裟っすねえ」
「大袈裟じゃないからね絶対に」
赤い顔をパタパタと扇ぎながら、優奈さんはそう言った。
「ま、うまいこと慣れてくださいね。ゆーなさん?」
「ほんと覚えとけよお前」
「怖過ぎだろ」
そんな怖いことある???
「まぁええか」
今日も喫煙所の空には紫煙が燻っていた。