仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件   作:熊鏡

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第2話

 

「なんでそんなこともできないんだ!!」

「指示通りにこなしましたが」

「そんな指示を出した覚えはない!!」

「パワハラですか」

「何!?」

「音声は記録してあります」

「おどしか!?」

「事実です」

「このッ…!!」

 

 死んだ瞳で返答し続ける。

 なんで捕まってねえんだこいつ。普通にあり得ねえだろ。

 

「もういい!!貴様には何も期待しとらん」

「はい。では失礼します」

「謝罪もなしかきさm」

「あ、部長」

「おはようございます!!」

 

 いもしない部長を呼べば、課長は全てを切り替えてにこやかに挨拶した。

 そうそう。なんだかんだ上には良い顔するからバレにくいんだよな。

 

「嘘です」

「こ、このッ!!」

「おはようございます!部長」

「もう騙されんぞ!!」

「ん?何か騙したのか?よくないぞー」

「ぶ、部長!?い、いえ。これは冗談です!!なぁ!真壁」

 

 俺の苗字初登場これでいいの?

 

「その通りです」

 

 そうして。今日もコツコツとストレスは溜まった。

 

 —————

 

 昼休憩。俺はオフィスビル備え付けの喫煙所に駆け足で向かっていた。

 飯は流し込んだ。もうあとは煙ブチ込むだけだ。

 慣れた手つきでボックスタイプの箱からタバコを取り出して、タバコを口に加える。オイルライターを取り出し、流れるように蓋を開けて着火。

 タバコに火を灯して大きく吸う。肺までガッツリぶち込んで、

 

「ッはぁああああああ…」

 

 息を吐く。うまい。うますぎる。このために生きてる。

 

「もう何でもいいや。昼休み終わったらちゃんとしよ」

 

 しっかしまぁ困ったもんだ。何で指導されてねえのアイツ?すげえなマジで。

 

「あーーーだる」

 

 セクハラモラハラパワハラ三拍子揃った大馬鹿野郎だからなぁ。

 これだからよぉ。まぁ、

 

「今日も頑張りますかぁ」

 

 一旦タバコ休憩なんぞしなくて良いように吸いダメしよ。

 

 午後はほんのちょっぴりハラスメントが少なかった。

 いつもこうであれ。

 

 

 ———————

 

 今日も今日とて喫煙所に向かう。

 会社から離れて駅前にあるこの喫煙所は、昨今禁煙分煙の進む社会のオアシスだ。

 ため息をつきながらタバコを1本取り出してオイルライターを取り出しながら中に入ると、

 

「あ」

「あ」

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 

 昨日の彼女がいた。

 

「仕事上がりですか?」

「ええ。貴女は?」

「私も仕事上がりなんです」

「なるほど」

 

 社会人だったのか。

 

「そういえば私たちお互いの名前も何も知りませんね」

「そうなんですよね」

 

 また今度。なんて言ってお互いの名前も連絡先も知らないのである。

 流れるようにオイルライターに火を灯してタバコに火をつけると、彼女も昨日私たジェットライターでタバコに火を付けていた。

 

「ふぅうううう…ジェットライター(これ)。使いやすいですね」

「でしょう?風にも気温にも左右されないので、サブとして持つにも良いんですよ」

「ほえ〜…」

 

 難点はガス切れ早くて単価高いこと。200円くらいする。えぐい。100均ならもうちょい安いな。

 彼女が吸っているのはカプセルタイプのタバコだった。フルーツフレーバーというより、強いメンソール感のあるタイプで、かなり吸いやすいものだったはず。

 昔吸ってたな。あれ。

 

「あの、よければ連絡先交換しませんか?」

 

 と、いきなり切り出される。まじ?

 

「良いですよ。せっかくの縁ですし」

「ありがとうございます!あ、申し遅れました。私は水上優奈と申します」

「これはご丁寧に。俺は真壁蓮です。よろしくお願いします」

 

 そうして、タバコを吸いながらトークアプリを開いてコードを出す。

 水上さんの方に読み取りをしてもらって、トーク画面に新しい友達が表示される。

 

「名前そのままなんですね」

「会社で使うとそうなりがちですよね」

「そうですねえ」

 

 社会人になってから個人の連絡先としてもトークアプリを使うことが多くなった。仕事の連絡は別として、それ以外では結局トークアプリのほうが早いからだ。

 

「んふふ」

「どうしたんですか?」

 

 やたら嬉しそうだけど。

 

「いえ、何だか不思議だなって」

「確かに。つい昨日まで名前も何も知らなかったのに」

 

 気づけば名前も知ってるし連絡先を交換している。不思議なものだ。

 二人並んでタバコを吸い、コーヒーを流し込む。

 

「あれ、コーヒー飲んでましたっけ」

「ああ、そういえば喫煙所で飲みながら吸うのは初めてかもしれませんね」

 

 いつもはパッと吸ってパッと帰るからな。

 

「何だかこの二日で真壁さんの知らないところどんどん知れた気がします」

「それまでが知らなすぎただけ説ありますよ」

「それはそう」

 

 ケラケラと二人で笑って、2本目に差し掛かる。

 あー、最近タバコの本数増えたかな。

 

「…これも悪くないか」

「?何か言いましたか?」

「いえ、独り言です」

「気になるじゃないですか〜」

 

 煙を燻らせながら、ここで結局3本吸った。

 

 今日もまぁ、悪くはないだろう。うん。

 

 

 ———————

 

「進展したっ、進展した進展した進展したっ…!!」

 

 名前も連絡先も手に入れた。これで勝つる!!

 

「とりあえず連絡入れなきゃ…!!」

 

 ええと、ええと…!今日はありがとうございました。これからもよろしく…硬すぎ!!!違う、もっと、こう。可愛い感じを…!

 

「あ…!」

 

 思い出した!!ちょっと前に買ったはず!!

 

「これでよし…!!」

 

 明日からも頑張ろう。本気で落としてやる…!!

 

 ————————

 

 ピコッ

 

 通知音が聞こえて、スマホを開くと。

 

「??????」

 

 水上さんから、よろしくお願いし申す。と、デフォルメされた武士が頭を下げているスタンプが送られてきた。

 

「なるほど」

 

 とりあえずスタンプで返そう。

 

 ピッ、と、スタンプを送る。まぁ、女の子って可愛いの好きだろうし、これで良いだろ。

 

 

 そこには、よろしくにゃ。という文字が添えられた猫のスタンプがあった。

 

 

 —————————

 

「何で私より可愛いスタンプで返してんの…!?」

 

 くそう、もっと可愛いスタンプ買ってやる。と、水上には謎の対抗心が芽生えたそうな。

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