【しごヤニ】仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件 作:熊鏡
あれから結局火曜からも死にそうな仕事に忙殺されかけていた。
「し、しぬ…」
「やばい」
本当に死ぬ。
俺も七瀬さんも死んだような目でパソコンに向かっていた。
繁忙期。そう、一年の中で俺たちの命を最も削る期間だ。
「ケテ…タス、ケテ」
「ああ、七瀬さん。ついに人語を…」
ろくに話せなくなるほどまで。
「大丈夫すかほんと」
「無理」
ああ…終わった。
「もう一踏ん張りっす。頑張りましょう」
「はい…」
もう人殺せそうな目ぇしちょる。
「うぉおおおお…」
俺もしぬ。
「もうちょっと、あとちょっと」
もう少しで土曜なんだッ!!
—————————
「お、終わった」
死ぬかと思った。つーか一回死んだ。
「れ、連絡…優奈さんに連絡を」
会えますか:
:泊まってく?
良いんすか:
:いいよ。おいで
大好き:
:ついたら電話して
走り出すように、逃げ出すように。俺は優奈さんの家に向かった。
少しして、優奈さんの家の前に着く。
数度のコール音のあと、優奈さんが出てくれた。
『や』
「お疲れ様です」
『お疲れ』
「つきました」
『ん。すぐそっち行くね』
少しして、優奈さんが降りてきた。
「お疲れー」
「お疲れ様です」
「ほれほれ。おいでおいで」
「ウィす」
そうして、優奈さんに招かれて家に入る。
「はい。ご飯作ってるからシャワー浴びちゃってね」
「はーい」
——————
「上がりました」
なぜか当たり前のように準備されていた寝巻きに着替えて、俺はテーブルについた。
「すみません。シャワーまで」
「いいのいいの。明日の着替えもあるからね」
「…払いますよ?」
服代。
「いらない」
「払います」
「うるさい」
「理不尽!!」
俺に払わせろよ。
「ま。黙って甘えてなよ。ろくに休めないくらい忙しかったんでしょ?」
「それはそうなんすけど」
じゃあお言葉に甘えるか。
「その代わり明日のデートで服選ばせてください」
「え??明日はゆっくり休むよ?」
「なぁんで」
「やっと休み入れた彼氏連れ回すわけないじゃん」
「ぐぬぬ…」
ちくしょうめ。
「俺は遊びたかったのに」
「来週ね。繁忙期過ぎたんでしょ?」
「まぁそうすね」
繁忙期過ぎてはいる。
「明日はゆっくり休むの」
「はーい」
「すねないの」
「すねてないっす」
仕方なさげな優奈さんを他所に、俺は渋々休むこととした。
「ま、ちょい早いけどシャワー浴びてご飯食べたらおやすみしよ」
「ウィス」
今日は一旦寝ることとした。デカミートボールパスタとコンソメスープはめっちゃ美味かったです。
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目が覚める。寝ぼけ眼で時間を見れば12:00と表示されていて、
「寝過ぎたか」
「そんなことないよ?」
ベッド脇でこちらを眺めている優奈さんが見えた。
「…ホラー?」
「彼氏の寝顔見るくらいいいでしょ」
「それはそう」
とりあえず起き上がって伸びる。
「ご飯できてるよ」
「愛してる」
「んん゛っ…大袈裟な」
「妥当っすよ」
そうして、テーブルにつく。
お昼は白ごはんに焼き鮭、味噌汁にほうれん草のおひたし、玉子焼きと。まるで朝ごはんのようだった。
「美味しそう」
「寝起きだから優しくしといた」
「助かる」
まずはおひたしを味わう。うむ。めっちゃうまい。
焼き鮭と玉子焼きがご飯を進めてくれる。
「うまい」
「よかった」
そうして、ご飯を食べ終わって。
「洗い物しますよ」
「休んでな!」
「します」
「家主に逆らうの?」
「エッグ」
とんでもねえこと言うじゃん。
「わかったら動画でも見て待ってて」
「はーい」
とりあえず動画を見ることとする。
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優奈さんが洗い物を終えて隣に座る。
「膝失礼しまーす」
「はーい」
ゴロリ、とおれの膝に頭を乗せ、仰向けになる。
万有引力によりその重力に囚われるたわわなそれがとてつもない存在感を放つ。
「硬いんだけど」
マッズ
「膝」
セーーフ!!!
「仕方ないでしょ。男なんすから」
「まぁね」
仕方なさげに見つめる優奈さんの目には色が宿っていた。
なんとなく悔しかったので頬を引っ張る。
「ふぁに」
「別に」
むす、とした顔が可愛い。
「可愛い」
「ふぁ?」
可愛い。
「いえ、可愛いなと」
すっごい不機嫌そうな顔をしている。まぁ照れているだけでしょうけど。
経験則的に。
「むぐ」
起きあがろうとする優奈さんの肩を抑えて静止する。
「トイレ!!」
「さっき行ってきたでしょ」
「セクハラ!!」
「それはダメじゃん」
殺される。
「まぁいいじゃないすか。昨日今日甘やかされてるんで今度はこっちにやらせてくださいよ」
「うるさ!!!」
なんでだよ。
「うるさーい」
上半身を倒して、鼻が潰れない程度に抑える。
「むぐ、スーーーーーーー」
「おい待てなんで深呼吸してるんだ」
上半身起こ…は??
「なんで抱きしめてんの」
「スゥ、スンスン。スゥウウウウウウ」
「ちょっと」
「ふぅうううううううう…」
息あっつ。
「ちょっとー」
「スーハースーハー」
「はぁ」
首したと膝裏に手を滑り込ませてお姫様抱っこしたまま起き上がる。
「わぁ!?」
「ヤニ吸いたいんで」
「なら私も」
「へいへい」
とりあえず丁寧に立たせてタバコを取る。
「じゃあ吸いますか」
「ん」
土曜の昼下がり、換気扇の下に紫煙が立ち上った。