【しごヤニ】仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件 作:熊鏡
スッキリしたといえばスッキリして。疲れたといえば疲れた今日この頃。
なんとなく疲れは抜けているはずなのに、搾り取られたような感覚がある。
「おはよ」
隣で、俺のことをどこかねばっとしたような目で見ている優奈さんが目に入った。
その身は一糸纏わず。美しい肢体に赤い痕が残されている。
自分が刻みつけたものとはいえ、その扇情的な姿に朝から反応しかけてしまう。
「元気出た?」
「そりゃもう」
「じゃあおっぱい揉まなくていいか」
「揉みたいです」
はっ、俺は何を!?
「仕方ないなあ」
―――――――結果的にいえば、優奈さんは本当に女神のような方であった。
俺はご飯を食べてホクホクとした顔で仕事に向かった。
――――――――
「顔キモイですよ」
「絶対に言い過ぎですよね?」
「なんか鼻の下伸びてるって言うか。思い出し笑いしてる感じ」
「ええ⋯」
「朝からいちゃついてきたんですよね。どうせ」
「はい」
「⋯ッ!!!!」
「なんでそんな怖い顔するとです???」
「しないわけないでしょう馬鹿なんじゃないですかあなた」
「なんで!!!」
幸せな顔するのが悪いんけ!!!
「なんかこう、独り身を煽られているようで腹が立つ」
「なんでだよ」
煽ってないよこっちは。
「私が勝手に煽られた気分になっているので⋯」
「どうしようもなくて笑っちゃった」
ま、今日も頑張るしかないんですけど。
「それにしても真壁先輩最近血色いいですよね」
「ほんと?」
「ほんとほんと。彼女できてからかなりいい感じですよ」
「やったぜ」
優奈さんに感謝。
「まぁだからねたましいんですけど」
「えぇ⋯」
なんでぇ?
「取り敢えず頑張りましょうか」
「そうすね。案件も佳境なんで」
これが終わったらめちゃくちゃイチャイチャするんだ!!
「やっぱ腹立つ」
「なんでぇ!?」
俺は理不尽を感じながら仕事した。
――――――――――――
昼休憩、しっかりご飯を食べてタバコを吹かす。
「よ。幸せそうな顔しやがってクソが」
「ご挨拶がすぎません?」
「全然。普通だろ」
「なんでですか」
絶対言い過ぎだからな。
「どんなもんよ。今の案件」
「今佳境っすね。明日にはかなり楽になるかな」
「じゃあいい感じだな」
それはそう。
「どうせ落ち着いたら彼女とめちゃくちゃイチャイチャするんだろ」
「はい」
「殺すわ」
「なんでだよ!!!」
七瀬さんといい先輩といいなんでこうなんだ!!!!
「独り身の怒り」
「はぁ!?」
あんた普通にモテるし岬先輩に至ってはアンタにまあまあ惚れてるからな絶対!
アンタの好みについて聞かれたことあるんだぞこっちは!!!
「贅沢者め⋯」
「はぁ?」
うわわかってないよこの人。巫山戯てる。
「俺のどこが贅沢なんだよ」
「我が振り見直してくれます?」
マジでふざけてんな。
「はぁ⋯どっかに俺のこと甘やかしてくれる子出てこないかな」
このクソボケがよ。
「なんか腹立つな」
「こっちのセリフですー」
「はぁああ?」
なんも分かっとらん。
「ま、先上がりますわ」
「おん。またな」
「うっす」
そうして、喫煙所を出ると。
「あれ、岬先輩」
「お疲れ様真壁くん。彼女できたんだって?」
茶髪の内巻きボブにキレイめの化粧をした岬先輩がいた。
「ええ。最近幸せです」
「いいねー。⋯その、さ」
「ああ、野上先輩にはまだ彼女いないっすよね」
「え!?い、いや、野上なんてどうでもいいんだけどね!?」
これである。先輩⋯名を野上裕一。岬先輩からあからさまに好かれているはずなのに気づきもしないクソボケの名だ。
これで彼女欲しいとか言ってんだぞあの贅沢者。
「まぁ相変わらずっすよアレは」
「まじ?」
「マジです」
これである。
とっとと押し倒せよ!!
「なんか失礼なこと考えてない?」
「いいえ」
そんなことはありません。
「まぁいいか。ありがとね」
「いえいえー 」
「今度コーヒー奢らせて」
「マジすか?ゴチになります」
儲け儲け。
「またねー」
「うぃす」
犬も食わねえよ。
―――――――――――
はい。
「修羅場すぎる」
「わかる」
佳境の言葉に反せず、俺たちは死に物狂いで案件の対応をしていた。
「えぐいよーーーーーー」
「しぬ」
あががががっがががが。
「定時!!!タバコ吸ってきます!」
「行ってらっしゃい!!!」
そして、また喫煙所に向かうと。
「あれ、先輩」
「よ。なぁ、その」
「なんすか?」
なんかモゴモゴしてる先輩がいた。
まさか⋯
「岬先輩すか?」
「なんであいつが出てくるんだよ!ま、そうだけどよ⋯」
はぁ、とため息をついて、俺はタバコを吸い始める。
「なんか煽られたんすか」
「ちげえよ。なんか楽しそーに話してたろ?浮気はダメだぞ」
「なんでそうなるんすか。普通に話してただけっすよ?」
ニヤニヤしそうになる頬を締めて、俺は努めて真顔をキープした。
「俺の前じゃずっとガルガルしてるだろアイツ」
「先輩が喧嘩売るからっすよ」
「売った覚えねえよ」
草。
「まぁ素直になりゃいいんすよ。飲みにでも誘ってみたらどうすか?」
「は?アイツが答えるわけ」
「いいから誘う誘う」
「⋯断られたらお前が付き合えよ」
「いいっすよ」
絶対ないから。
「ま、頑張ってくださいね」
そのまま、さっさと吸ったタバコの火を消してもどることとする。
「は?ちょっ、ま!」
「じゃーねー」
来週あたりが楽しみである。