仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件   作:熊鏡

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第5話

 

 昨日の一大事から数時間。俺は寝るに寝れず、寝不足の目を擦っていた。

 

「まじで何。あれ何?」

 

 あんな、甘い—————

 

「ぬぐおおおおおおお……」

 

 恋愛経験がなかったわけではない。ないが…

 大概、「私のことなんてどうでもいいんでしょ?」とか、「私がいなくても生きていけそう」とか言われてそっこー別れてんだぞこっちゃあ。

 今更まともな恋愛のことなんてわかるわけねえだろ。

 

「あ゛ー…タバコ吸って仕事行こ」

 

 珍しく朝飯は喉を通らなかった。ゼリー飲料うま。

 

 ————————————

 

「…先輩」

「なんだ」

 

 仕事の昼休憩中、珍しく時間通りに休憩に入れた先輩と喫煙所にたむろしていた。

 

「顔見知りだった人と飲みに行ってゲームして、気づいたら告白まがいのことされたって言ったらどうします?」

「妄想乙」

「妄想ならどれだけ良かったことか」

「は?現実なん?」

「はい」

「死ねよ」

「酷すぎません????」

「美人?」

「弩級の」

「殺すわ」

「死ねから殺すになることあります?」

 

 先ほどまでの面白そうな視線から全てを憎むような視線を受けて居心地悪げにタバコを吸う。

 

「何でお前だけ…!!こちとら27で彼女なしなのに…!」

「あ、同い年か」

「は???????」

「やべ」

 

 断じて面白いから揶揄っているわけではない。断じてない。

 

「このクソ後輩…!!」

「年度的には俺が先輩では?」

「そうでした」

「ガハハ」

「最悪」

 

 まじでおもろい。これだから社会は面白い。

 

「ま、お前がやりたい様にやれよ」

 

 仕事に影響出したら許さん。

 

「ウィッス」

 

 ま、こういうところが尊敬できるから先輩呼びしてるんすけどね。

 紫煙は今日も美味かった。

 

「さぁーーて、どうすっか」

 

 ひとまず。今日も喫煙所(いつものとこ)で会いますか。

 タバコをもみ消してまたデスクに戻った。

 

 

 ——————————

 

「お、今日もやってるね」

「水上さんこそ」

 

 ひと足さきにタバコを吸っていた水上さんの隣について、俺もタバコに火をつけた。

 

「で、覚悟はできた?」

「ゲホッゴホッ…!!何をいうとるだ」

「何をいうとるだ!?私の勇気を何だと」

「それはごめんなさい」

「許しましょう」

「女神…?」

「女神とか…!!そんな大胆なさぁ…!!」

 

 この人の琴線がたまにわからない。

 

「まぁ、そういうことだから」

 

 覚悟しといてね。と、タバコで差された。

 

「お行儀わる」

「うるさ」

 

 あ、まって。周りの視線が痛い。何で今日に限ってこんなに人多いん??

 

「…」

「ジト目やめてくださーい」

「はぁ」

「人を見てため息つくのはダメでしょ」

「はぁああああああ」

「ため息でかくなることある?????」

 

 あったなぁ。

 

「まぁ、そうだね。『覚悟』するさ」

「やったね」

 

 あんたにも覚悟してもらうけどな。

 心の中はお首にも出さず、静かに覚悟を決める。

 

「じゃあよろしくお願いしますね。優奈さん(・・・・)

「ゔぇ」

「どうしたんすか」

「きゅ、急に名前呼ぶじゃん」

そういうこと(・・・・・・)何すよね?」

「そういうことだけどさぁ…」

 

 急に呼ぶのは違うじゃん。

 と、夜でもわかりやすいくらい赤面しきった彼女をニヤニヤと笑いながら眺めていた。

 

「キモい」

「ひど」

「キモい!!」

「草」

「カス…!!」

 

 お口わっっる。

 続け様に二本目に火を点け、しっかりと吸う。

 

「…ね。それ、おいし?」

「俺は好きですよ」

「ふーん…」

 

 と、やたらとタバコに視線を向けるので。

 

「一本要ります?」

「!!いいの!?」

「いっすよ」

「じゃあ私のも一本あげる」

「あざす」

 

 タバコを交換し、吸っている手の中指と薬指の間に挟めてマウントする。

 

「今度はいつ飲みに行こっか」

「休日にカフェとかは?」

「え?休日も付き合ってくれるの????」

「勿論。むしろ平日より楽っす」

「あね。じゃあ土曜カフェにでもいこ」

「いいすね。昼前とか?」

「朝から行ったっていい」

「某食堂??」

「おいバカやめろ」

 

 一旦吸いきったタバコを揉み消し、優奈さんからもらったタバコを持ち直す。口に咥えてカプセルを噛み潰す。

 

「お」

「どうしたの?」

「潰した瞬間ちゃんとフレーバーあふれるんすね」

「そうよ?」

 

 いつも通り火をつけ、肺に煙を吸い込む。

 

「ふぅ……」

 

 おーー、結構違う味するわ。

 

「メンソール味あるやつ結構うまいっすね」

「でしょ?まぁ大概最大で8ミリとかなんだけど」

「カプセル系はそんなもんっすよね」

「そそそ」

 

 意外と悪くねえな。

 

「あ、メンソールも悪くないね。美味しい」

「でしょ?」

「うみゃーい」

 

 スパスパする優奈さん結構可愛いな。

 

「これ吸ったら解散しましょっか」

「そうね」

 

 そうして。ダラダラと話しながら、最後の一吸い。

 

「ふぅうううう…」

「はぁああああ…」

 

 そのまま喫煙所の外まで出て。

 

「じゃあ、また明日」

「ん。明日ね。蓮くん(・・・)

「!…ええ」

 

 俺も優奈さんも足取りは軽い。

 ああ。明日が楽しみだな。

 

 ——————————————

 

「名前呼びまで来ちゃったよ」

 

 うへへ。最高だぜ!!!!

 

「土曜はデートかもだし」

 

 ああ。楽しみだなぁ。明日が早く来ないかな。

 

「今日だけ、早く寝ちゃお」

 

 そしたら早く来るよね。きっとね。

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