仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件   作:熊鏡

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第8話

 

 喫煙所から出て、俺たちはカフェに向かっていた。

 

「結構裏路地側なんすね」

「表だったら流行りすぎるんだよね〜」

「まぁそれは確かに」

 

 表にあると変に増えすぎるよな。いいことなんだけど。

 

「店のマスターもそう言うのは望んでないから基本SNSで情報発信してないの」

「今どき珍しいっすね」

「不労所得あるからカフェは副業っていうか趣味なんだって」

「わかんない世界だ」

「大丈夫。私もわかんない」

 

 こええよ。

 

「私だってこええよ」

「そりゃそう」

 

 知ってる分もっとこええかもね。

 俺は怖い。

 

「もうちょっとしたら着くよ〜」

「あざます」

 

 どんなとこなんだろ。

 なんて思いながら歩いていると、恐らくそうであろうという店が見えた。

 

「あの店ですか?」

「そ」

 

 閑静な住宅街に一体化するように、その店は佇んでいた。

 落ち着いた雰囲気の門構えで、住宅街の雰囲気に馴染んでいた。

 

「めちゃくちゃいい感じじゃないですか」

「でしょー?私の好みなんだけどね」

「最高です」

 

 めちゃくちゃいい感じだな。

 

「じゃあ入っちゃおっか」

「うす」

 

 店の前まで向かってドアを開ける。

 すると、カラン。と来店を知らせるためであろうベルが鳴った。

 

「いらっしゃい。あれ?今日はお連れさんがいるんだね?」

「どもども〜。そうなんですよ」

 

 出迎えてくれたのは白髪の混じった髪をオールバックにした壮年の男性だった。

 

「初めまして。お邪魔します」

「いえいえ。ご来店ありがとうございます。お客様」

 

 …かっこいい。

 あまりにも 『将来こうなりてぇ〜!!』みたいなおじさまが出てきてしまった。

 思わずポケ〜っとマスターを眺めていると。

 

「ほら、座って座って」

「あ。すみません」

 

 先にカウンターに座っていた優奈さんに倣って俺も隣に座る。

 

「普通デートするならテーブル席じゃない?」

「いいカフェはカウンター座ってなんぼでしょう」

「まったくです」

「君たち変わってるね?」

 

 失礼な。

 

「おっといけない。忘れていたよ。こちらおしぼりです」

「「ありがとうございます」」

 

 銀のトレーに乗せられたおしぼりが届けられる。

 あ、これあったかいやつだ!しかもいい匂いする。

 ニコニコで手を拭き、畳んでトレーに置き直す。

 

「あったかいおしぼりいいよね」

「いいっすよね」

「好みなら良かったよ。はい。お冷です」

「「ありがとうございます」」

 

 お冷をいただきながら、二人でメニューを見る。

 

「何にする?」

「とりあえず初めましての店は店のブレンドって決めてるんですんけど、他におすすめとかあります?」

「店のブレンドいいじゃん。私も先ず勧めるならこれ派だよ」

「気が合いますね」

「まったくだね」

 

 うんうん。と二人で頷いていると。

 

「…?どうしたんですかマスター。そんな変な顔して」

「い、いや、ついね…」

 

 なんで顔背けてるんだろ。

 

「じゃあブレンド二つで」

「承りました。フードメニューは大丈夫?」

「どうせならいただきたいです。蓮くんは?」

「俺も欲しいですね」

「だったらいいのがあるよ。近所の人がやってるスイーツ屋さんのチーズケーキがあってね。ステマがわりにどうぞって提供されてるんだ」

「ええ…?」

「まぁ委託みたいな形式だからね」

「な、なるほど。じゃあそれください。蓮くんはどうする?」

「俺もそれで」

「それでは少々お待ちください」

「「はーい」」

 

 マスターは熟練の手つきでケトルに水を入れて湯を沸かし、ブレンド用の豆を取り出してフィルターを敷いたドリッパーにセットした。

 

「いいでしょ。ここ」

「めっちゃいいっす」

 

 あ、マスターめっちゃ満足げな顔してる。

 

「マスター顔わかりやすいですよ」

「やめてね」

 

 いいじゃない。ちょっとぐらい。そういうマスターさんはめちゃくちゃお茶目で。ああこの人やっぱモテたろうなぁ。と思ってしまう。

 と、ゆるく話しながら待っていると。

 温度を見てマスターがケトルを持ち上げ、挽いた豆に注ぎ入れる。

 豆の香りがふわりと広がって鼻腔をくすぐる。

 

「わぁ…」

「最高…」

 

 この香りが好きだから飲んでるまである。

 この豆が好きとか、このブランドじゃないととかいう気はない。味の好み程度で、うまいコーヒーが飲めればそれでいい。

 コーヒーをドリップしている間に、マスターは手早く冷蔵庫からチーズケーキを出した。

 そして、コーヒーサーバーに落ちきったコーヒーをカップに注ぐ。

 

「ミルクと砂糖は?」

「俺は大丈夫です」

「私も大丈夫です」

 

 コーヒーとチーズケーキが提供される。

 

「「いただきます」」

 

 先ずはコーヒーを一口。

 

 ゴクリ。

 

「うまっ」

「でしょ」

 

 すっきりとした苦味で酸味は控えめ。俺の好きな味です。

 そのままチーズケーキをフォークで切り取り、一口食べる。

 

「うま」

「まじでうまい」

 

 甘味と酸味のバランスが絶妙で、くどくない味が最高にうまい。

 下に残った後味を流すようにコーヒーを流し入れると—————

 う ま す ぎ る !

 すっきりとした苦味が酸味と甘味をそのまま流しいれてくれる。

 

「…鬼リピしようかな」

「付き合うぜ」

「あざっす」

 

 コーヒーとチーズケーキに舌鼓を打っていると。

 

「どうするか」

「何ー?」

「二杯目行くかどうか」

「あーね」

「…いや。次にしよう…!!」

 

 一回で飲み切るのは勿体無い!!

 

「もう一杯行きたいのでしたら日替わりのコーヒーがおすすめですよ」

「なるほど」

「日替わりで第一何曜などでサイクルを変えているので週一でも様々なコーヒーを頂けると思いますよ」

「では本日のコーヒーでお願いします」

「承りました」

「あ。じゃあ私も同じのお願いします」

「承りました」

 

 今日のは…ブルーマウンテンの中煎りか。

 今度は、豆から準備していた。ボトルから豆を取り出し、ミルのマシンで挽いていく。

 

「ふぉおおおおお…」

「最高」

 

 なんか優奈さん最高しか言ってなくない?気持ちはわかる。

 フィルターに入れて、湯を注ぐ。先ほどともまた違った香りがして楽しい。

 二人で満足げに頷いていると、マスターの顔が過去一ニコニコしてた。

 微笑ましい。

 

「どうぞ」

 

 なんて待っているとコーヒーが出来上がったようで、新しいカップが届けられた。

 

「…いい匂い」

「いいねえ」

 

 豊かな香りを楽しんで、コーヒーを一口。

 

「うま」

「わかる」

 

 うめぇええええ!!最高だ。

 

「この為に生きてる」

「わかる」

「大袈裟だねえ」

 

 

 ———————————

 

「会計お願いします」

「承りました」

「分けますか?」

「一緒で大丈夫です」

「え!?私も払うよ。払わせて」

「店紹介してもらったんで」

 

 絶対払わせん。

 

「はい。こちら会計です」

「あいがとうございます」

「ちょっと!?」

「さ。行きますよー」

「なぁんで!」

 

 知らん知らん。

 

「覚えとけよ!!」

「チンピラ??」

 

 随分可愛いチンピラもいたものである。

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