結界師 〜墨村利守は六面世界で奔走する〜   作:rOOd

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六面世界
目が覚めたら・・・・・・


      【甲龍暦412年 昼過ぎ】 

     [中央大陸南部 とある樹海]  

 

「・・・・・・うっ、あっ。こ、ここは?」

 

 僕は差し込む太陽の光で目を覚ました。

 たしか、例の十字路を夜中にもう一度調査する

ために向かった。

 到着した瞬間、あの次元ゲートに出現し、それ

に向かっていった黒木くんを腕を掴んで、一緒に

呑み込まれたはず・・・・・・。

 

「あっ!? く、黒木くん!!!」

 

 慌てて辺りを見渡す。

 すると、すぐそばに僕のリュックとともに、黒

木くんが倒れていた。

 僕はすぐさま立ち上がり、彼の傍へ駆け寄る。  

 そして、その場にしゃがみ込むと、頸動脈に指

を当てた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 脈がある。

 どうやら、黒木くんは生きているようだ。

 

「よ、良かった〜・・・・・・・・・」

 

 黒木くんに命の別状がないことを確認すると、

僕はその場にへたり込んだ。

 どうやら、知らないうちにかなり緊張していた

らしい。

 

 だが――。

 

「・・・・・・あれ?」

 

 ふと、僕は周囲を見渡した。

 そこに広がっていたのは、見覚えのない巨大な

樹木と鬱蒼とした森。

 聞いたことがない鳥の鳴き声。

 遠くから聞こえる獰猛な獣のような唸り声。

 そして、空には見慣れないほど青い空が広がっ

ている。

 

「ここ・・・・・・どこなんだ?」

 

 僕はゆっくりと立ち上がった。

 次元ゲートを通ったことは覚えている。

 ということは――。

 

「もしかして、ここが・・・・・・異世界?」

 

 その瞬間。

 森の奥から、何かが枝を踏み折る音が響いた。

 パキッ――。

 

「・・・・・・っ!?」

 

 僕は反射的に身構える。

 黒木くんはまだ目を覚まさない。

 僕は彼を守るように前へ出た。

 

「・・・・・・誰か、いるのか?」

 

 返事はない。

 ただ、森の奥からこちらを窺うような気配だけ

が、確かに感じられた。

 

そのとき――。

 森の奥から、二つの人影が姿を現した。

 

「・・・・・・誰だ!?」

 

 僕は反射的に身構える。

 現れたのは、男女二組の大人だった。

 

 一人は中世ヨーロッパの服装した茶髪の美青年

 もう一人も、中世ヨーロッパのドレスを着た赤

髪の美女。

 二人もまた、僕たちの姿を見つけると足を止め

た。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 互いに無言のまま、相手の様子を窺う。

 やがて、フィリップが何かを尋ねるように口を

開いた。

 

『――――?』

「え?」

 

 聞き取れない。

 いや、それ以前に――。

 

「・・・・・・言葉が、違う?」

 

 僕がそう呟くと、赤い髪の女性も何かを話しか

けてくる。

 

『――――、――――』

「す、すみません。何を言ってるのか分からない

 んです・・・・・・・・・」

 

 僕は困惑しながら首を横に振った。

 どうやら、言葉が通じない。

 

 赤い髪の二人も、同じように困惑した表情を浮

かべている。

 赤い髪の男性は僕の背後へ視線を向けた。

 そこには、まだ目を覚まさない黒木くんがいる

 

 警戒するように、男性の表情が険しくなった。

 

『――――!』

「待って!」

 

 僕は慌てて両手を上げた。

 

「敵じゃない! 僕たちは敵じゃない!」

 

 当然、その言葉は相手には伝わらない。

 それでも僕は、敵意がないことを示すようにゆ

っくりと手を下ろした。

 赤い髪の男性もまた、すぐには動かず、僕たち

をじっと見つめている。

 ――言葉は通じない。

 

 それでも、目の前の二人が僕たちを警戒してい

ることだけは、はっきりと分かった。

 

「どうする? どうすれば・・・・・・あっ!」

 

 ふと、ある術のことを思い出す。

 ――あれを使ってみるか。

 

「通仙術」

 

 もともとは、妖怪や神々の言葉を聞き取るため

の術だ。

 だが、この状況では背に腹は代えられない。

 使える手段は何でも試すべきだろう。

 

「すみません。握手をしていただけませんか?」

 

 そう言って、僕は右手を差し出した。

 フィリップはその手を見つめたまま、しばらく

動かなかった。

 やがて、警戒を解かぬまま、慎重に右手を伸ば

す。

 そして――僕と握手を交わした。

 

 触れた瞬間。

 

「(・・・・・・これは、霊力じゃない)」

 

 今まで感じたことがない力に戸惑ったが、僕は

意識を集中させる。

 相手の力の流れを感じ取り、その波長に自らの

術式を同調させていく。

 

 少しずつ。

 少しずつ。

 

 やがて――

 

「(合った!)」

 

 その瞬間、それまで意味として捉えられなかっ

た赤い髪の男性の声が、はっきりとした言葉とし

て耳に届いた。

 

「・・・・・・・・・君たちは、一体何者なんだ?」

「・・・・・・・・・え?」

 

 思わず目を見開く。

 聞こえる。

 今度は、確かに意味が理解できる。

 

「・・・・・・・・・・・・あの。今、僕の言葉を理解できま

 すか?」

「・・・・・・ああ。理解できる」

 

 男性も驚いたように目を見開いた。

 

「まさか・・・・・・言葉が通じるようになったのか?」

「どうやら、そのようです」

 

 僕は安堵の息を吐いた。

 

「(よかった・・・・・・これで、ようやく話ができる)」

 

 だが、僕たちにさらなる危機が訪れていること

を、僕はまだ知らなかった。

 

ーto be continuedー

 

 

 




次回 野盗
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