結界師 〜墨村利守は六面世界で奔走する〜   作:rOOd

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フィリップ・ボレアス・グレイラット

     【甲龍暦412年 昼過ぎ】 

 

     [中央大陸南部 とある樹海]   

 

「・・・・・・・・・どうして、僕たちの言葉が急に分かる

 ようになったんだい?」

 

 茶髪の男性が、不思議そうに僕に尋ねる。

 

「それは・・・・・・僕が特殊な術を使いました」

「特殊な術?」

「はい、それにより、今ははっきりと会話ができ

 るようになったんです」

「そうか・・・・・・」

 

 男性は、しばらく僕の顔を見つめた後小さく頷

いた。

 

「なら、改めて自己紹介をしよう」

 

 そう言って、男性は胸に手を当てる。

 

「僕はフィリップ・ボレアス・グレイラット。

 アスラ王国の上級貴族、ボレアス・グレイラッ

 ト家 の嫡男だ」

「上級貴族・・・・・・」

 

 僕は思わず息を呑む。

 

「そして、フィットア領の次期領主でもある」

 

 その言葉に、僕は目を見開いた。

 目の前にいるのは、ただの貴族ではない。

 この世界で大きな領地を治めることになる人物

なのだと、ようやく理解した。

 

 フィリップさんは、後ろに立っている赤い髪の

女性へと視線を向けた。

 

「彼女はヒルダ・ボレアス・グレイラット。僕の

 妻だ」

「ヒルダよ」

「・・・・・・どうも」

  

 フィリップさんは柔らかな眼差しで、僕に尋ね

た。

 

「それで、君の名・・・・・・・・・いや、素性は?

 魔法の素人である僕から見ても、君は相当な腕

 前の魔法使いに感じるが・・・・・・・・・」

「ええっと・・・・・・・・・僕は墨村利守と申します」

「スミ・・・・・・ムラ・・・・・・トシ・・・・・・モリ?」

 

 やっぱり、異世界なんだ。

 僕の名前は、当然聞き取りづらいんだろうな。

 僕は咳払いし、自己紹介を続けた。

 

「それと、僕は魔法使いではありません」

「・・・・・・・・・魔法使いではない?」

「はい。僕は結界師です」

「??? け、結界師・・・・・・・・・!?」

 

 フィリップさんは、困惑したように首を傾げる

 どうやら、この世界には「結界師」という言葉

自体 が存在しないらしい。

 

 何とか僕たちが互いに挨拶を交わし終えた

――そのときだった。

 

 ――ゾクリ。

 背筋に冷たいものが走った。

 

「・・・・・・?」

 

 僕はわずかに目を細め、周囲へ意識を向ける。

 

 ・・・・・・・・・いる。

 

 しかも、一人や二人じゃない。

 十人以上の殺気が、こちらへ向けられている。

 次の瞬間――

 

「動くな!」

 

 森の中から、武装した男たちが一斉に姿を現し

た。 

 

「なっ・・・・・・・・・!?」

 

 気づけば、僕たちは完全に囲まれていた。

 腰には剣や短刀。手には槍と棍棒。

 身につけている装備からして、この辺りの土地

を縄張りにしている山賊か。

 もしくは、近くの国に雇わせている傭兵だろう

 

 

 黒木くんを見る。

 まだ、気絶したままだった。

 黒木くんは目覚めるまで放置しよう。

 今、起きた途端に騒がれたら、こいつらを刺激

するし。

 

 今度は、フィリップさんへとちらりと視線を向

け、僕は静かに手を上げた。

 

「フィリップ。投降しましょう」

「・・・・・・えっ?」

「今は、抵抗しないほうがいい」

 

 僕は小声でそう告げる。

 

 今ここで戦えば、相手の仲間がさらに集まってく

る可能性がある。

 それに――。

 彼らが僕たちをどこへ連れていくのか。

 それを確かめるほうが重要だった。

 

「武器を捨てろ!」

 

 傭兵の一人が怒鳴る。

 

「・・・・・・分かりました」

 

 僕は素直に背中に背負っていた武器を地面に放

り投げた。

 

「おい、君!?」

「お願いします。フィリップさん、落ち着いて。

 とにかく、今はこいつらの言う通りにするべき

 です。おとなしく捕まりましょう」

 

 僕がそう言うと、フィリップさんたちも渋々な

がら手を上げた。

 そして僕たちは、傭兵たちに連行されることに

なった。

 ――けれど。 

 

 これは、むしろ好都合かもしれない。

 彼らのアジトへ行けば、この土地で何が起きて

いるの か。

 そして、僕たちがこの世界へ来てしまった理由

について、 何か情報を得られるかもしれない。 

 

 僕はそう考えながら、僕たちの両手を縄で縛っ

た傭兵たちの後を歩いた。

 

ーto be continuedー

 

 




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