結界師 〜墨村利守は六面世界で奔走する〜   作:rOOd

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閑話 扇六郎の災難

     【甲龍暦412年 昼前】 

 

     [中央大陸 アスラ王都] 

 

「おいおい、どうなっている!?」

 

 バカガキ二人を追って、次元ゲートに飛び込ん

だはず。

 なのに、その先に待っていたのは――。

 

「なんで、上空にいる!?」

 

 くそっ!?

 やっぱり、あの十字路は異世界へ繋がっていや

がった。

 しかし、なんで上空なんだよ。

 

「チッ!」

 

 落下しながら、オレは風を操り、空中に浮かぶ

 

「くそっ! ガキどもはどこだ!?」

 

 周囲を見渡すが、ガキどもの姿はどこにもねぇ

 

「なんでだ? 同じゲートを通ったはずだぞ」

 

 まさか――。

 

「位相がズレたか!?」

 

 どうやら、オレとガキどもは同じ異世界に飛ば

されたものの、転移先だけが別々になっちまった

らしい。

 

『――――、――――!?』

 

「ん? なんだ?」

 

 声が聞こえた気がして、周囲を見渡す。

 

「なっ!? ガキ!?」

 

 なんで、空の上にガキがいるんだ?

 

「え〜い、くそ! 次から次へと!」

 

 叫びながら落ちていくガキを見過ごすわけにも

いかず、オレはため息をついた。

 

「あ〜、仕方ねえ!」

 

 あのガキを助けようと、飛び出そうとした

――その時。

 

「な、なんだ!? なんか来る!?」

 

 突然、背後から殺気を感じた。

 

 反射的に振り返ると、巨大な化け物が空を飛ん

でいる。

 

「なっ!? あれって竜・・・・・・

 いや、翼竜――ワイバーンってヤツか!?」

 

『――――、――――!?』

 

 ふざけんな!?

 ガキを助けなきゃいけねぇってのに!

 

「あの飛びトカゲ、緑髪のガキを食おうとしてや

 がる!?」

 

 落下していくガキへ向かって、ワイバーンが猛

スピードで迫っていた。

 

『――――、――――!?』

 

「チッ、あのガキは後だ。先に、あのトカゲを始

 末する!」

 

 オレはワイバーンの前へ回り込み、ガキから注

意を逸らすために攻撃を仕掛ける。

 

「恨みはねぇ。けど、これも弱肉強食だ!」

 

 手のひらに風を集め、一気に振り抜く。

 

 ヒュゴォォォォォッ!!

 

 鋭く圧縮された風が刃となり、ワイバーンの右

翼を斬りつけた。

 

「グルァァァッ!!」

 

 翼を斬られたワイバーンが、怒り狂ったように

咆哮を上げる。

 

 そして次の瞬間、オレへ向かって一気に襲いか

かってきた。

 

「チッ、こっちに来やがったか!」

 

 迫り来るワイバーンを前に、オレは両手を突き

出す。

 

「――吹き飛びやがれ、トカゲ!!」

 

 次の瞬間、凄まじい風圧が渦を巻き、巨大な竜

巻となってワイバーンへ襲いかかった。

 

「グルァッ!?」

 

 竜巻に巻き込まれたワイバーンの巨体が、大き

く弾き飛ばされる。

 

「よしっ!」

 

 撃退した――そう思った瞬間だった。

 

「なっ!?」

 

 吹き飛ばされる直前、ワイバーンの爪がおれの

右腕を貫いた。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

 右腕を貫く激痛に、思わず顔をしかめる。

 

「この野郎・・・・・・最後まで油断させねぇな・・・・・・

 こんちくしょう!」

 

 右腕を貫かれたまま、オレはワイバーンの巨体

を睨みつける。

 

「いい加減、くたばりやがれ!」

 

 オレは残った左手に風を集め、さらに圧縮して

いく。

 

 風が一点に凝縮され、拳ほどの大きさの球体へ

と変わった。

 

「――喰らえ!」

 

 圧縮した風圧の球を、ワイバーンへ向かって叩

きつける。

 

 ――ズドォンッ!!

 

 凄まじい衝撃がワイバーンの巨体を吹き飛ばし

た。

 

「グギャァァァッ!!」

 

 断末魔の咆哮を上げたワイバーンは、そのまま

力を失う。

 

「・・・・・・ハァ、ハァ・・・・・・仕留めたか」

 

 だが――。

 

「お、おいおい・・・・・・」

 

 その直後、オレの身体もワイバーンとともに空

中へ投げ出されていた。

 

「マジかよ……!」

 

 右腕を貫かれた影響で、風の制御が乱れている

 

 眼下に広がる地上へ向かって、ワイバーンの死

骸とオレは、なすすべなく落下していく。

 

「くそったれぇぇぇっ!!」

 

 

 

〜落ちていく緑髪の子ども〜

 

『えっ?』

 

 な、なんで!?

 

 さっきまで家にいたのに??

 

『ぎゃあああぁぁ〜〜〜!!』

 

 窓から変な光が見えたと思ったら、急に周りが

見えなくなるほど眩しくなって――。

 

 気づいたら、空の上!!!

 

『ああああああぁぁ〜〜〜!!』

 

 と、ともかく、なんとかしないと〜!

 

 ゾクッ!?

 

 な、なに!?

 背中から、ものすごい悪寒が・・・・・・!

 

『うあああぁぁぁ〜〜〜!!』

 

 あ、あれって竜!?

 いや、ワイバーン!!!

 

『わあああああぁぁ〜〜〜!!』

 

 わ、私を食べる気!?

 い、いやだ。イヤだぁ〜〜〜!

 

 ワイバーンが、私に向かって飛んでくる!

 

『し、死んじゃうの・・・・・・?』

 

 死んじゃうの、私?

 

 イヤだ!

 イヤだぁ!!

 

『ルディ〜〜! ルディ〜〜!!』

 

 私は必死に、ルディの名前を叫んだ。

 

 そのとき――。

 

 ――ズドォン!

 

『えっ?』

 

 あ、あれはなに!?

 た、戦っている?

 誰かが、ワイバーンを相手に戦っている!?

 

 よく見ると、そこにいたのは全身黒い頭巾をか

ぶった男の人だった。

 

『――なんなの、あの魔法は……!?』

 

 男の人が腕を振るうたび、凄まじい風が巻き起

こる。

 

 ヒュゴォォォォォッ!!

 

 鋭く圧縮された風が刃となり、ワイバーンの右

翼を斬りつけた。

 

「グルアアアァァァッ!!」

 

 ワイバーンが咆哮を上げ、男の人に襲いかかる

 

 けれど――。

 

「――――、――――!!」

 

 男の人は攻撃に動じず、今度は巨大な竜巻を発

生させた。

 

 ゴォォォォォォッ!!

 

『う、うそ……!?』

 

 竜巻がワイバーンの巨体を巻き込み、空中へと

押し上げていく。

 

 す、すごい・・・・・・。

 

 あんなに大きな竜巻を、簡単に・・・・・・! 

「――――――、――――!?!」

 

 あっ、ワイバーンもあの竜巻を耐えて反撃した

 ああっ、あの人の右腕に爪が!!

 けど!男の人がワイバーンの爪を物ともせず、

左手をかざす。

 

 すると、その前に凄まじい勢いで回転する風の

球が現れた。

 

『えっ・・・・・・なに、あれ・・・・・・?』

 

 拳ほどの大きさだった風の球が、みるみるうち

に膨れ上がっていく。

 

「――――、――――!!」

 

 ――ズドォォォン!!

 

 猛烈な風圧を伴った球が、ワイバーンへ一直線

に叩き込まれた。

 

「ギャアアアァァァッ!!」

 

 ワイバーンの巨体が大きく吹き飛ばされる。

 

 けれど――。

 

 爪が貫かれたままの腕を引き抜くことができず

あの人もワイバーンと一緒に落下していった。

 

 う、うそ・・・・・・。

 

 風の刃・・・・・・。

 

 竜巻・・・・・・。

 

 あんな大きな風の球まで・・・・・・。

 

 私は、目の前の光景にただ呆然としていた。

 

『す、すごい・・・・・・』

 

 あんなに大きなワイバーンを倒した。

 

 あの頭巾の人、とんでもない魔法使いだ。

 

 まるで嵐みたいな風の魔法を、あんな簡単に

・・・・・・!

 それを連続で・・・・・・!

 

 あの人……いったい何者なの!?

 

『はっ!? い、いけない!!』

 

 そこで、ようやく自分の置かれている状況を思

い出した。

 

『私、今・・・・・・空の上だ』

 

 このままじゃ、地面に激突する!

 

『魔力を足元に集中させて、落下を止めるしか・・・

 ・・・・・・・・・』

 

 慌てて両手を地面へ向ける。

 

『お願い・・・・・・・・・!』

 

 身体に宿る魔力を一気に集め、足元へ向けて放

出する。

 

『はああああああぁ〜〜!!!』

 

 必死に魔力を放出しながら、私は地上へ向かっ

て落ちていった。

 

 ――このまま、無事に着地できるの!?

 

 ーto be continuedー

 

 




次回 生業
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