結界師 墨村 利守〜六面世界で奔走する〜   作:rOOd

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ああ


結界師

      【水無月 昼過ぎ】

 

      [烏森 墨村家] 

 

「結界師?」 

 

 俺たちは繁守さんの言葉の意味がわからず、首

をかしげた。

 

「うむ。墨村家は特殊な術を扱う家系じゃ。結界

 術を駆使し、古くから妖や怪異と戦ってきたの

 じゃ」

 

 繁守さんが静かに語ると、一同は顔を見合わせ

た。

 

「結界術・・・・・・?」

 

 誰もが初めて聞く言葉に戸惑いを隠せない。

 その時、襖が静かに開いた。

 利守が麦茶とコップを載せたお盆を手に、客間

へ入ってくる。

 

「おじいちゃん、うちの秘密をそんなにペラペラ

 しゃべっていいの?」

 

 少し呆れたような口調で利守が尋ねる。

 繁守さんは穏やかに笑い、小さく頷いた。 

 

「かまわん。我らの役目はとうに終えておる」

 

 一拍置き、繁守さんは黒木たちへ視線を向ける。

 

「それに、この件を解決するには、ある程度はこ

 ちらの事情を知ってもらわねば、話が進まんか

 らの」

 

 利守はやれやれという顔を浮かべ、麦茶をグラ

スに注ぎ、みんなに配った。

 配われた麦茶を一口飲んだ高木が手を挙げる。

 

「あの〜、結界って、陰陽師なんかも使う術です

 よね? それと何が違うんですか?」

 

 繁守さんは静かに頷いた。

 

「うむ、よい質問じゃ。確かに陰陽師も結界や

 障壁を扱う。

 しかし、あちらの結界は魔除けや封印、防御を

 主とした術じゃ」

 

 繁守さんは一拍置き、静かに続ける。

 

「一方、墨村家の間流結界術は根本から異なる。

 我らの術は『空間そのものを支配する術』

 じゃ」

「空間を・・・・・・支配?」

 

 俺たちは思わず息をのむ。

 

「うむ。空間を切り取り、閉じ、固定し、時には

 歪める。

 それによって妖や怪異を封じ、滅する。

 これこそが墨村家に伝わる間流結界術の真髄

 じゃ」

 

 繁守さんの熱弁で俺たちは黙り込んだ。

 しばらくすると、黒木は一度咳払いをし、繁守

さんを真っ直ぐ見つめた。

 

「・・・・・・話を元に戻します。七瀬と篠原の神隠し

 についてですが、その調査の依頼を引き受けて

 もらえますか?」

 

 繁守さんは静かに目を閉じ、しばらく考え込む

 やがて穏やかに頷いた。

 

「よかろう。君の依頼、墨村家が引き受けよう」

 

 その言葉に、客間の空気が少しだけ和らぐ。

 しかし、繁守さんは続けてこう告げた。

 

「じゃが、この一件は――利守に任せる」

「えっ?」

 

 突然名前を呼ばれた利守は、思わず目を丸くし

た。

 

「お、おじいちゃん!? なぜ僕が?」

 

 繁守さんは穏やかに微笑みながら頷く。

 

「うむ。この件は、お前が経験を積むには絶好の

 機会じゃ。それに、お前なら必ず真相へ辿り着

 ける」

 

 利守は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、やがて

覚悟を決めたように小さく息を吐き、黒木たちへ

向き直った。

 

「・・・・・・わかった。この依頼、僕が引き受ける」

 

 一拍置いて、利守は静かに続けた。

 

「黒木くん、それでいいかい?」

 

 黒木は真っ直ぐ利守を見つめ、力強く頷く。

 

「それでいい。正直、藁にもすがる思いなんだ。

 俺は君のことをよく知らない。

 でも、繁守さんは話を最後まで聞いてくれたし

 的確な説明や助言もしてくれた。

 だから、君も信じるよ」

「そうか・・・・・・なら、よろしく」

 

 利守は静かに立ち上がると、黒木の前まで歩み

寄り、右手を差し出した。

 

「できる限りのことはするよ」

 

 黒木はその手をしっかりと握り返す。

 

「うん・・・・・・ありがとう」

 

 その姿を見た繁守さんは微笑んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       【同時刻】

 

      [墨村家 上空] 

 

「・・・・・・・・・相変わらず甘い奴らだな」

 

 空中に浮かびながら、扇六郎は呆れたように墨

村家を見下ろえていた。

 

「しかし、あのガキもずいぶんと大きくなったも

 んだ」

 

 以前、裏会の尋問でこの家を訪れた時のことを

思い出す。  

 あの時は、あの家族の母親を散々こき下ろした

ものだった。

 

「まあ、こいつはラッキーだったな。結局、あい

 つらも、あの一件に巻き込まれることになるん

 だからな」

 

 ニカッと悪魔の笑みを浮かべ、舞い上がってい

った。 

 

「あの神隠しは、下手すれば裏会の幹部たちです

 ら匙を投げるもんだ」

 

 そう言って、西の方に飛び去った。

 

ーto be continuedー

 

 

 

 




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