私の推しは、皿の上にいる ~推し活の終着点は、究極の一体化でした~ 作:ねこ飼いたい
オリジナル:現代/日常
タグ:AI本文利用 短編小説 AI活用 サイコホラー 競馬 ブラックユーモア サイコパス 歪んだ愛
居酒屋で馬刺しを突きながら、愛馬(一口馬主)への情熱を語るOLのハルカ。
しかし、店主から聞かされたのは「引退した競走馬が辿る、食肉化という残酷な現実」だった。
生肉って、どうしてこんなに美しいんだろう。
皿の上にきれいに並んだ鮮やかな赤身に、白い脂がほんのりと差している。醤油をつけると表面がつやつやと光った。箸で一枚持ち上げ、おろしニンニクを少しのせて口に運ぶ。ねっとりとした濃厚な旨味と、独特の甘みが広がった。
「うまっ……」
思わず声が漏れる。よく冷えたビールを流し込み、喉を鳴らして飲み干す瞬間は、まさに至福だ。
「美味しいかい? ハルカちゃん」
カウンターの向こうから、作務衣姿の店主が気さくに声をかけてきた。ここは駅裏の路地にある小さな居酒屋『大自然』。店主の健二さんが一人で切り盛りしている、私のお気に入りの隠れ家だ。
「最高です、健二さん。ここの馬刺しはやっぱり格別ですね。臭みが全然なくて、いくらでも食べられちゃう」
「そいつはよかった。会津から直接仕入れてるからね。鮮度だけは自信があるんだ」
健二さんはグラスを拭きながら、ふと思い出したように尋ねてきた。
「そういえばハルカちゃん、競馬が好きだったよね。こないだそんな話をしてた気がするけど」
「あ、はい! 大好きです。馬券を買うのも楽しいですけど、私はどちらかというと、走っている馬たちの姿そのものが好きなんですよね」
「へえ、ロマン派だ。あ、『一口馬主』とかもやってるって言ってなかったっけ?」
「よく覚えてますね。まだ2頭だけですけど、そのうちの1頭が、この前ちょうどデビューしたところなんです」
スマホを取り出し、お気に入りの写真を見せる。栗毛の馬体が、栗東の坂路を駆け上がっている一枚だ。
「この子です。名前は『メルティハート』。目がくりくりしていて、本当に可愛いんですよ」
「綺麗な馬だね。自分の馬が走るとなると、応援にも熱が入るんじゃない?」
「もちろん! この子が出るレースの単勝と複勝は絶対買います。でも、出会ってから他のレースの馬券はほとんど買わなくなりました。一口馬主って、結構お金がかかるんですよ」
健二さんが「へえ」と身を乗り出す。
「一口でも、馬を所有するわけだからね。正直、儲かるもんなの?」
「全然儲かりません」私は苦笑してグラスを置いた。
「最初に購入代金を口数で割って払うだけじゃなくて、2歳になってからは毎月の預託料とか保険料、クラブの会費も発生するんです。私のクラブだと、1口あたり月に数千円は確実に引かれます。それが2頭分なので、毎月一万円近い固定出費ですね」
「毎月? じゃあ、勝って賞金が入らないとずっと赤字ってこと」
「勝っても厳しいですよ。賞金は全額が馬主に入るわけじゃなくて、騎手や調教師への進上金とか、クラブの手数料、税金も引かれます。残った額を400口とか500口で割るので、手元に入るのは本当にわずか。よほど大きな重賞でも勝たない限り、投資としては赤字です」
「なるほどねえ。割に合わないのに、どうして続けるの?」
素朴な質問に、私は胸を張って答えた。
「決まってます。馬が、私の『推し』だからです」
「推し?」
「そうです。アイドルを応援するファンと同じですよ。ライブに行ってグッズを買う感覚です。私が毎月払っているお金が、その子のカイバ代や日々のトレーニング費用になる。つまり私の資金で推しが育てられている。これって最高の推し活だと思いませんか」
「なるほど。ファンクラブの最上級みたいなもんだ。ハルカちゃんにとっては、その馬たちがアイドルなんだ」
「はい。だから、元気に無事に走ってくれさえすれば、それだけで幸せなんです」
そう言って、私は再び箸を伸ばし、皿の馬刺しを一枚口に運んだ。やっぱり美味しい。この歯ごたえと旨味は、他の肉では味わえない。
すると健二さんが、少しおかしそうな、それでいて引きつったような笑みを浮かべて私を見た。
「……あ〜。じゃあさ、ハルカちゃん。いま推しを食べてるってこと?」
「えっ?」
口の中の馬刺しを、そのまま飲み込んでいいのか一瞬迷った。
「何言ってるんですか? 馬刺しは馬刺しですよ。競走馬が馬刺しになるわけじゃないんですから」
私は冗談として受け流そうと、パタパタと手を振った。
「馬刺しに使われるのは、主に重種馬っていう、体が大きくて筋肉質な食肉用の馬なんです。ペルシュロンとか。競走馬はサラブレッドだから軽種馬だし、肉質が全然違いますよ。脂肪が少なくて筋肉質すぎるから、食用には向かないって聞いてます」
知識を披露して冗談を否定する。けれど健二さんはカウンターに肘をつき、困ったような顔で首を傾げた。
「あれ? 知らないの?」
「何をですか」
「競走馬もさ、普通に馬肉になるんだよ」
声は驚くほど平坦だった。居酒屋の賑やかな雑音の中で、その言葉だけが耳に冷たく刺さる。
「……え?」
「そりゃメインは重種馬だよ。でもサラブレッドだってたくさん食肉に加工されてる。ハルカちゃん、競走馬が引退したあと、どうなるか知ってる?」
「えっと……優秀な成績を残した馬は、種牡馬か繁殖牝馬になります。それ以外は乗馬になったり、地方競馬に移籍したり……」
「そう。建前はね」
健二さんはおしぼりで手を拭きながら、淡々と続けた。
「種牡馬や繁殖牝馬になれるのは、全体のほんの一握り。地方競馬に行ったって、そこでもいつか引退する。じゃあ残りの馬はどうなると思う? 毎年、日本で何千頭ものサラブレッドが生まれて、引退していくんだ」
「それは……乗馬になるって、よく引退馬のプロフィールに書いてありますけど」
「毎年3千頭から4千頭も引退馬が出るんだよ。それが全部、日本中の乗馬クラブや牧場で、死ぬまで面倒を見てもらえると思うかい?」
言葉に詰まった。考えたことがなかったわけじゃない。けれど、あえて考えないようにしていた現実を、目の前に突きつけられた気がした。
「乗馬クラブだってボランティアじゃない。エサ代も場所代もかかる。従順で適性のある優秀な馬だけが生き残る。じゃあ、適性のなかった馬や引き取り手のない馬はどうなるか」
健二さんは、私が残していた皿を指差した。
「乗馬用として引き取られたことにして、そのまま肥育牧場に送られるんだよ。しばらく大人しくさせて太らせてから、屠殺場に送られる。サラブレッドの肉は筋肉質で硬いから、缶詰のペットフードや桜鍋用、加工品の馬刺しになる。もちろん、安価な馬刺しとして居酒屋に出回ることもあるよ」
「そんな……」
胃のあたりが急に冷たくなった。さっきまで美味しく食べていた馬刺しが、急に生々しく感じられる。
「あ、ごめんごめん。純粋に馬が好きなハルカちゃんに、こんな話しちゃって。嫌な気分にさせたよね。今の話は忘れて。お口直しにレモンサワーでも奢るから」
健二さんは慌てて謝ってきたが、私は頭を振った。
頭の中で、様々な情報が交錯する。私の愛馬、メルティハート。未勝利戦で勝てず、もし引退することになったら。彼女もいつか、乗馬という名目でどこかの牧場に送られ、太らされて、そして……。
ゾクッとした。恐怖、悲しみ、怒り。色々な感情が押し寄せる中で、それとは全く別の感情が、胸の奥で静かに芽を出し始めていた。
「……いえ」
ぽつりと呟く。
「嫌な気分になんて、なってないです。むしろ、聞いてよかった」
「え?」
健二さんが怪訝そうな顔をする。私は皿の上の馬刺しを見つめた。赤い肉。それはかつて、どこかの競馬場で誰かの期待を背負って走っていたサラブレッドの一部だったのかもしれない。
「供養、みたいなものじゃないですか」
「供養?」
「はい。競馬界の厳しい現実の中で、ひっそりと消えていく馬たち。誰にも看取られず忘れ去られるくらいなら、私が応援した馬、私の推しが、最後は私の体の一部になってくれる。それってすごく素敵だと思いませんか」
「は……?」
健二さんの顔から笑みが消えた。
私は自分の胸に手を当てた。
「だって、そうでしょう。他人に売られて、知らないところで処分されて、誰かもわからない人に安い馬肉だって食べられるくらいなら、私が全部食べてあげたい。一口馬主として愛して、応援して、お金を払ってきたんです。その子の最後まで、私が責任を持ちたい。私の血となり肉となって、一生私の中で生き続ける。これ以上の愛の形って、ありますか」
熱を帯びた言葉に、健二さんは引きつった笑みのまま後ずさりした。
「さ、ハルカちゃん。それはちょっと、極端っていうか……」
「極端ですか? そんなことありません。推しと一つになりたい、推しを自分の中に閉じ込めたいって思うのは、ファンなら自然な欲求ですよ」
箸を持ち直し、残っていた最後の一枚をゆっくり口に入れる。噛みしめると、繊維の一本一本が千切れ、旨味が染み出した。これが、かつて命だったもの。美しく気高く走っていた、誰かの推しだったかもしれないもの。
ゴクリ、と飲み込む。
「美味しい。本当に、美味しいです」
満面の笑みで健二さんを見つめた。
「……やばいね」
健二さんは乾いた声で呟き、おでこの汗を拭った。
「ハルカちゃんに推された馬は、最後は食べられちゃうんだ。怖くて、もうお勧めしづらくなっちゃったよ」
「ふふ、何を言ってるんですか。もしメルティハートが引退することになったら、健二さんのルートでなんとか仕入れてくださいね。私、絶対に買い取って、全部食べますから」
「冗談きついって……」
「冗談に見えますか?」
首を少し傾げ、健二さんの目をじっと見つめる。健二さんはそれ以上何も言えなくなり、苦笑いを浮かべながら常連客の注文を取りに逃げていった。
私は一人、空になった皿を見つめる。スマホの画面を点けると、メルティハートが健気に走る姿があった。
「がんばってね、メルティ」
画面の中の愛馬に、そっと囁く。
「たくさん走って、たくさん勝ってね。でも、もしダメになっても大丈夫だからね。お姉ちゃんが、最後までずっと愛してあげるから」
胸の奥が、じんわりと温かくなっていくのを感じていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※本作は、人間と生成AIが共同で執筆した短編小説です。
制作工程は以下の通りです。
①原案・あらすじ:人間
②プロット作成:AI
③プロット修正:人間
④プロットから本文作成:AI
⑤本文修正:人間
④〜⑤を繰り返しながら、作品を完成させています。
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