それじゃ、今回も張り切っちゃおう!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
「一之瀬さんがいない以上、皆で一致団結あるのみだ。必ずこのクラスで勝利を掴むぞ!」
「「「おう!」」」
北方面の海岸では、Bクラスの作戦会議が開かれていた。神崎の宣言にBクラスの皆は一斉に応え、それぞれの持ち場に移動し始める。その様子だと問題はないだろう。
少し離れた茂みの陰から、その様子をじっと見守っていたのは――愛里、波瑠加、そして護衛として同行するカナンブレンとヒギンズブレンのグループだった。
「み、みんな……すごく真面目に話し合ってるね。一之瀬さんがいなくても、神崎くんを中心にしっかりまとまってて……すごいなぁ」
愛里は黒のスポブラとジャージズボン姿の裾をモジモジと引っ張りながら、小さな声で感心したように呟く。露出の多い格好にまだ少し慣れていないのか、恥ずかしさから耳たぶまで真っ赤に染まっていた。
「そうだねー。一之瀬が私たちの要塞側に行っちゃって留守なのに、この団結力はさすがBクラスって感じ。……って、愛里、そんなに縮こまってちゃダメだって! せっかくのスパイ仕様なんだから、もっと胸を張りなよ!」
波留加は愛里の背中をポンと軽く叩き、自分も腕を組んで涼しげな笑みを浮かべる。彼女自身もこのスポーティな戦闘スタイルをすっかり気に入っており、どこか堂々とした佇まいを見せていた。
その傍らで、カナンブレンとヒギンズブレンも「ブォン、ブォン」と機体を優しく鳴らし、まるで愛里を励ますようにそっと寄り添う。
「カナンちゃん、ヒギンズくん……ありがとう。うん、私も頑張って監視役の仕事を全うしなきゃ……!」
愛里が少しだけ勇気を出して背筋を伸ばすと、そのスポブラのフィット感によって引き締まった綺麗なウエストラインがふわりと際立つ。
その直後、近くの木陰からBクラスの調査をしていた男子生徒(神崎の補佐をしていた一員)が偶然こちらをチラリと見てしまう。
「うわっ……!? あ、あれはSクラスの……っ!?」
男子生徒は赤面してしまい、盛大に木の幹へと顔面から激突してひっくり返った。これもお約束と言えるだろう。
「あわわ……っ! だ、大丈夫かな……?」
「ほら見たことか、やっぱりあの『ブラック・スポーツ・ブラスター作戦』の破壊力は健在じゃん!……まあ、不正をする気配はゼロだし、こっちのグループも問題ナシってことでログハウスに戻るとしようか!」
波留加の軽快なツッコミと笑い声が響く中、愛里たちも安心して引き返していく。三グループの調査は問題なく終わり、残るはあと一グループだ。
※
西側の砂浜が広がるエリア。そこでは、Aクラスの面々が険しい表情を浮かべながら集まっていた。
「……ふん、葛城。アンタのやり方ではこの無人島試験を乗り切れない。俺たち坂柳派は独自に行動させてもらうよ」
「待て、橋本。今は派閥争いをしている場合ではない。学校側が求めているのはクラス全体の協力だぞ!」
葛城康平と橋本正義らが、一触即発の険しい雰囲気で激しい口論を繰り広げている。エリートが集まるAクラスとはいえ、内部での派閥対立が激しく、無人島でのサバイバルにおいても足並みが全く揃っていない状態だった。
そんなAクラスの様子を、少し離れた岩陰からじっと覗き見していたのは――恵、麻耶、そして護衛として同行するネリーブレンとグランチャーのグループだった。
「うわぁ……あっちもあっちでバチバチじゃん。一応エリート揃いのAクラスなのに、中でこんなに割れてて大丈夫なのかな?」
「ほんとよねー。せっかくのサバイバルなのに、これじゃあ自滅しかねない感じ……って、恵、ちょっと背筋伸ばしよ! せっかくのスパイ仕様なんだから、もっとカッコよくしなきゃ!」
恵は黒のスポブラとジャージズボン姿の裾を軽く整えながら、呆れたような、しかしどこか心配そうな声を漏らす。麻耶も腕を組みながら同意し、笑顔で軽く恵の肩をポンと叩いた。
その傍らで、ネリーブレンとグランチャーも「ブォン、ブォン」と小さく電子音を鳴らし、Aクラスのピリついた空気感をセンサーで解析している。
「ねえ、ネリーブレンたちもあそこのピリピリした空気を感じ取ってるみたい。……って、危なっ!」
その時、議論の最中にイライラした様子で周囲を見回した橋本が、偶然にも岩陰に隠れていた恵たちの姿をチラリと捉えてしまった。
「ん? あんなところに――って、うわっ……!?」
眩い黒のスポブラと洗練されたジャージ姿に身を包んだ恵と麻耶の姿が視界に飛び込んできた瞬間、橋本は言葉を失い、あまりの衝撃に完全に思考回路がショートした。まさかの展開に驚くのも無理はない。
「なっ、なんだあれは……! あんな反則級の格好をした女子がなんで無人島に……っ!?」
激しく動揺した橋本は、自分の足元にあった大きな流木に盛大につまづき、そのまま砂浜へと派手にダイブして顔面から砂まみれになってしまった。これもお約束としか言えないが、良い薬と言えるだろう。
「あははっ、またやったよ! あの人、綺麗なフォームでひっくり返ったね!」
「もー、せっかく隠れてたのに……でも、あんな調子じゃAクラスも当分内輪もめで手一杯だし、こっちから余計な心配をする必要はなさそうかな」
麻耶がクスクスと楽しそうに笑い声を上げ、恵も苦笑いを浮かべる。今の状況を考えれば余計な心配は必要ないし、あとは彼らだけでも大丈夫だ。
「そうね。ルール違反をして勝手な行動を起こす前に、自分たちの足元ですでに崩壊しかけてるし……よし、これで全グループの調査は完了ね。みんなでログハウスに戻りましょ!」
恵の明るい号令に合わせ、ネリーブレンとグランチャーも元気に機体を揺らして応える。四つのグループによる無人島全域の調査は無事に終了し、すべての情報は島の中央にそびえ立つSクラスの本部ログハウスへと集約されていこうとしていた。
※
一方の美雨は単独行動で、島全体に罠を設置していた。ただのサバイバル活動では面白くないので、とんでもない罠を次々と設置しているのだ。因みにSクラスには反応せず、他のクラスにのみ反応するとの事だ。
「ふう……これでよし。モルタデロさんの指示で設置したけど、他のクラスの皆が黙っていられないだろうな……」
美雨はため息をついた後、歩きながらログハウスへと戻り始める。罠は明日になったら起動するが、それ以前にルール違反を起こす者がいる事もあり得るので油断ならないだろう。
※
島の中央にそびえ立つ、真新しいログハウス。
その木の香りが漂う広々としたリビングには、無人島全域の調査を終えた各グループが続々と帰還し、にぎやかな活気に包まれていた。
「お疲れ様です! こちら、Cクラスの調査を完了しました。龍園さんたちは私たちの要塞をすっかりトラウマにしていて、すっかり大人しくなっていましたよ!」
モルタデロが軽快に敬礼しながら報告すると、続けて鈴音やひより、桔梗たちのグループも次々と室内に足を踏み入れる。
「こっちはDクラスの調査よ。……まあ、色々と目の毒な衣装のせいで男子たちは自滅してたけど、ルール違反どころか生き残るだけで精一杯みたいだったわ」
「Bクラスも神崎くんを中心にしっかりまとまっていて、不正の気配は全くありませんでした。みんな真面目にサバイバルに集中していますよ」
「Aクラスは葛城派と坂柳派で絶賛内輪もめ中! 橋本くんが岩陰の私たちを見て綺麗なフォームでひっくり返ってたし、当分余計な心配は要らなそうね!」
恵や麻耶、波留加、愛里たちがそれぞれの成果を報告し合い、比瑪やユウブレンたちも楽しそうな表情をしていた。連絡係として控えていた佐枝は、手元のタブレットに各班の情報を手際よく入力しながら、小さくうなずいた。
「ご苦労だった。どのクラスも、我がSクラスの威圧感と……一部のメンバーの『特殊すぎる衣装スパイ作戦』のおかげで、今のところ大きなルール違反や不穏な動きはないようだな」
「ふふっ、流石は我が教官! 私たちが仕掛けた心理的・視覚的プレッシャーの効果は絶大ですね!」
佐枝の冷静な分析に、モルタデロは胸を張ってニヤリと笑う。
そこに、少し遅れて美雨が静かにログハウスの扉を開けて戻ってきた。その様子だと罠の設置は既に終わっているみたいだ。
「ただいま戻りました。……ふう、島全体への罠の設置も、指示通り完璧に終わらせておきましたよ」
美雨の言葉に、室内の視線が一斉に彼女へと集まる。あの罠をこんなに早く設置した事は、実に見事としか言えない。
「おお、美雨さん! 流石の仕事の早さですね! ちなみに、どのような芸術的な罠を仕掛けたのですか?」
「ふふ、モルタデロさんの特製アレンジを加えた代物です。Sクラスの人間には一切反応せず、他のクラスの生徒が踏み込むと――まあ、明日になってからのお楽しみですね。きっと盛大な悲鳴が島中に響き渡ると思いますよ」
「……やりすぎには注意しなさいよ。とはいえ、これで外堀は完全に埋まったわね」
美雨が不敵な笑みを浮かべると、鈴音はわずかに眉をひそめつつも、頼もしい戦友を見る目でうなずいた。
時空を超えた強力な増援、比瑪とブレン&グランチャーたち。
島中を完全に掌握するスパイ仕様の精鋭グループ。
そして、島全体に張り巡らされた美雨特製の極秘トラップ網。
すべての準備は整った。
無人島サバイバル特別試験の裏で繰り広げられる、T.I.A.特別Sクラスによる『全島完全監視計画』は、静かに、そして完璧な布陣で明日への幕を開けるのだった。
ED:Rock'n Rouge(一之瀬バージョン)
明日への準備は万端。今日は平穏だと良いのですが。
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