モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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フィレモンだ。俺たちはSクラスというのを作ったが、旧プールが教室で大丈夫か? まあ、モルタデロの事だから大丈夫だが。
おっと、今から話が始まるな。さあ、いつものオープニング、行くぞ!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第2話 クラス引き抜き大作戦

 一之瀬を仲間にしたモルタデロとフィレモンは、彼女と共に次のメンバー探しに。クラスとして成り立つには後二人いるが、モルタデロとしてはそれだけでは足りないみたいだ。

 

「ボス、一之瀬さん」

「帆波で良いですよ」

「そうでしたね、帆波さん。私としては二人だけでなく、あと七人は必要ですね。せめてこのぐらい増やさなければ、今後の活動にも響きます」

 

 モルタデロの説明に一之瀬は納得の表情で頷く。

 確かに五人にしても、クラスの活動はギリギリにしか見えないし、ある程度数を増やさなければ苦戦する可能性もある。最低でも十人ぐらい揃えなければ意味がないのだ。

 

「狙いは決まっているのか?」

「勿論です。ボス。Cクラスから椎名ひより。Dクラスから堀北鈴音、櫛田桔梗、軽井沢恵、佐倉愛里、王美雨、長谷部波瑠加です。彼女たちを早速捕まえましょう!」

「な、なんだって……!? 今、何人の名前を挙げたんだモルタデロ! 椎名に、堀北に、軽井沢に……おい、Dクラスの主要メンバーを根こそぎ拉致する気か!? そんなことしたら学校中が大パニックになるぞ!」

 

 フィレモンが冷や汗をダラダラと流しながら頭を抱えて叫ぶ。しかし、モルタデロは気にする様子もなく、頭のサボテンに水をやりながらニヤリと笑った。

 

「何を言っているんですかボス。スパーッと華麗に、かつ強制的に引き抜くのが我々T.I.A.の流儀です。さあ、善は急げ、ターゲットたちを確保しに行きますよ!」

「ふふ、なんだか楽しそうですね。お手伝いします!」

 

 一之瀬帆波も満面の笑みで続き、フィレモンは「お前までノリノリになるな!」と心の中で絶叫するしかなかった。

 こうして、モルタデロたちの超迷惑かつ圧倒的なスカウト作戦が幕を開けた――。

 

 *

 

 まずはCクラスの読書家、椎名ひよりの元へ。

 図書館の静寂を破るように、突然「本棚そのものに変装したモルタデロ」が壁からスルスルと移動してきた。

 

「失礼、お嬢さん。この学園の謎を解き明かす『禁断のミステリー小説』の続きが読みたければ、Sクラスへいらっしゃい」

「わぁ……! 私、こういう予測不能な展開、すごくワクワクします! 喜んで参加しますね」

 

 ひよりは意外すぎる変装に目を輝かせ、一秒で仲間になってしまった。フィレモンが「即決すぎないか!?」とツッコミを入れる暇もない。

 これでCクラスは問題なく終了。まあ、ひよりだけなら大丈夫だが。

 

 ※

 

 続いてはDクラスの面々だ。ターゲットの一人、櫛田桔梗は、廊下でクラスメイトと話しているところを狙われた。

 

「やあ、可愛いお嬢さん。表の顔も裏の顔も素敵ですが、我がSクラスでスパーッとスパイ活動をしませんか?」

「え……? 私、そんな裏の顔なんて……って、ちょっと何する気!?」

 

 モルタデロが耳元で不穏な囁き(あるいは完璧すぎる見抜かれ方)をした瞬間、櫛田は冷や汗をかきつつも、「この変な人たちを逆に探ってやろう」という計算から、笑顔で承諾せざるを得なくなった。何を言われたかが気になるが。

 

 ※

 

 次いで、校内を歩いていた軽井沢恵と佐倉愛里、王美雨、長谷部波瑠加のグループ。

 モルタデロはなぜか巨大な工事用コーンに変装して道の真ん中に佇んでおり、軽井沢たちが通りかかった瞬間にパカッと割れて飛び出した。

 

「きゃっ、何これ変態!?」

「不審者よーっ!」

「待て待て、逃がしませんよ!」

「私が説明するから!」

 

 軽井沢たちが悲鳴を上げて逃げ出そうとするが、モルタデロのギャグアニメ並みの超人的な身のこなしと、一之瀬の人懐っこい説得の前に次々と捕縛されていく。佐倉は恐怖で小さくなり、王と長谷部も呆然とする間に、気づけば全員まとめてSクラスの拠点へと連行されてしまった。

 

 ※

 

 そして――最後に残るは大物、Dクラスの頭脳・堀北鈴音である。

 彼女は現在、中庭でDクラスをどう一番に上げるか考えていて、その事で悩んでいた。

 

(このままだとまずいわね。何とかしなければ……)

 

 堀北が心の中で考えた直後、空から鉄球がゴチンと彼女の頭に直撃。そのまま堀北は目を回しながら失神し、倒れてしまった。

 そこにモルタデロたちが駆け付け、失神している堀北を見つめる。

 

「大成功です」

「何が大成功だ! 失神させるバカが何処にいる!」

「全くです、ボス。平和的かつ物理的な交渉こそ、我々T.I.A.の真骨頂というわけです」

「痛打した挙句に拉致するな! スパイじゃなくてただの極悪非道な犯罪組織だろうが!」

「す、少し荒っぽいですけど……これで全員揃いましたね!」

 

 頭を抱えて絶叫するフィレモンの前で、モルタデロは涼しい顔をして、気絶した堀北をまるで荷物のように軽々と担ぎ上げた。その傍らで、一之瀬がどこか楽しそうに拍手をしている。

 こうして、モルタデロたちの超迷惑かつ圧倒的なスカウト作戦により、ターゲット全員の確保が完了したのだった。

 

 ※

 

 ――数分後。

 校地の隅にある錆び付いた旧プールの更衣室(改め、新設Sクラスの拠点)。

 薄暗い室内には、長椅子や持ち込まれたパイプ椅子が並べられ、そこに一之瀬帆波、椎名ひより、櫛田桔梗、軽井沢恵、佐倉愛里、王美雨、長谷部波瑠加の面々がずらりと座らされていた。そして床の上には、ようやく目を覚ましたばかりの堀北鈴音が、頭に大きなタンコブを作りながら不機嫌そうに起き上がっている。

 

「……ここは、一体……? 私をどうするつもりですか、あなたたち」

 

 堀北の鋭い視線が、頭にサボテンを乗せたモルタデロを射抜く。しかし、モルタデロは微動だにせず、悠然と胸を張ってみせた。

 

「目覚めましたか、鈴音さん。ようこそ、我らがT.I.A.特別Sクラスへ!」

「Sクラス……? そんなクラス、この学校に存在するはずがありません。それに、私たちが勝手にBクラスやDクラスから引き抜かれるような真似が、学校側で認められるわけが――」

「ふふふ、坂柳理事長からしっかりと許可をもらっていますよ」

「っ……!」

 

 一之瀬が爽やかな笑顔で書類をひらりと見せると、鈴音は絶句してしまう。まさか裏でこの様な事があったとは予想外だ。

 室内に集められた他のメンバーたちも、それぞれの反応を示していた。

 

「なんだか面白そうなことが始まりそうですね」

(ふーん、この怪しい人たちを逆に利用してやれないかしら)

「学園生活が変な展開に……」

「大変な事になりました……」

「大丈夫かな……」

「まあ、こうなった以上は楽しむしかないよね」

 

 ひよりはワクワクした目を輝かせ、櫛田は腹黒い笑顔を隠す。軽井沢、佐倉、王の三人が不安な表情をしていて、長谷部は苦笑いしている。

 

「ボス、これで人員は完璧に揃いました。最高にして最強のSクラスの誕生です!」

「もうどうにでもなれ……」

 

 モルタデロが満面の笑みでフィレモンを振り返る。フィレモンは自分の額に手を当て、深い溜息をついた。

 もう止めることはできない。この個性豊かすぎる問題児(と優秀な逸材たち)を巻き込んだスパイ活動が、今まさにこの学園の底から始まろうとしていた。

 

「……こうなったからには、もう好きにしなさい! ただし、私の計画の邪魔だけは許さないからね、モルタデロ!」

 

 堀北がやむを得ず立ち上がり、全員がそれぞれの思いを胸に抱く中、高度育成高等学校の秩序を完全に粉砕する狂騒劇の幕が、高らかに上がったのだった。

 しかし、王がある事を思いつき、手を挙げる。

 

「あの……」

「はい、王さん」

「みーちゃんで良いですよ。担任はどうするのですか?」

 

 王の発言にこの場にいた全員がフリーズしてしまい、この場に冷たい風が吹いてしまう。生徒の人数が揃ったのに、教師がいなければ意味がない。完成目前の前に最大の壁にぶつかった彼らは、今後どうなるのか。




ED:Rock'n Rouge(一之瀬バージョン)

生徒が揃いましたが、最大の難関が! 果たしてどうなるのか!?

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