さて、今回はサバイバル試験も終わりを告げる事になるわ。皆、準備は良いかしら?
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
サバイバル試験は最終日に入り、いよいよ結果発表の時だ。この場にいるのはSクラス、Aクラス、Bクラス、Dクラスのメンバーと教師陣。Cクラスは全滅なのでこの場にはいない。
更にSクラス以外の者たちはかなりボロボロの状態。特に男子の殆どは全身包帯まみれで酷い目に遭ったのは丸分かりだ。
「結果発表は私が行います。にしても、皆さん。こんなにもボロボロになるとは驚きましたね」
「いや、モルタデロさんたちのやり過ぎ行為でこうなりました……」
モルタデロの驚きに対し、平田が苦笑いしながらツッコミを入れる。彼は無傷で助かったのが気になるが。因みに綾小路、葛城一派、神崎なども同じ状況だ。
「では、最下位はCクラスで0ポイント。3位はAクラスで120ポイント」
「な!?」
まさかの三位に葛城たちAクラスは驚いてしまう。罠に引っ掛かる者も続出したり、リーダーを当てられた事も含まれている。こうなるとトップとしての名折れは確実であり、今後がどうなるのか気になるところだ。
「2位はBクラスで320ポイント。1位はDクラスで350ポイントとなります。」
「まさかトップに立つとはな……だが、こんな状態で嬉しい理由ねーだろ……」
須藤たちはトップに立った事を喜びたいが、彼らは全身包帯まみれで喜ぶ事はなく、シクシクと涙を流していた。美雨の仕掛けた罠、彼女たちのスポブラジャージズボンの姿、更にモルタデロのイタズラで酷い目に遭っているのだ。
「うわ……泣いているじゃん……やり過ぎじゃない?」
「確実にトラウマ植え付けられているかも……」
この光景を見た麻耶と恵は苦笑いしながら見つめている。無事に任務を果たす事ができたが、他のクラスにやり過ぎた行為をしてしまった。これでDクラス以外Sクラスに怯えてしまうのも確実と言えるだろう。Bクラスは一之瀬が何とかしてくれるが。
ボロボロの包帯姿でしゃくり上げる須藤たちを横目に、佐枝はやれやれといった様子で軽く頭を抱えた。
「まあ、結果は結果だ。Sクラスが特殊なポジションとして島全体を支配し、実質的な脅威として君臨した結果、他クラスはまともな行動すらままならなかったからな。特にAクラスの失速は想定外だったが……」
「くっ……! まさか、あの得体の知れない罠の数々と、モルタデロとかいう男の奇行にここまで掻き乱されるとはな。トップの座を奪われるだけでなく、三位に沈むとは我がクラスの不覚……!」
佐枝の言葉に葛城は悔しそうに歯噛みし、拳を固く握り締める。今後モルタデロによって様々なトラップを仕掛けそうで、これからの展開が負担になるだろう。
「俺たちBクラスも二位には入ったが……正直、一之瀬が必死にメンタルをケアしてくれなければ、今頃全員リタイアしていただろうな。あの島はサバイバル試験という名の精神攻撃の実験場だった……」
隣に立つ神崎も、疲労の色を濃く浮かべながら静かに息をついた。帆波のメンタルケアのおかげで何とか事なきを得たが、精神的には疲れているのは確実だ。
「これだけトラウマを植え付けられたら、多分次に行動するとしたら……」
「あれかもね……皆で逃げよう!」
波瑠加の推測に美雨が合図を出し、彼女たちは一斉に回れ右して逃げ始める。モルタデロは白鳥に変身して空をとび、ブレンたち、佐枝、フィレモンも逃げまくる。
「「「待てやゴラァァァァァァ!!」」」
それを見た須藤たちは包帯まみれのまま、一斉にモルタデロたちを追いかける。綾小路、平田、神崎、葛城たちはこの光景を呆然と見ているが。
「モルタデロという男は何を考えているんだ?」
「さあ……」
葛城の質問に綾小路はそう応えるしかなかった。むしろ今後は下手に刺激しない方が良いだろう。
※
「うわ……皆、カンカンに怒っているよ!」
「大体モルタデロさんがこんな事するから、皆のストレスがマッハになるでしょうが!」
Sクラスの皆は須藤たちに追いかけられながら、クルーザーへと走りまくっていた。桔梗は須藤たちの様子に慌ててしまい、鈴音がモルタデロに対してツッコミを入れている。まあ、やり過ぎでこうなるのも無理はないが。
「ちょっとモルタデロさん! あなた、さっきから我が物顔で白鳥になって優雅に飛んでるけど、私たちが地上でめちゃくちゃ命懸けで走ってるの分かってる!?」
波留加が息を切らしながら、前方を優雅に滑空する白鳥――モルタデロに向かって叫ぶ。翼を優雅に羽ばたかせるモルタデロは、首をクネッと曲げて涼しい顔で返した。
「ふっ、スパイたるもの、空中からの退避経路の確保は基本中の基本です! さあ皆さん、あのクルーザーに飛び乗るのです!」
「そういう問題じゃないでしょ!!」
鈴音が声を裏返しながら、迫り来る須藤たちの怒号を背後に感じて全力疾走する。その後ろでは、愛里や麻耶もジャージズボンを翻し、必死の形相で足をもつれさせながら走っていた。
一歩間違えれば、今度は自分たちが包帯まみれの男子たちに捕まり、どんなお仕置きを受けるか分からない。
「待てコラァ! 逃がすか、このクソ外人どもがあぁぁっ!!」
先頭を走る須藤は、顔の包帯を風になびかせ、もはや野生の獣のような形相でクルーザーの桟橋へと迫る。その圧倒的な殺気と怨念のパワーは、一時的に彼らの怪我の痛みを完全に忘れさせていた。
「急げ、乗るんだ! 早くエンジンをかけるぞ!」
「了解だ!」
フィレモンが焦った様子でクルーザーの操縦席に飛び込み、ブレンたちや佐枝も次々と甲板へとなだれ込む。
Sクラスの女子たちも息を切らせながら飛び乗り、最後尾のモルタデロが人間に戻りながら急いでタラップを跳ね上げた。
「はい、ここまで! 皆さん、ごきげんよう!」
モルタデロたちが逃げた後、桟橋に到達した須藤たち。しかし、あと一歩のところで届かず、拳を握りしめて地団駄を踏む。
「くそっ……! 逃げやがった……っ!」
「覚えてろよモルタデロオオオ!! 来年は絶対倍返しにしてやるからなァァァ!!」
須藤たちの悔しさが無人島から叫びまくる中、洋上へと動き出したクルーザーの甲板から、モルタデロはひらひらと手を振っている。一之瀬やひよりたちは複雑そうな顔で遠ざかる島を見送っていた。
「まっ、こういう展開も悪くないかもね」
「本当ですね。」
「悪い事をした気分もありますが……」
比瑪の笑顔にひよりも同意。愛里は苦笑いしながら応えていた。今後もこの様な騒動は起こるが、彼女たちなら大丈夫だろう。
こうして、笑いと涙と数え切れないほどのトラウマを残し、前代未聞の無人島サバイバル試験は、文字通りの意味で「伝説」となって幕を閉じたのである。
ED:Rock'n Rouge(一之瀬バージョン)
試験が終わりましたが、モルタデロたちによって酷い目に遭ったのは数知れずです。
感想等宜しくお願いします!