Sクラスは完成したけど、肝心の教師がいないの。果たしてどうなってしまうのか不安だけど、モルタデロさんならなんとかしてくれると思うよ。
さあ、今回も一緒に盛り上がろう! スタート!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
王の発言を聞いたモルタデロたちは、まさかの展開にフリーズしてしまう。教師がいなければクラスとして成り立たない。こうなるとまた拉致する必要があるだろう。
「困りましたね。ここは一つ、暇な教師を捕まえましょう」
「待て待てモルタデロ! 無理やり拉致するバカが何処にいるか!」
「迷惑行為だから止めなさい!」
モルタデロのとんでもない行動を、フィレモンと堀北が阻止に向かう。このまま彼を野放しにすれば、とんでもない事になるのは確実。これ以上この学園がパニックになるのは止めて欲しいと思っているのだ。(Sクラスになった時点で、崩壊は既に確定しているが)
「こうなると理事長に相談しに行かないとね。モルタデロさん、私たちで相談しに向かいます!」
一之瀬がパイプ椅子から立ち上がり、理事長に相談しに向かおうとしたーーその時だった。
「その必要はない」
「へ?」
全員が声のした方を振り向くと、更衣室の中に誰かが入ってきた。ポニーテールをした女性であり、服装からすれば教師である事は確実だ。
その姿を見た堀北、櫛田、王、軽井沢、佐倉、長谷部は驚きを隠せずにいた。
「茶柱先生!」
「理事長から転属を命じられた。私がこのクラスの担任を務める事になる。Dクラスは新たな担任が配属されるが、ツルピカハゲのとんでもおっさんだ」
「うわ……」
「Dクラスの皆、大丈夫かな……」
「ちょっと待て、今『ツルピカハゲのとんでもおっさん』って聞こえたが……まさか俺のことじゃないよな!?」
フィレモンが自分の数少ない二本の毛を逆立てて青ざめる。しかし、茶柱は首を横に振った。
「違う。単なる普通のおっさんの教師で、飛山平蔵という奴だ。まあいつが来ればDクラスは何とかなるだろう」
「それなら安心だ」
茶柱の説明にフィレモンは安堵する。自分だったらどうなっていたのか分からないのも無理はない。
「……まあ、そういうことだ。私もいつまでも底辺のクラスに付き合っている暇はない。この学園のシステムを根本からひっくり返すというなら、この茶柱佐枝、担任として加わってやろうじゃないか」
「あの茶柱先生がこのクラスに赴任するなんて……」
「心強いです!」
茶柱は腕を組み、冷徹な瞳の奥にどこか面白がるような光を宿してフッと笑った。元Dクラスの堀北たちは驚愕を隠せないが、一之瀬と椎名は歓迎ムードだ。
「素晴らしい! これでメンバー、そして担任の教師まで完璧に揃いました! しかし、いつまでもこの湿気くさいボロ更衣室に留まるわけにはいきません。我がT.I.A.の威信にかけて、この場所を我がSクラスの最高の本部に生まれ変わらせましょう!」
「は? ここからどうやって……って、おい、何を取り出す気だ!?」
モルタデロが懐から取り出したのは、なぜか真っ赤な巨大な起爆スイッチだった。恐らく同じT.I.A.所属のバクテリア博士から渡された可能性があるだろう。
「――テレポート&メガ・リノベーション・システム、起動!」
校地の隅で凄まじい地響きが巻き起こり、旧プールの更衣室を中心に砂煙が舞い上がる。生徒たちが悲鳴を上げて身構える中、煙が晴れた瞬間に現れたのは、もはや元の面影すらない、近未来的な要塞の如き超巨大ビルディングだった。
「なっ……なんだこれ……!?」
「嘘でしょ!?」
あまりのスケールの大きさに、堀北をはじめとする全員が言葉を失う。モルタデロは得意満面に胸を張り、新しく生まれ変わった建物の構造を誇らしげに解説し始めた。
「見てください! 我がSクラスの本部は、完全なる多機能要塞へと進化しました!」
モルタデロは皆を連れて、ビルの中を案内する。誰もがキョトンとする中、彼はガイドさんに変装してビルの中を説明し始めた。
「一階は室内温室プール。もともとのプール跡地をフル活用した、南国リゾートさながらの温室プールです。諜報員のクールダウンから優雅なティータイムまで完璧に対応しています」
「優雅なティータイムか。確かに悪くないかもね」
「南国リゾートが味わえるとは凄いです!」
長谷部が頷きながら納得していて、佐倉が手を合わせながら目を輝かせている。学園のプールが南国気分で味わえるとは予想外だが、考えてみればSクラスに入って良かったかも知れない。
「二階は教室。最新鋭のホログラムや超高機能デスクが並ぶ、世界最高峰の学習環境を備えたSクラス専用の学び舎です」
「考えたのは良いけど、他のクラスが嫉妬するわね……」
堀北が納得するが、Dクラスや他のクラスがどう反応するかの想像に苦笑いしてしまう。多分、彼らは怒りのあまり嫉妬してしまい、襲い掛かる可能性もあり得るだろう。
「三階は室内運動場とトレーニング機器。プロレスのリングから最新のスパイ格闘訓練用マシンまで揃った、肉体を極限まで鍛え上げるハードなフロアです」
「確かに運動としてはありかも!」
「私も頑張らないと!」
櫛田と一之瀬は笑顔で手を叩きながら納得する。これで他クラスとの差をつけられるなら、利用せずにはいられないのだ。
「四階は、一流シェフの料理が並ぶビュッフェエリアと、極上のソファやマッサージチェアが完備された極上の癒やし空間です! さらに……隣接する温泉棟には、日々の疲れを完璧に癒やす『源泉かけ流しの大浴場と露天温泉』も完備しております!」
「ええっ、温泉まであるの!? ここ、本当に学校の敷地内……よね?」
「ビュッフェに温泉なんて、最高すぎます!」
恵が目を丸くして驚き、王もテンションが一気に跳ね上がる。過酷なサバイバル生活を強いられていたDクラスの面々にとって、この贅沢すぎる環境は天国そのものだった。
「五階は、生徒たちと担任である茶柱先生一人ひとりに割り当てられた、プライベートが完全に守られた豪華な個室群です。各部屋には最新の防音設備と、T.I.A.特製のセキュリティが施されています」
ずらりと並ぶホテルのスイートルーム並みの扉を見て、茶柱は小さく感嘆の息を漏らした。これなら安心して生活できるし、不安になる事もない。
「……これだけの個室が用意されていれば、寮生活の不満など一切出まい。生徒のプライバシーも完璧に守られるな」
「もちろんです! 茶柱先生の部屋には、極上の高級日本茶と茶菓子も常備していますよ」
「ふっ、悪くない待遇だな」
茶柱は静かな笑みを浮かべながら、心の底から満足している。この様な待遇は過去になかったので、こういうのも悪くないと思っているのだろう。
「そして最後に――ビル全体の屋上に広がる開放的な庭園、そしてその隣には、世界中のあらゆる文献と禁断の機密データが眠る専用の巨大図書館が堂々とそびえ立っています!」
屋上の緑豊かな庭園から、隣接する圧倒的な蔵書量の近代図書館を見上げた瞬間、椎名の瞳が狂おしいほどの輝きを帯びた。
「わぁ……! 世界中の珍しい小説や、ここにしかなさそうな専門書がびっしり詰まっていそうです……! 私、ここに入り浸ってもいいですか!?」
「ええ、大歓迎ですひよりさん! 機密データをハッキングするための端末も完備されていますからね!」
「それは別の意味で物騒だからやめろ」
モルタデロの発言にすかさずフィレモンがツッコミを入れる。その様子を見た一之瀬たちは微笑んでいた。
「でも、これだけあれば困る事はないし、最高のスタートが切れるね」
「そうだな。ここからがSクラスの始まりだな。これからが楽しみだ」
一之瀬の発言に茶柱も同意し、彼女は青い空を見上げる。空は清らかな風が吹いていて、彼女たちの新たなスタートを祝福しているようだ。
※
――こうして、元・ボロ更衣室の跡地には、高度育成高等学校の常識を木端微塵に粉砕する『超要塞型Sクラス本部』が完全に出現した。
プライベートポイントの搾取も、過酷なクラス間闘争も、この圧倒的な要塞の前ではもはや無意味。モルタデロとフィレモン、そして個性豊かな仲間たちによる前代未聞のスパイ学園ライフは、こうして最高のスタートを切ったのだった。
ED:Rock'n Rouge(一之瀬バージョン)
Sクラスが本格的にスタート!お楽しみに!
感想等宜しくお願いします!