モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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堀北鈴音よ。無事に任務は完了したけど、フィレモンさんが爆発に巻き込まれるとはね……。あれがいつも通りなら何とか改革しないと。
さて、今回も始まるわよ! 準備は良いかしら?

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第29話 マドリードでの休日

 アタッシュケース奪還の任務が終わった後、モルタデロの案内でマドリードを歩く事に。日本とは違う景色も楽しめて最高だ。

 

「そろそろお昼ね。スペイン料理でも食べない?」

「そうですね。けど、何処にしましょうか……」

 

 比瑪の提案に帆波も了承するが、どの店にするのか分からない。しかも鈴音たちはスペインに来るのは初めてなので、オススメの店を探すのが一番だ。

 

「お昼ご飯なら、このモルタデロにお任せあれ! マドリードの裏路地を知り尽くした私こそ、最高のグルメガイドですぞ!」

 

 先ほどまでのコウノトリ姿から見事に地上へと生還したモルタデロが、自信満々に胸を張りながら親指を立てる。その隣で普通の姿に戻っているフィレモンが、ジト目を向けながらガリガリと首を鳴らした。

 

「お前の選ぶ店など、どうせろくでもないイタズラ料理か、爆弾入りのタパスに決まっている……! 信用できるか!」

「そんなこと言わずに、ボス! スペインの食文化は情熱的かつサプライズに満ちているのです!」

 

 モルタデロの怪しい自信に鈴音は深くため息をつきつつも、お腹の虫が鳴りそうになるのをこらえながらスマホの地図アプリを開いた。彼の言う事を信じたら、絶対に碌な展開にならない。

 

「モルタデロの言うことに乗ったら、間違いなくご飯の代わりに爆発物を食べさせられそうね……。帆波、一年前に行った時でおすすめの店とかってあったりする?」

 

 鈴音の問いかけに、帆波は「うーん」と少し考え込んでから、パッと明るい笑顔を咲かせた。その様子だと何か知っているみたいだ。

 

「そうだね! 一年前にモルタデロさんに連れて行ってもらった、マドリードの有名な歴史あるバルとか、すごく美味しかった記憶があるよ。生ハムも絶品だったし!」

「おっ、さすが帆波さん、分かっていらっしゃる! あの店は生ハムの原木が常備されていて、切り立てをその場でパクッとね!」

 

 モルタデロが手を叩いて賛同すると、食いしん坊な恵や麻耶の目が一気に輝き出した。生ハムの原木と聞いた以上、見逃す手にはいかない。

 

「生ハムの原木……! なんかすごく本格的で美味しそうじゃない!」

「いいよね! パエリアとかチュロスとかも食べたいなぁ!」

「私も食べたくなります!」

「本場のスペイン料理、食べておかないとね!」

 

 愛里やひよりもうなずき、すっかりお昼の話題で盛り上がる女子たち。佐枝もサングラスを少しずらし、落ち着いたトーンで口を開いた。

 

「ふむ、現地の本場の味を堪能するのも、今回の研修の一環……という名目で悪くはないな。あまり怪しい店でなければ、そこにするとしよう」

「お任せください、先生! では、世界一安全で美味しい(かもしれない)マドリードのランチツアーに出発です!」

 

 モルタデロの威勢の良い掛け声を合図に、戦闘モードから一転してグルメモードへと切り替えたSクラスの一行。スペインの爽やかな青空の下、賑やかな足取りで街の中心街へと繰り出し始めた。

 

 ※

 

 目的の店に辿り着いた一行はそれぞれの椅子に座るが、向こう側には料理がずらりと並んでいる。恐らくこのレストランはビュッフェスタイルとなっているのだろう。

 

「あっ、言い忘れました。ここのレストランはビュッフェスタイルとなっていますので」

「それなら自由に食べられるけど、日本語書いていたら分かりやすいけどな……」

「ここはスペインだからね……」

 

 桔梗と美雨は苦笑いしながらも、すぐに料理を取りに向かう。様々なスペイン料理が沢山あるので、どれにすれば良いのか悩むだろう。

 

「うわぁ、すごい……! 本場のパエリアにアヒージョ、オムレツのトルティージャまで、見渡す限りのスペイン料理だらけじゃない!」

「凄い料理ばかりでどれにすれば良いのか分からないみたいね」

「まずはサラダから取ります」

「ドレッシングも決めないとね」

 

 ビュッフェ台に並んだ色とりどりの料理を目の当たりにし、恵は目を輝かせて小さく飛び跳ねる。麻耶や愛里、波留加もさっそくお皿を手に取り、トングをカチカチと鳴らし始めた。

 

「私はやっぱり、切り立ての生ハムは外せないかな。それと冷製のガスパチョも、この暑いスペインの気候にはぴったりだし」

「そうね。ここで食べられるのも久しぶりだし」

「スペイン料理と言ったら、ここで食べるのが決め手ですからね」

 

 ひよりはガイドブックを片手に手際よくお皿に盛り付けていき、満面の笑みを浮かべる。比瑪や帆波も、懐かしい本場の香りに心躍らせながら、それぞれ好みのタパスを小皿に取り分けていく。

 一方、鈴音は少し離れた場所で、並べられた料理のプレートをじっと見つめながら、スペイン語の表記を頭の中で必死に翻訳していた。

 

「ええと……これはエビのアヒージョで、こっちは……。一応、見た目で判断するしかないわね」

「おや、堀北さん。そんなに真面目な顔をして、どれにしようか迷っているの?」

 

 優雅に微笑みながら近づいてきた桔梗の手元を見ると、彼女の皿には綺麗にバランスよく盛り付けられた色鮮やかなパエリアとタパスが並んでいた。さすがの要領の良さである。

 

「迷うというか、日本語の表記がないから文字通り手探りよ。……って、モルタデロ、あなたの皿は一体何よそれ……!」

 

 鈴音が思わず声を上げた先には、モルタデロが両手で抱えきれないほど高く積み上げた「超特大タワー盛り」の皿があった。一番上にはなぜか、丸ごとのバナナと巨大なチュロスが不自然に突き刺さっている。

 

「ふふっ、これぞ真のスパイエージェントにふさわしい、炭水化物と糖分とサプライズの融合プレートです! 名付けて『マドリードの乱気流盛り』です!」

「絶対に胃もたれするどころか、別の意味で命に関わるでしょそれ……!」

 

 鈴音の鋭いツッコミが飛ぶのも無理なく、バランス悪いと誰もが思うだろう。その様子を見たフィレモンはやれやれと頭を抱えながら、比較的シンプルで安全そうなオリーブのマリネとパンを自分の皿に取っていた。

 

「お前たちのその悪ふざけを見ているだけで、食欲が半分に減るわ……。まあいい、せっかくのスペインだ、静かに食事を味あわせてくれ」

 

 全員がそれぞれの皿を持ち、広々としたテラス席や店内のテーブルへと分かれて腰を下ろす。自分の手に入れた料理は全て用意した。後は追加としてどれにするのかも決めてある。

 

「それでは、マドリードでの無事な任務完了と、美味しいランチに――乾杯!」

 

 帆波の明るい音頭を合図に、Sクラスの一行はグラスを軽く合わせ、スペインでの特別なランチタイムを心ゆくまで堪能し始めるのだった。本場の味に舌鼓を打ちながら、久しぶりの穏やかなひとときが、爽やかなマドリードの風と共に過ぎていく――。

 

 ※

 

「な、なんだこれぇぇーーっ!! ズルい、ズルすぎるぞお前らぁぁーーっ!!」

 

 夜の高度育成高等学校の一年Cクラス専用の休憩スペースに、須藤の絶叫と血涙を流すような悲鳴が盛大に響き渡る。

 プロジェクター、あるいは大型モニターに映し出されているのは、スペイン・マドリードの開放的なテラス席で、極上の生ハムやパエリアを囲みながら優雅にグラスを掲げる鈴音や帆波たちの楽しげな生配信映像だ。

 

「ちくしょう……! 俺たちなんて今頃、ジメジメした教室で居残り課題とか自習とかに追われてるってのに、なんだあの豪華なビュッフェは……! 生ハムの原木だぞ!? 切り立ての生ハムって絶対美味いやつじゃねぇか!」

「いいなぁ……。しかも女の子たちと一緒に海外でランチだろ? 俺たちの青春の輝きと格差がありすぎて泣けてくるんだけど……」

「しかも、画面の向こうにはモルタデロとかいう怪しげなおっさんまでいるんだぞ。カオスすぎてツッコミどころしかないのに、飯だけは超美味そうっていうのが一番腹立つ!」

 

 須藤が悔しさのあまり机をバンバンと叩きながら悶絶する傍らで、池と山内も頭を抱えてガックリと崩れ落ちていた。

 クラスの男子たちが画面に向かって「いいなー!」「こっちにもおすそ分けしろー!」と画面越しに吠える中、近くでその様子を見ていた平田は、苦笑いを浮かべながらやれやれと首を横に振っていた……。




ED:SUMMER EYES(王バージョン)

羨ましいにも程がありますね……。まあ、仕方がない事ですが。

須藤「おい!」

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