モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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軽井沢恵だよ。ゲルニカの歴史を学んでいる最中、まさか美術品が盗まれるなんて。やるからにら奪還しておかないとね。
今回も物語がスタート! 早速行ってみよー!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ



第32話 美術品を奪還せよ

 犯人グループは美術館の地下メンテナンス用通路を通って、北側の古い出口へ向かってる事が判明。モルタデロたちは二手に分かれて行動を開始した。

 モルタデロ、フィレモン、鈴音、桔梗、帆波、恵、麻耶は犯人を追いかける役割。美雨、愛里、波留加、ひより、比瑪、佐枝は出口前で捕まえる事になっている。美雨のトラップで一網打尽になるが。

 モルタデロたちは地下メンテナンス用通路を通りながら、犯人の行方を捜していた。因みにフィレモンが先頭だ。

 

「出口前には美雨がトラップを仕掛け、仲間たちと共に抑え込む。俺たちは見つけたら、全力で追いかけるぞ!」

「そうですね、ボス。後は犯人の行方をどう掴めるかですが」

「その通りだけど……何故ネズミの姿に?」

 

 フィレモンとモルタデロの意見に鈴音は納得するが、モルタデロがネズミに変身している事に疑問を感じた。地下にネズミがいるのは納得するが、わざわざ変身する必要はあるのか。

 

「地下通路に潜入するなら、現地の生態系に完全に溶け込むのがプロのスパイの嗜みです! ほら、この機敏な身のこなし、まさにドブネズミの――」

「溶け込みすぎて俺が危うく踏み潰しそうになったわ! すぐに元の姿に戻れ、この不気味なネズミ男!」

 

 フィレモンが後方に腕を伸ばしてモルタデロの尻尾(?)をひっつかみ、強引に持ち上げる。モルタデロは「キーキー!」と妙にリアルな鳴き声を上げながらジタバタと暴れた。

 その後ろで、鈴音は呆れ果てたように深くため息をつく。

 

「いくら何でも、地下だからってわざわざネズミに変身することないでしょうに……。本当に、余計なことだけは一流よね」

「あら、でも案外可愛いところもあるじゃない。ねえ、モルタデロさん?」

 

 桔梗が不敵な笑みを浮かべながらネズミ姿のモルタデロの頭をポンと軽く叩くと、モルタデロは「ひゃうっ!」と奇妙な悲鳴を上げた。

 そんな賑やかな(そして少しシュールな)一団を、帆波、恵、麻耶の三人がハラハラしながら見守っている。

 

「ふふ、モルタデロさんたちが騒がしくしてくれてるおかげで、緊張しすぎずに進めるかも……って、あそこに何か落ちていない?」

 

 帆波が足元を指差すと、薄暗いコンクリートの床に、黒いインクのようなシミと、ピカソの額縁の装飾片がポツリと落ちていた。恐らく犯人が通っているに違いない。

 

「本当だ! 装飾の破片があるってことは、犯人は間違いなくこのルートを通って先へ急いでいるかも!」

「逃がさないんだから……! 急ごうよ、みんな!」

 

 恵と麻耶が気合を入れ直して前方に視線を向けると、フィレモンも険しい顔つきで低く唸った。手がかりを見つけた以上、そのルートにたどる必要がある。

 

「よし、痕跡は新鮮だ。犯人はそう遠くない。ここからは私を先頭に、音を立てずに一気に間合いを詰めるぞ。モルタデロ、ふざけたマネをしたら後で特製お灸を据えてやるからな」

「アイアイサー、ボス!」

 

 ネズミの姿から慌てて人間の姿に戻ったモルタデロが敬礼する。

 地下通路の冷んやりとした空気を切り裂きながら、鈴音たちは犯人の逃走先である北側の出口へと向かい出す。すると、犯人と思われる数名の男性が、絵画を持ちながら慌てて駆け出しているのが見えた。

 

「待て、そこを動くな――っ!」

 

 フィレモンの怒号が地下通路のコンクリート壁に反響し、重く響き渡る。

 先頭を走るフィレモンに続き、モルタデロ、鈴音、桔梗、そして帆波や恵、麻耶たちが一斉に加速した。ピカソの額縁を抱えた犯人グループの男たちは、背後から迫る圧倒的な気配と、特に大鎌を振り回す勢いの桔梗(または大型ハンマー)の殺気に気付き、顔面蒼白でさらに足元を乱す。

 

「くそっ、なんであんなバケモノみたいなガキどもが追ってくるんだ……!」

「いいから走れ! 北側の出口を出れば、待機している仲間の車があるはずだ!」

 

 犯人グループが必死に逃げた先に、丸い光を放つ北側の出口の扉が見えてきた。

 

「出口だ! あそこを抜け出せば俺たちの勝ちだ――っ!」

 

 男たちが希望を抱いて出口の扉を勢いよく蹴破り、外の光景へと飛び出そうとした――その瞬間。

 

 

「――お疲れ様です! 行き止まりですよ!」

 

 

 待ち構えていた美雨がパッと満面の笑みを浮かべ、手に持ったスイッチをポチッと押した。

 地面に仕掛けられていたのは、美雨特製の『バナナスリップトラップ』。華麗すぎるほどに全員が綺麗に足を取られ、そのまま宙を舞う犯人グループ。そこにひより、比瑪、愛里、波留加がジャンプしながら襲い掛かり、彼らをプレスして抑え込んだ。

 

「よし! 成功!」

「完璧な挟み撃ち作戦大成功だね!」

 

 ひよりと美雨がハイタッチをした直後、犯人グループは頭にたんこぶができてしまい、目を回しながら気絶していた。これで犯人は逮捕したが、この行為はやり過ぎと言えるだろう。

 その一方で、佐枝がしっかりと地面に落ちていた『ピカソの額縁(特殊暗号化データ入り)』を拾い上げ、確かな手応えを感じるように頷いた。

 

「ふむ、目的の美術品とデータは無事に回収完了だ。怪我人は全員無事だな」

「やったぁ! これで二度目の任務も大成功だね!」

「私たちならやれるかも!」

「これでもう一冊分くらいの小説のネタができちゃったわ……!」

 

 帆波や恵たちがパッと明るい笑顔を咲かせ、アンティークの額縁を撫でる。波留加や比瑪、愛里もホッと胸を撫で下ろし、ひよりはノートに夢中でペンを走らせていた。

 すると、桔梗は未発表のピカソの絵を見ると、その姿に顔を真っ青にしながら恐怖を感じていた。

 

「こ、この絵……フランコ将軍を批評している光景だけど、そのやり方に残酷過ぎて……怖い……」

 

 いつもは不敵な笑みや底知れない余裕を浮かべている桔梗が、今や冷や汗を流し、小刻みに震えながら額縁から目を背けている。そのあまりに意外すぎる反応に、鈴音や帆波たちは思わず動きを止めた。

 

「櫛田さんが怯えるなんて……よっぽどだね。それだけあの絵に込められた怨念や恐怖が、生々しく伝わってくるってことなのかな……」

「うん……。ただの絵画なのに、描いた人間の剥き出しの怒りとか、権力者に対する容赦ない風刺の狂気みたいなものが、ダイレクトに頭の中に流れ込んでくるみたいで……私、こういうの少し苦手かも……」

「確かに、さっきから見てるとゾッとするよね……」

「芸術の奥深さを感じたかも……」

 

 普段は冷静沈着な桔梗が見せる珍しい弱音に、恵や愛里もそっと目を逸らす。

 芸術が持つ力は時に美しさだけでなく、見る者の心を抉るような強烈な刃にもなる――それを身をもって体感した瞬間だった。

 

「ふん、芸術家の情念などというものは、爆発の美学に比べれば――」

「今は黙ってろ、モルタデロ」

 

 空気の読めない発言をしようとしたモルタデロの口を、フィレモンが容赦なく手で塞いで制圧する。

 佐枝はそんな様子を横目で見つつ、回収したピカソの額縁をしっかりと抱え直した。

 

「人間の業や戦争の暗部を抉り出す表現か……。教科書や本で学ぶのとはわけが違う、現場ならではの生きた経験になったな。すぐに美術館の中へ戻るぞ」

 

 佐枝の指示に全員が従い、美術館の中へと向かい出す。今回の事件の報告は勿論、芸術の奥深さを心に秘めながら。




ED:SUMMER EYES(王バージョン)

美術品奪還成功。更に芸術の奥深さを知りました。

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