さて、物語が始まるよ! 皆、一緒に頑張ろう!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
スペイン研修二日目。
鈴音たちは夏休みの研修期間中、モルタデロとフィレモンの住むアパートに住んでいた。普通のスパイはこれぐらいが普通なので、慣れるのも大切だ。
鈴音たちはスポブラジャージからそれぞれのスパイ衣装に着替え、アパートから出て青い空を見上げる。雲一つない青空だ。
「うーん! スペインの朝も悪くないわね」
「ええ。けど、他の皆はどうしているのかな?」
帆波の背伸びに美雨が笑顔で答えた後、モルタデロとフィレモンが姿を現す。彼らも今起きたばかりだ。
「おはようございます。朝食を取りましたら、T.I.A.本部へ向かいましょう。実は他クラスで新たな動きが起こったのです」
「えっ? 何かあったの?」
モルタデロの報告を聞いた鈴音たちは驚いてしまう。まさか自分たちがいない間、AからDクラスの連中が動き出したとは予想外だ。
「話は本部で説明だ。まずは朝ご飯だ」
「そうだな。確かカフェがあるから、そこに行くとしよう」
フィレモンの説明に佐枝も同意し、彼らは近くにあるカフェへと歩き始める。他クラスが動き出した以上、こちらも負けてはいられないという気持ちを抱きながら。
※
T.I.A.本部の地下作戦ルーム。
無機質な金属で作られた円卓の中央に設置された大型ホログラムモニターに、鮮明な映像と音声が映し出される。そこに映っているのは、日本のはるか遠く、高度育成高等学校の地下会議室の様子だった。
「これをご覧ください! 我々がスペインで華麗に美術品を回収している裏で、日本の可愛い生徒さんたちが、何やら大変な作戦会議を開いていました!」
モルタデロが誇らしげに胸を張りながらリモコンのボタンを押すと、会議室で有栖が冷徹に微笑み、ホワイトボードの前に立っている場面が再生された。
――『今回お呼びしたのはSクラスについてと、二学期から彼らの妨害に遭ってもどう生き抜くかです……』
「なっ……これ、日本の高校の地下会議室よね!? あんたたち、いつの間にこんな隠し撮り映像を手に入れてたのよ……!」
鈴音が信じられないといった表情でモニターを見つめ、思わず絶句する。
映像の中では、須藤や池、山内が「奴らに近づいたら死ぬ恐れがある!」とガタガタ震えていたり、有栖が「カオスな日常に耐える訓練」として「空から降ってくる巨大マグロの回避訓練」や「バナナの皮が敷き詰められた廊下の走行」などを真面目に提案している姿がハッキリと映し出されていた。
「す、すごい……! A〜Dクラスの全員が手を組んで、私たちをまるで大怪獣か何かみたいに対策しようとしてるよ……!」
「しかも、あの坂柳さんが中心になって共同防衛網とか組んでる……」
「ふむふむ、『対Sクラス防衛要塞』ね……これは二学期に戻ったとき、最高の小説のプロットが書けそうだわ!」
恵が目を丸くし、麻耶も冷や汗を流す。ひよりだけは手帳を取り出して、なぜか目を輝かせていた。
佐枝はサングラスを押し上げ、呆れと感心が入り交じった複雑な表情で頭を抱える。
「まったく……あいつらは何を考えているんだ。私たちが普通に研修しているというのに、勝手にラスボス扱いしてサバイバル訓練を始めるなんて……。それに、あの『マグロの回避訓練』って何だ、正気か」
「ふん、凡百の生徒たちが集まってどれだけ対策を練ろうと、我がT.I.A.の誇るスパイ技術と、私の天才的な発明の前には意味のない足掻きに過ぎません!」
モルタデロが豪快に笑い声を上げると、隣にいたフィレモンがバシッと彼の後頭部をハリセン(どこから取り出したのか)で叩いた。
「調子に乗るな! 向こうがそこまで警戒しているということは、二学期に戻った瞬間、一筋縄ではいかない迎撃態勢が敷かれているということだ。油断すれば、こちらが返り討ちに遭うぞ」
フィレモンの的確な指摘に、桔梗も小さくクスクスと笑いながら不敵な瞳を光らせる。この様子だと退屈しなくて済みそうだろう。
「あら、でも面白そうじゃない。私たちが日本に帰ったとき、あの子たちがどんな顔して待ち構えているのかしら。せっかくあんなに盛大な『防衛網』を作ってくれてるんだもの、期待に応えてあげないとね」
桔梗のゾクッとするような笑みに、帆波や美雨も苦笑いを浮かべる。こうなるとAからDクラスは返り討ちになる可能性が高いだろう。
「そこで我々もスパイ研修も兼ねて、特殊な訓練を行います。まずは外国語の訓練。英語、日本語、スペイン語などを学びます」
「確かに外国人と話す時は、言葉は不可欠ですね」
まずは外国語の授業。スペインなどの様々な国にいる以上、外国語は必須。愛里も納得しながら頷いていた。
「次は背後からの不意打ち攻撃。気付かれないようにスピードを上げて、攻撃する事が必要です」
「じゃあ、電流も?」
「電流って、それはもはやスパイ訓練という名の殺人サバイバルじゃない……!」
波留加が真顔で恐ろしい確認をした直後、鈴音は盛大に額を押さえて天を仰いだ。
しかし、モルタデロはまったく気にする様子もなく、むしろ嬉しそうな表情で胸を張る。
「さすが波留加さん、実践的で素晴らしい着眼点です! 敵はいつ何時、背後から不意を突いてくるか分かりません。だからこそ、ビリッと痺れるほどのスリルと緊張感を常に味わう必要があるのです!」
「そんなスリル、誰も味わいたくないわよ……!」
鈴音の鋭いツッコミが響く中、モルタデロは次のホログラム画面にパッと切り替えた。そこには、さらに怪しげな訓練項目の数々が映し出されている。
モルタデロ式・超スパルタスパイ訓練メニュー
* 第3の訓練:『超高速・変装見破りフェイント』:敵がモルタデロの姿を模してどこに潜んでいるか、五感を研ぎ澄まして当てる。外れると爆発する。
* 第4の訓練:『空中大脱出・バナナボートサバイバル』:マドリードの上空からパラシュートなしで飛び降り、見事にバルコニーに着地する。
* 第5の訓練:『対・A〜Dクラス連合奇襲シミュレーション』:日本に戻った際、坂柳たちが仕掛けてくるであろう「マグロ回避」や「バナナトラップ」の裏をかくための高度な心理戦と物理破壊。
「な、なにこれ……。第3からすでに命の危険しか感じないんだけど……!」
「私たち、本当に女子高生だよね……?」
恵が青ざめながらホログラムの文字を指差すと、麻耶や愛里も遠い目をしていた。これで本当に大丈夫なのかと。
しかし、比瑪や帆波はどこか慣れた手つきで自分のスパイ用ガジェットのベルトを締め直す。ここまで来たらやるしかない。
「でも、向こうがあそこまで本気で『対Sクラス防衛要塞』なんて作ってるなら、こっちも中途半端な実力じゃすぐに返り討ちに遭っちゃうもんね。ね、帆波ちゃん?」
「そうですね! 坂柳さんたちの予測をいい意味で裏切るためにも、この特訓、全力でクリアしちゃいましょう!」
前向きすぎる帆波の笑顔に、モルタデロは「おお、その意気ですぞ!」と感動したように涙を拭う。
その隣で、フィレモンがやれやれと首を横に振りながら、皆に対して指示を出す。
「じゃあ、まずはスペイン語を学ぶとしよう。外国語を学ぶ事は基本だからな」
「「「はーい!」」」
(スペイン語か。私もこの機会に学ぶとするか)
フィレモンの指示に帆波たちは手を挙げながら応え、佐枝も心の中で思いながら受ける事に。ここから研修は更に加速するが、果たしてどうなるのか。
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
モルタデロたちの訓練もスタート!果たして?
感想等よろしくお願いします!