では、今回も盛り上がりましょう!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
モルタデロたちはスペインのサッカースタジアムに到着し、そこで試合を見る。マドリードとバルセロナの試合が行われていて、激しく盛り上がりを見せていた。
「凄い人気! これがヨーロッパサッカーね!」
スペイン本場のサッカーリーグを見た鈴音たちは大興奮。最高峰の戦いを生で見られるとは夢にも思わないだろう。
「その通りです。我がスペインはサッカー王国の一つなので」
「私たちも初めて見たけど、凄かったからね」
「そうですね。シュートも凄かったです!」
モルタデロの説明と帆波と比瑪の話に、鈴音たちは納得の表情をする。スペインでのサッカーの人気はとても強く、世界中のファンも駆けつけているのだ。
ピッチを駆け抜ける選手たちの鋭い動きと、スタジアム全体を揺らすような大歓声。その圧倒的な熱気は、テレビ画面越しでは絶対に味わえない生きた迫力に満ちていた。
「すごい……。選手の足元の技術はもちろんだけど、チーム全体の連動性とスペースの作り方が緻密だわ。ただ走っているだけじゃなくて、一瞬の判断の積み重ねでゲームが組み立てられている……」
鈴音は目を輝かせながらピッチを凝視し、プロの戦術眼をフル回転させて試合の奥深さに感心している。
その隣で、ひよりはノートを広げ、サラサラとペンを走らせていた。
「スペインにとってサッカーって、単なるスポーツ以上のものなんだって。人々の生活や文化、そして誇りがすべてあのピッチに凝縮されているみたい……。すごくドラマチックで、見ているだけで胸が熱くなるよ」
ひよりの文学的でロマンチックな感想に、恵や愛里も深くうなずく。この様な光景を見た事だけでも、良い収穫となるだろう。
「うん! サッカーのルールをそこまで詳しく知らなかったけど、こんな間近で見ると自然と応援したくなっちゃうね!」
「あそこの選手、すごいスピードでパスを繋いだよ! まるでスパイの連携プレーみたい……って、それじゃダメか」
愛里の微笑ましい例えに、麻耶や美雨もクスリと笑う。
ピッチ上では、マドリード側の見事なスルーパスから鮮やかなシュートが決まり、スタンドが一際大きな歓声と熱狂の渦に包まれた。
「おお――っ! 見事なゴールです!」
モルタデロも両手を大きく突き上げて歓声を送り、フィレモンも腕を組みながら満足げにうなずいている。鈴音たちも拍手しながら興奮していた。
「ふむ、さすがは世界最高峰のリーグだ。個々の実力だけでなく、チームとしての組織力が見事に噛み合っている。お前たちも、日々のスパイ訓練や学校生活におけるチームワークに通じるものがあると感じただろう?」
「ああ、そうだな。どれだけ個人の能力が高くても、組織としてどう連動するかで結果は大きく変わる……。今回の研修旅行は、ただの観光以上の収穫になりそうだな」
フィレモンの言葉に、佐枝はサングラスの奥の目を細め、静かに肯定の笑みを浮かべた。
すると、選手の一人の蹴り飛ばされたボールが観客席へと飛んできた。しかも、鈴音たちの方へ。
「おっと!」
鈴音がボールを見事キャッチ。すると、観客席から大歓声と拍手が響き渡った。今のシュートをキャッチするとは見事である。
「おぉ、すごい反応速度だ! さすがSクラスの特訓を受けているだけはありますね!」
モルタデロが感心したように手を叩き、周囲のスペイン人サポーターたちも「¡Muy bien!(素晴らしい!)」と歓声を上げながら鈴音に拍手を送る。
突然のことで少し頬を赤らめつつも、鈴音は落ち着いた様子でボールをしっかりと両手で抱え直した。
「ふん、この程度の飛来物、スパイの動体視力なら当然よ」
そう言いながらも、どこか誇らしげな笑みを浮かべる鈴音の姿に、帆波や恵たちは「鈴音ちゃん、かっこいい!」「まるで本物のサポーターみたい!」と嬉しそうに駆け寄る。
すると、マドリードの監督が観客席の方を向き、ペラペラと話し出す。それを聞いたモルタデロはすぐに翻訳する。
「どうやらキーパー交代をするが、良い選手がいないとの事。すぐに鈴音さんに来て欲しいと」
「ええっ!? まあ、頼みとなら……」
鈴音がすぐに観客席からピッチへ向かおうとするが、バルセロナの監督もすぐにペラペラと話し出す。恐らく桔梗たちを使おうとしているのだろう。
「こちらは帆波さんを。あ、こっちは桔梗さんを。我がクラスの女子生徒は二チームに分かれてそれぞれのクラブのサポートに。ピッチで選手として活躍してもらいます!」
「「「ええっ!?」」」
モルタデロからの話を聞いた鈴音たちは、まさかの驚きを隠せずにいた。ここに来てスペインサッカークラブの助っ人をするとは予想外としか言えないだろう。
※
まさか観客席から直接、世界最高峰のピッチへと招集されることになろうとは――。
スタジアムのロッカールームで急遽、それぞれのクラブのユニフォームを身にまとったSクラスの面々は、信じられないといった表情で顔を見合わせる。
「ちょっと、どういうことよこれ……! 観客席で試合を観戦していただけなのに、なんで私たちがマドリードとバルセロナの試合に助っ人として出場しなきゃいけないわけ!?」
マドリードのゴールキーパー用ユニフォームを着せられた鈴音が、信じられないといった様子で声を荒らげる。その隣で、桔梗はどこか楽しげな笑みを浮かべながら自分の背番号を確認していた。
「あら、いいじゃない。マドリードのゴールを守るなんて、またとないスリル満点の経験だもの。ねえ、恵ちゃん、麻耶ちゃん?」
「う、うん……! 控えめに言って大事件だよこれ……!」
「美雨ちゃん、トラップの準備はいい?」
「バッチリです! ゴール前にバナナの皮……じゃなくて、完璧な鉄壁の守りを固めます!」
皆がそれぞれ気合を入れていて、やるべき事をやる覚悟を決めている。こうなると止まる理由にはいかないだろう。
※
一方、バルセロナ側のベンチに控える帆波たちも、気合十分な表情を浮かべていた。こちらも準備万端である。
「すごいことになったね……! でも、せっかく世界的なプロの舞台に立たせてもらったんだから、私たちのチームワーク、あっと言わせるくらいのプレイを見せようよ!」
「そうだね、帆波っち! 私の足の速さなら、サイドを駆け抜けるくらいお手の物だよ!」
「波留加ちゃん、無理しないでね……って、ひよりちゃんは何を書いてるの?」
「ふふ、これからのピッチ上での戦術プロットと、小説の新しいクライマックスの構想をね!」
「面白そうかも!」
帆波たちが楽しい会話をした後、鈴音たちがピッチに姿を現す。帆波たちも気合を入れた後、急いでピッチへと向かい出した。
「まったく……サッカーの試合観戦に来たはずが、いつの間にか選手としてピッチに立っているとはな。まあ、彼女たちの実力が本場のプロにどこまで通用するか、見物させてもらうさ」
ピッチ脇で見守る佐枝は、あまりの展開の斜め上を行くシュールさに、思わずサングラスを少しずらして天を仰いだ。まさかこの様な事は予想外である。
「行けーーっ! 我がSクラスの精鋭たちよ! 相手がバルセロナだろうがレアルだろうが、モルタデロ式スパイタックルで蹴散らすのですぞ――っ!」
「それファールだから退場になるからな、モルタデロ!」
フィレモンとモルタデロもスタンドから大旗を振って猛烈にアピールしている。Sクラスのさらなる飛躍を、心の底から楽しみにしているのだ。
そして――主審のホルンが鳴り響き、後半戦が再開された。
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
鈴音たちがスペインサッカーに参戦。果たして!?
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