モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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皆、堀北真希よ。
Sクラスはスタートしたけど、まさかいきなり大きな要塞になるとは……。まあ、こんな展開も悪くないけど、Sクラスをトップにする覚悟があるわ!
さあ、気を取り直して。モルタデロとフィレモン よう実戦記。始まるわよ!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第4話 スパイ活動の始まり

 Sクラスがスタートしてから翌日。二階の教室では茶柱の説明が行われていた。これまで通り学園の基本は勿論だが、ある任務も追加されていた。

 

「スパイ任務ですか?」

 

 堀北の質問に対し、茶柱はコクリと頷く。このSクラスはT.I.A.の所属となる以上、スパイ任務は必ずある。

 

「そうだ。お前たちはこの学園に関する任務に取り掛かり、成功したらポイントが貰える仕組みだ。難易度が高い程、手に入れる量も高くなる」

 

 茶柱の説明に誰もが真剣な表情で聞いていた。

 確かにこのクラスはスパイクラスであり、この様な事があってもおかしくない。そうなると真剣に取り組み、確実にこなすしかない。

 

「それだけではない。我がSクラスはT.I.A.の特別組織として特例が認められている。……これまでの学園の規則とは異なり、外部での仕事や活動を行うための校外への外出も正式に許可される」

 

 茶柱のその言葉に、教室の空気が一瞬で変わった。

 

「外に出ることが許可されるなんて……本当ですか?」

「ああ。任務のついでだろうと、個人の活動だろうと自由だ。ただし、結果を出せばの話だがな」

 

 その説明を聞いた瞬間、佐倉はホッと胸をなで下ろし、小さく安堵の息をついた。

 

(よかった……これなら、以前やっていたグラビアアイドルの活動を、学校に隠れることなくまた再開できる……)

 

 学園の厳しい規則によって押し殺さざるを得なかった自分の居場所や夢が、この破天荒なSクラスのおかげで思わぬ形で守られたことに、佐倉は密かに感激していた。モルタデロには感謝する必要があるだろう。

 

「外部での任務ね。ポイントを稼ぐ手段としては、理にかなっているわね」

 

 堀北も納得したように頷いた――その時だった。

 

 ガシャンッ!!

 

「「「!?」」」

 

 静かな教室の窓ガラスが突如として派手に砕け散り、黒づくめの怪しげな男がもの凄い勢いで飛び込んできた。顔をマスクで隠し、手には物騒な通信機器を持ったその男は、狂気に満ちた笑みを浮かべて叫ぶ。

 

「へへへ……噂のSクラスか! ここにある最新の機密データを奪えば、俺の一人勝ちだぁ!」

「なっ、侵入者……!?」

「おや、お客さんのようですね」

 

 教室中がどよめく中、モルタデロが普通に悠長に構えている。しかし、女子たちは瞬時に臨戦態勢に入り、真剣な表情で男を睨みつけていた。

 

「ふざけないで! 勝手に私たちの城に入ってこないでよ!」

 

 軽井沢が叫ぶと同時に、櫛田がいきなり駆け出していく。そのまま鮮やかなフェイクで男の足を引っ掛け、バランスを崩させる事に成功。

 

「次!」

「OK!」

「はい!」

 

 そこに長谷部と王が絶妙なタイミングで椅子を投げつけ、さらに佐倉が怯えながらも放った重い辞書が男の側頭部にクリーンヒットした。

 

「い、今です!」

「これで終わりよ!」

 

 そして最後は、体勢を崩した男の懐にすっと踏み込んだ堀北が、見事な回し蹴りを叩き込んだ。その蹴りはまさに素早く、風の様な速度だ。

 

 ドガッ!!

 

「グエッ……!?」

 

 完璧すぎる連携プレーの前に、侵入者は一撃で床に沈み、ビクとも動かなくなった。一之瀬と椎名が素早く手際よくロープを取り出し、数秒でぐるぐる巻きにして完全拘束を完了させる。

 

「拘束したよ!」

「終わりました!」

「すごいです、皆さん! 息がぴったりでしたね!」

「ふん、足手まといがいなかったおかげよ」

 

 モルタデロの拍手の言葉に、堀北は涼しい顔で髪を整える。

 そこにフィレモンが倒れた男のポケットから転がり出た身元証拠証と暗号端末を確認し、目を見開いて絶叫した。

 

「な、なんだって……!? こいつはただの学園の不良じゃないぞ……! 国外を拠点に国家転覆を企てている最重要指名手配のスパイ組織の幹部だ……!」

「なっ、国家転覆……!?」

「「「ええーっ!?」」」

 

 教室中が再び絶叫に包まれる。学園の敷地にそんな物騒なテロリストが紛れ込んでいたこと自体が異常事態だった。

 その瞬間、教室のメインモニターが自動で起動し、T.I.A.の本部から緊急の音声通話が鳴り響いた。

 

『――こちら本部。見事な連携による国家犯罪者の身柄確保、ご苦労だった! つきましては、本件の特別報奨金として――当クラスの参加者全員に対し、一人あたり【一億ポイント】を支給する!』

「「「い、一億ポイント……!?」」」

 

 生徒たちのあまりの声量に、要塞の窓ガラスがビリビリと震えた。プライベートポイントの概念を完全に破壊した天文学的な数字に、全員が言葉を失い、完全にフリーズしてしまう。

 さらに、通信の最後に本部からの追加アナウンスが響いた。

 

『――なお、現場を統括し、テロリストを迎え撃った(?)担任の茶柱教師に対しても、同額の配給を行う!』

「…………」

 

 冷徹非道、常に冷静沈着を貫いていた茶柱の瞳が、この瞬間、完全に激しい$マーク(あるいはポイントマーク)へと変化した。

 

「……ふっ。T.I.A.の福利厚生も、たまには悪くないものだな」

「今、目が$マークになりましたよね! 大丈夫ですか!?」

 

 茶柱の発言を聞いた堀北は、彼女の身体を揺らしながら落ち着かせる。先程の姿を見れば、誰もが驚いてしまうのも無理はないだろう。

 

「でも、これだけあれば困る事はないけどね……」

「他のクラスが聞いたらどうなるかですが……」

 

 王と椎名が苦笑いする中、堀北たちも同意しながら頷く。この事を他のクラスが聞いたら、絶対に黙ってないと心の底から感じながら。

 

 ※

 

 Sクラスの規格外すぎる存在は、平和(だった)高度育成高等学校の生徒や教師たちに、かつてないほどの激震に走らせることになった。Bクラスでは普通に対処して頑張っているが、他の三クラスはどうなのか見てみよう。

 

 ※

 

 Cクラスでは独裁者である龍園がいる。彼らは読書家の椎名ひよりを突如として奪われただけでなく、さらに自分たちの縄張りのすぐ近くにこんなふざけた要塞が出現したことに驚いていた。おまけに一億ポイントを稼いだのは予想外だ。

 龍園はニヤリと不敵な笑みを浮かべつつも、内心では面白くなさそうに舌打ちをしていた。

 

「ククク……おもしれぇじゃねぇか。俺のコレクションからひよりを勝手に連れ去った挙句、あんなデカい城を建てやがって……。おい、伊吹、石崎! ちょっとあのふざけた要塞にご挨拶に行ってやろうぜ!」

 

 龍園は戦闘態勢に入り、二人の手下を引き連れてSクラスの本部へ乗り込む気満々で動き出す。しかし、これが彼らの運命をぶち壊す事になるとは知らずに。

 

 ※

 

 頂点に君臨するAクラスでは、リーダーの坂柳有栖が自室の窓から遠くに見える超巨大ビルを見上げながら、上品に紅茶のカップを傾けていた。

 

「ふふっ……理事長が許可を出したというのは本当だったのですね。モルタデロさん、そしてフィレモンさん……一体どのような基準で、あのような問題児たちを集めたのかしら。とても興味深いわ。ねえ、神室さん?」

「呆れた学校ね……」

 

 隣に控える神室真澄が冷めた目で溜息をつくのをよそに、坂柳は次なる一手としてSクラスに接触する機会を密かに窺っていた。Aクラスと自身がリーダーである維持を続ける為には、必要なのは確実だ。

 

 ※

 

 元々ただでさえ底辺だったDクラスは、堀北、櫛田、軽井沢、佐倉、王、長谷部といった主要な女子メンバーが根こそぎ拉致(スカウト)され、Sクラスへ移籍してしまったのは衝撃的。残された殆どの男子たちは、予想外の展開に大パニックに陥っていた。

 

「おい嘘だろ!? クラスの可愛い女子が一網打尽に消えたぞ……!?」

「しかも、俺たちの担任だった茶柱先生までいなくなった……!」

「この世は地獄にしか過ぎねーぞ!」

 

 絶望する須藤たちの前に現れたのは、新担任として配属された、ごく普通の中年教師・飛山平蔵だった。頭髪はかろうじて健在である。

 

「お、おい、お前らが新しいDクラスの生徒か? 私は……」

「「「先生、助けてくれぇーーっ!!」」」

 

 泣き叫ぶ須藤らの男子たちに囲まれ、赴任早々頭を抱える飛山教師の姿がそこにあった。その様子を見ていた綾小路清隆は、真顔である考えを浮かんでいた。

 

(Sクラスか……俺の計算を想定外に狂わせるな。今は様子見としよう)

 

 綾小路はそう考えた後、泣き叫ぶ須藤たちを見つめる。彼らが立ち直るのは時間が掛かるだろう。

 

 ※

 

 全校生徒がパニックと混乱の渦に巻き込まれる中、怒涛の勢いで拡大を続けるSクラス。

 この異常すぎる要塞に、他のクラスの猛者たちがどう殴り込み(あるいは巻き込まれ)に来るのか――高度育成高等学校の秩序は、完全に崩壊の彼方へと突き進んでいた。




ED:Rock'n Rouge(一之瀬バージョン) 

まさかの一人一億ポイント。もうどうにでもなれですね。

堀北「いいのかしら?」
モルタデロ「では、皆様。感想をお待ちしています」
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