モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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モルタデロです。サッカーバトルは白熱し、見事大盛り上がり。流石は私の生徒たちです。
しかし、スパイ研修はまだまだこれから。大盛り上がりで頑張るのみです。
さあ、皆さん。準備は良いですか?

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第39話 秘密の薬品を奪取せよ

 サッカーの試合から翌日。ヴィセンテに呼び出されたモルタデロたちは、彼からの話を聞いていた。その内容は新たな任務だ。

 

「実はバクテリオ博士が開発した薬品が、とある私設軍隊に奪われてしまったとの事だ。そこで君たちはその薬品を奪還して欲しい」

「その薬品とは?」

 

 ヴィセンテの命令に対し、鈴音は気になる表情で質問する。

 バクテリオの発明品は危ない物ばかりで、モルタデロとフィレモンも酷い目に遭っていた事もある。帆波と比瑪は目撃しているが。

 

「巨大化の薬だ。かけられると大きくなる」

「「……巨大化の薬、ですか……?」」

 

 ヴィセンテ長官の告げたその一言に、帆波と比瑪は思わず顔を引きつらせ、冷や汗を流しながら後じさった。

 バクテリオ博士の発明品がいかに危険で、そして常軌を逸したトラブルを引き起こすか――彼女たちはこれまでの研修で身をもって学習している。

 

「ちょっと待って、それってまさか、人間とか動物にかけると文字通り『車サイズ』になっちゃうやつのこと……!?」

「そうだよ、帆波ちゃん! 以前、博士が変な薬の実験をして研究所のネズミが車サイズにデカくなった事件があったでしょ……! あれが私設軍隊の手に渡ったら大惨事どころの騒ぎじゃないよ!」

「車サイズくらいデカくって……それもう完全に映画の世界じゃん!」

「そんなの絶対に関わりたくないんだけど……!」

 

 比瑪の必死の訴えに、恵や麻耶、愛里たちも青ざめて頭を抱える。いくら何でも規格外で、この様な薬品を使われたら一大事だ。

 鈴音も眉間にしわを寄せ、真剣な表情でヴィセンテを見据えた。

 

「バクテリオ博士の発明品が外部に流出したとなれば一大事ね。……で、その私設軍隊というのは今どこに?」

「うむ。現在、マドリード郊外にある放棄された要塞跡地に拠点を構えている。奴らはその薬品を解析し、自分たちの戦闘員を大きくさせて世界を我が物にしようと企んでいるのだ。君たちには、我がT.I.A.の精鋭としてその拠体に潜入し、薬品を完全回収してきてもらう!」

 

 ヴィセンテが力強く拳を握りしめると、モルタデロが待っていましたとばかりにパッと手を挙げる。その様子だと嫌な予感しかしないが。

 

「お任せください、長官! ちょうどいい実験台……いや、敵が相手なら私の最新発明『特製・伸縮自在スプレー』の出番ですぞ! 敵が大きくなるなら、こちらも等倍以上に巨大化して、マドリードの街で大怪獣バトルを繰り広げれば観光客にも大ウケ間違いなしです!」

「バカ者ぁ!! 街を壊滅させる気か!!」

 

 バシィッ!!

 

 どこからともなく飛んできたフィレモンのハリセンが、モルタデロの後頭部を完璧なタイミングで捉えた。そのまま地面に突っ伏すモルタデロを放置し、フィレモンはやれやれと首を横に振る。

 

「……まぁ、モルタデロの言うことは半分聞き流すとして、任務の重大さは確かだ。敵は銃火器を装備したプロの私設軍隊。迂闊に正面から突撃すれば蜂の巣にされる。だが、お前たちSクラスのチームワークと、我がT.I.A.のスパイ技術を合わせれば、奴らを出し抜くことは十分に可能だ」

 

 フィレモンの引き締まった声に、佐枝はサングラスを押し上げ、静かに頷いた。確かに危険な任務だが、今の自分たちなら

 

「やはりこうなるのも当然と言えるな。お前たち、準備はいいか?」

「当然です。私たちがここで尻尾を巻いて逃げたら、Sクラスの名折れですからね!」

「うん! みんなで力を合わせて、絶対に薬品を奪還しようね!」

 

 佐枝の問いかけに、鈴音たちは顔を見合わせ、やがて力強く頷き合った。当然任務である以上はやるしかない。

 帆波の明るい号令に、恵や桔梗、ひよりたちもそれぞれの武器やガジェットをしっかりと握りしめる。スペインの地で新たなミッション――「巨大化の薬奪還作戦」が、いま静かに幕を開けようとしていた。

 

 ※

 

 私設軍隊の入口前まで、様々な経路を使って移動していくモルタデロたち。すると、鈴音がある事をモルタデロに質問する。

 

「私たちがスペインに来たのは7月29日。日本時間では8月に入るけど、何時まで研修なの?」

「8月29日ですね。一ヶ月掛かります」

「じゃあ、夏休みはほぼずっとスペインってことね。その分、思いっきりスパイの技術も学んでおかないとね」

「うん、せっかくの海外だし、研修の合間にスペインの海にも行きたいし、本場のタパスやチュロスももっと食べたいな!」

「海でのスパイ任務……もしかしたら水着を着用した水中潜入作戦なんてこともあるかも。いかにも冒険小説らしくてワクワクするね」

 

 恵や麻耶が弾んだ声を上げると、ひよりは手帳を片手に目を輝かせてペンを走らせる。

 過酷な任務を前にしながらも、どこか楽しげな余裕を見せるSクラスの面々に、佐枝は呆れ半分、感心半分といった様子で小さく息を吐いた。

 

「まったく……相変わらず肝が据わっているというか、呑気というか。まあ、それくらいの方がこの異常な環境では生き残れるのかもしれんがな」

 

 そうこう会話を交わしているうちに、モルタデロたちの案内によって、マドリード郊外の荒涼とした山中にある私設軍隊の拠点――放棄された要塞跡地の入口前へと到着した。

 物々しい鉄条網や監視カメラが張り巡らされたその周囲には、迷彩服を纏った屈強な兵士たちが銃を手に巡回している。

 

「ここから先が敵の根城です。我がT.I.A.の精鋭たるもの、気配を完全に消して――」

 

 モルタデロがカッコよくポーズを決め、懐から『最新式・光学迷彩ホログラム投影機』を取り出そうとした、その瞬間。

 

「……っと、足がもつれましたぞ!」

「おい、どこを向いて歩いている、このバカモノ……っ!」

 

 モルタデロが盛大に石につまずいてすっ転び、勢い余ってフィレモンの足を引っ張る。二人はそのまま派手な音を立てて、巡回中の私設軍隊の兵士たちの真ん前へと豪快にすっ飛んでいった。

 

「「――ん? なんの音だ? 貴様ら、何者だ!?」」

「あ、どうも。こんにちは。通りすがりの極秘スパイです。そこの倉庫にある『巨大化の薬』を回収しに参りましたので、どうか道を開けていただけますかな?」

「「侵入者だぁーーっ!! 捕まえろ!!」」

 

 モルタデロの堂々たる(しかし完全に不審者な)挨拶が引き金となり、一瞬にして周囲の兵士たちが銃を構えて殺到した。

 わずか数秒後――モルタデロとフィレモンは、早くも縄でぐるぐる巻きにされ、兵士たちに両脇を抱えられて盛大に捕まってしまったのである。

 

 ※

 

 少し離れたコンテナの陰からその一部始終を目撃していた鈴音たちは、あまりの展開の早さに絶句し、その場で盛大にずっこけそうになった。

 

「……ねえ。まだ潜入すら始めてないのよ? なのに、開始五分で我が組織のトップ二人が見事に捕まったんだけど……」

「やってしまったみたいね……」

「嘘でしょ……! これじゃ私たちが助けに行くどころか、全員でお縄になっちゃうよ!」

「どうするの、あの二人を放置するわけにもいかないし……!」

 

 鈴音が引きつった笑みを浮かべながらこめかみを押さえると、帆波も苦笑いをしてしまう。恵や麻耶も真っ青な表情をしながら慌てふためいてしまう。

 しかし、桔梗はスパイ用ガジェットのナイフを指先でクルクルと回しながら、不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふふ、でもこれで敵の注意はあの二人に向いているわけだし、ある意味では最大のチャンスじゃない? ねえ、美雨ちゃん、ひよりちゃん?」

「ええ! 私の『特製ジャミング装置』で要塞の監視カメラと通信を完全にハッキングするから!」

「私も鍵を開けたりするのは得意だからね」

 

 桔梗の笑みに美雨とひよりは笑顔で答える。こんな状況だからこそ、自分たちの出番。やるからには最大限に発揮する必要があるのだ。

 

「それじゃあ、モルタデロさんたちが処刑される……いや、変な実験体にされる前に、私たちが華麗に要塞を制圧しちゃおうか!」

「「「了解!」」」

 

 比瑪の合図とともに、Sクラスの少女たちはそれぞれの武器を構え、鋭い闘志を宿す。同時に彼女たちの本格的な潜入作戦が、いま静かに幕を開け始めた。




ED:SUMMER EYES(王バージョン)

薬品を取り返すミッションはまさかの展開。果たしてどうなるのか!?

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