モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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一之瀬帆波だよ。モルタデロさんとフィレモンさんが捕まってパニックになったけど、無事に脱出する事に成功したみたい。後は逃げるだけ。しかし、そう簡単にはいかないのが、この任務だからね。全員で無事に逃げ切れないと!
さあ、始まるわよ!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第41話 ドタバタチェイス

 モルタデロたちは急いでマドリードへと逃げ出そうとするが、そこにジープに乗った大佐と参謀が追いかけてきた。このままだも追いつかれてしまうのも時間の問題。

 

「こうなったら……それっ!」

 

 帆波は巨大化の薬を地面にいるバッタに掛けると、バッタは巨大化し始める。そのまま大佐たちの乗るジープを弾いてしまい、何処かへ向かってしまう。

 ジープはひっくり返って動かなくなり、大佐は目を回しながら気絶していた。

 

「今の内に!」

 

 帆波の合図で彼女たちは逃げまくり、できるだけ遠く離れた場所へと向かい出す。すると、遠くでは中佐の男性が双眼鏡を使いながら、帆波たちの姿を捉えていた。

 

「見つけたぞ! すぐに発砲だ!」

 

 中佐の指示に一台の戦車が発砲するが、何故か前方の戦車に直撃してしまう。爆発を起こした戦車から、黒焦げの兵士が咳き込みながら、発砲した戦車に文句を言っていた。

 

「バカ! 味方に撃つ奴があるか!」

「すいません!」

 

 発砲した者が謝罪したと同時に、戦車による一斉砲撃がスタート。当然モルタデロたち十三人は、急いで逃げまくっていた。

 

 ズガガガガァーーッ!!

 

 背後で戦車から放たれた砲弾が地面を抉り取り、凄まじい爆風と砂煙がモルタデロたちの頭上を通り過ぎていく。当たったら御陀仏確定だ。

 

「ひゃあぁぁっ!? 今の、完全にこっちを狙ってたよね!? 当たったら私たちの一生が文字通り一瞬で終わっちゃうよ――っ!」

「冗談じゃない! あんなのまともに食らったら跡形も残らないわよ!」

 

 愛里が涙目になりながら必死の形相で足を動かし、その隣で波留加も必死に駆け抜ける。一斉砲撃のせいで周囲の岩山は次々と粉々に吹き飛び、まさに地獄絵図のような大パニックだ。

 

「ちっ、次から次へとよくもまあ、面倒くさい追っ手が湧いて出るものね……!」

 

 鈴音が舌打ちをしながらも、飛んできた瓦礫を鮮やかな身のこなしでひらりとかわす。スパイ訓練の成果がよく出ている証だ。

 先頭を走るモルタデロは、なぜか大きな浮き輪を首に掛けたまま、まるで楽しそうにハイキングでもしているかのように軽快なステップを踏んでいた。その様子だと余裕と言えるだろう。

 

「みなさん、慌ててはいけません! 戦車の砲撃というものは、放物線の軌道をしっかりと予測し、リズムに合わせてステップを踏めば綺麗にかわせるのです!」

「そんなの超人スポーツの要領で避けられるわけないだろうが、このアフロ野郎――っ!!」

 

 フィレモンが走りながら激怒し、持っていたガイドブックでモルタデロの後頭部を強烈に叩きつける。しかし、そのお陰でモルタデロは直撃コースだった砲弾を奇跡的に(文字通り偶然)回避することになった。

 

「おっと、助かりましたぞボス! 流石は息の合ったコンビネーションですな!」

「褒めてねぇよ!!」

 

 背後では相変わらず中佐が「もっと正確に狙え! あのチビどもを逃すな!」と戦車部隊に怒鳴り散らしているが、当の戦車兵たちは砲塔の角度を間違えたり、お互いの戦車の砲身同士をゴンッとぶつけ合ったりして自滅の道を歩んでいる。まさに馬鹿な連中としか言えないだろう。

 

「……あの人たち、敵なのに勝手に自滅しているみたい。ある意味で最高の援軍かもしれないけど……」

 

 美雨が呆れたように後ろをチラリと見やりながら、足のスピードを緩めない。油断すれば追いつかれる事もあり得る。

 そんな中、帆波が前方を指さして明るい声を上げた。

 

「みんな、見て! あの山の向こう、マドリードの市街地が見えてきたよ! あそこまで逃げ込めば、さすがにあんな大きな戦車もおいそれとは手を出せないはず!」

 

 帆波の指さす先には、見慣れたマドリードの街並みと、T.I.A.の本部ビルがそびえ立つ美しい景色が広がっていた。ゴールはもうすぐ目の前だ。

 

「よし、一気に駆け抜けるわよ! 最後のスパート、遅れないでね!」

 

 鈴音の力強い号令のもと、Sクラスの13人は残る力を振り絞り、最後の難関を突破すべくマドリードの街へと猛ダッシュで飛び込んでいく。ここまで来れば後僅かだ。

 すると、戦車が一斉に追いかけてきた。恐らく彼女たちを捕まえに来たのだろう。

 

「やはり来たわね。あっ、大佐もいる!」

 

 桔梗が指差す方を見ると、気絶から回復した大佐が戦車に乗りながら睨みつけているのが見えた。しぶとい根性があるので、油断はできないのは確実だ。

 すると、ひよりは蟻の巣を発見し、あるアイデアを思いついた。

 

「ここは私に任せて!」

 

 ひよりは迷うことなくモルタデロから『巨大化の薬』のスプレー缶を受け取り、足元にあった小さな蟻の巣めがけてプシューッと勢いよく噴射した。

 

「ひよりちゃん、そんなところに薬をかけてどうするの……っ!?」

「見ていて、帆波ちゃん。小さな生き物も、時には大きな奇跡を起こしてくれるから……!」

 

 ひよりが穏やかに微笑んだ次の瞬間――大地がごううっと不気味な地響きを立てて激しく揺れ動いた。

 

 ――ガサガサガサッ!!

 

 地中から次々と飛び出してきたのは、なんとスクールバスほどもある巨大な蟻の大群! その恐ろしいほどの威圧感とキチキチと鳴らす大顎に、追ってきていた私設軍隊の兵士たちは完全に腰を抜かした。

 

「ぎゃあああッ!? なんだあの化け物アリは――っ!!」

「戦車を踏み潰す気か、撃て、早く撃てぇーーっ!!」

 

 復活したばかりの大佐が戦車の上から、青ざめながら絶叫する。しかし、巨大化した蟻たちは戦車の砲身をガシッと強靭なあごで挟み込むと、まるでオモチャを扱うかのように軽々と持ち上げ、そのまま放り投げてしまった。

 

「うわぁっ、戦車が宙を舞ったよ!? ひよりちゃん、すごすぎる……!」

「ふふ、文学的な表現で言うなら、『大地を揺るがす小さな働き者たちの反乱』ってところかな?」

 

 驚きを隠せない美雨に対し、ひよりはのんびりと感動している。その横で鈴音は冷や汗を拭いながらハキハキと号令を飛ばす。

 

「感心している場合じゃないわよ! 敵が完全に足止めされてる今のうちに、一気にマドリード市街へ駆け抜けるわよ!」

「「おーーっ!」」

 

 巨大蟻たちと戦車軍団が繰り広げるカオスな大乱闘の横を、Sクラスの13人は驚異的なスピードで駆け抜けていく。

 後ろでは大佐が「おのれぇ、覚えておれぇーーっ!」と蟻に追いかけ回されながら遠くへ吹き飛んでいくのが見えたが、もはや振り返る余裕すらない。

 

 ※

 

 そして――。

 追っ手の影が完全に消え去り、見慣れたマドリード市街の安全圏へとたどり着いた一同は、その場に崩れ落ちるようにして盛大に息を荒げた。無事にミッションコンプリートだ。

 

「はぁ……っ、はぁ……っ……。なんとか、逃げ切った……みたいね……」

「死ぬかと思った……」

「もう二度にあんな戦車だらけの山には近づかない……!」

 

 鈴音が両膝に手を突きながらぐったりと肩を揺らす。その隣で、恵や愛里、麻耶たちもぐったりしている。

 しかし、その手にはしっかりと、任務の証である『巨大化の薬』のボトルが握りしめられていた。

 そこへ、モルタデロとフィレモンがやれやれといった様子で歩み寄ってくる。

 

「お見事でした、みなさん! 敵の私設軍隊を壊滅させ、見事に薬品を奪還するとは……我がT.I.A.の伝説を塗り替える大金星です!」

「あぁ……まったく、とんでもないトラブルメーカーどもだと思っていたが、最後の最後で救われたな。お前たちのチームワーク、見事だったぞ」

 

 フィレモンが珍しく腕を組み、心からの賛辞を贈る。佐枝もサングラスの奥で満足げな笑みを浮かべ、生徒たちを労うようにうなずいた。

 

「よくやったな、お前たち。この過酷な任務を乗り越えた経験は、これからの戦いでも必ず大きな武器になるはずだ」

 

 佐枝の言葉に、鈴音たちは顔を見合わせ、やがて達成感に満ちた晴れやかな笑みを浮かべた。

 ――こうして、マドリードを揺るがした一大騒動と「巨大化の薬奪還作戦」は、Sクラスの圧倒的な適応力とチームワークによって大成功で幕を閉じた。後は本部に帰って報告するのみだ。




ED:SUMMER EYES(王バージョン)

無事に任務完了! 後は報告のみです!

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