さあ、今日も楽しくやるわよ! 準備は良いかしら?
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
「ご苦労。無事に薬を取り戻したな」
T.I.A.本部に帰還したモルタデロたちは、この事をヴィセンテに報告。彼は納得の表情をしながら頷いていた。
今回の任務はハードだったが、無事に奪還する事に成功。鈴音たちにとっては、二度と戦車に追いかけられるのは勘弁して欲しいと感じているだろう。
「で、バクテリオ博士は?」
「彼ならあそこだ」
ヴィセンテが指差す方を見ると、バクテリオ博士が小さくなった状態で姿を現した。恐らく実験でこうなったに違いない。
「バクテリオ博士!?」
「いやー、実験でこうなったからな。元に戻そうと薬を探したが、見つからなくて困ったのだよ」
「ハハハハハ! 傑作だ!」
バクテリオ博士の説明の最中、モルタデロは机を叩きながら笑ってしまう。余程彼に恨みがあったのだろう。
「なんで笑っているの?」
「実はモルタデロさん、髪の毛をバクテリオ博士によって失った事を恨んでいたの。当初は髪があったのに、変な薬のせいで……」
「だからね……」
桔梗の質問に対し、帆波が苦笑いしながら解説をする。それに彼女たちは苦笑いで応えるしかなかった。
「けど、薬を使わないと」
「それならバケツと椅子を用意している。すぐに行おう」
バクテリオ博士は薬を受け取り、椅子とバケツをセットする。そのままバケツに薬を入れ始めたその時、モスキートが姿を現した。
「あ、モスキート」
比瑪が指差す方を見た途端、モスキートはそのまま薬へと突っ込んでしまう。その直後、モスキートは巨大化してしまった……。
※
「ひえーっ!」
「助けてー!」
大きなモスキートに桔梗たちは逃げまくり、原始人に姿を変えたモルタデロは元凶であるバクテリオを追いかける。因みにバクテリオはフィレモンに掴まれているが。
「何故こうなったの!?」
「モスキートがいないか確認しなかった原因もあるけどね……このドタバタは研修中は止まらないかもね……」
恵の質問に対し、鈴音はため息をつきながら逃げまくってしまう。スペイン研修はドタバタの展開が相変わらずで、これから先も苦労は続くだろう。
※
ひんやりと冷気が漂う高度育成高等学校の地下特別訓練室。
無機質なコンクリートの壁に囲まれたその空間の中央には、底が全く見えない深い大穴に架けられた、一本の細い足場通路が伸びていた。
その通路を見下ろすように設置された特等席の椅子に腰掛け、有栖は優雅に紅茶のカップを傾けている。その背後では、神室がやれやれといった表情で腕を組んでいた。
「では、今回は通路の上に立ちますが、鉄球を回避する訓練となります。落下したら爆発攻撃を喰らってしまいますが」
「死ぬぞ! こんな事をして何になると言うんだ!」
有栖の説明に龍園がツッコミながら反論。須藤、池、山内もガタガタ震えながら、大穴に怯えている。この訓練はまさに危険であり、下手したら死ぬ恐れもある。
「皆さん、Sクラスはスペイン研修で更に強くなっていきます。私たちも強くなる必要があるのです。特に一之瀬帆波、椎名ひより、堀北鈴音、櫛田桔梗、軽井沢恵、佐藤麻耶、王美雨、佐倉愛里、長谷部波留加、宇都宮比瑪の十人は、入学当初から実力を凄く発揮しています。モルタデロとフィレモンの二人がいなければ、今の彼女たちはいなかったのかも知れません」
「あのトンデモ男とハゲのコンビに、俺がまた絡め取られるかもしれないってのか……っ! 思い出しただけでも頭がおかしくなりそうだぜ……!」
龍園は頭を抱え、冷や汗をダラダラと流しながら床にへたり込む。かつてモルタデロたちの奇抜すぎる作戦と予測不能なバカ騒ぎに巻き込まれ、組織のプライドをズタズタにされた苦い記憶は、彼の心に消えないトラウマとして深く刻まれていたのだ。
そんな龍園の姿を見て、神室は小さくため息をつく。
「まったく、坂柳……あんたも悪趣味ね。こんなトラウマをえぐり出して特訓するなんて、茶柱先生のスパルタとはまた違った意味で鬼畜よ」
しかし、有栖は涼やかな笑みを崩さない。その様子だと何か考えがあるだろう。
「あら、神室さん。これは恐怖心の克服であり、次なるステージへ進むための必要なステップです。あちらの堀北さんたちがスペインの地でどれほど過激な経験を積んでいるか……私たちがここで足踏みをしている暇はありません」
有栖が優雅にティーカップをソーサーに戻すと同時に、手元の操作盤のスイッチを押し込んだ。
――ゴゴゴゴ……ッ!!
次の瞬間、頭上の天井から重々しい金属音が響き渡り、大穴を渡る細い足場の正面から、鎖につながれた巨大な鉄球が凄まじい勢いでスイングしながら迫ってきた。
「ひえぇぇっ!? 本当に来やがったぞ、あのデカい鉄球……!!」
「当たったら即死どころか、跡形もなく消え飛ぶやつじゃねぇか!!」
「くそっ、しゃあない……避けるしかねぇのかよ!」
池と山内が絶叫しながらその場でひっくり返り、須藤も歯を食いしばる。こうなるとやるしか方法はない。
「おい、お前ら! ぼさっとしてたら本当に吹き飛ぶぞ!!」
恐怖に怯える仲間たちを尻目に、龍園はギリッと歯ぎしりをした。スペインの狂気的なトンデモ男に比べれば、こんな物理的な罠など気合でどうにかしてやる――そんな意地とプライドが、彼の恐怖心を無理やりねじ伏せる。
「クソっ……! あの狂人軍団に遅れを取ってたまるかよ……っ!!」
龍園が地面を強く蹴り飛ばし、狭い足場の上でギリギリの回避行動に入った瞬間、運悪く別の鉄球に激突。そのまま大穴に落下し、爆発を喰らってしまった。
「りゅ、龍園さんがあああ――っ!?」
石崎が血の気を引いた顔で絶叫する。大穴の底からボカンと派手な爆発音と黒煙がモクモクと立ち上がり、煤だらけになった龍園が「ゲホッ……このクソがあ……」と呟いた直後、そのまま白目を剥いて気絶してしまった。こうなるのも無理もないだろう。
「あら、龍園くん、見事なまでの不合格ですわね。まあ、あんな大きな鉄球の二段攻撃をまともに食らっては当然の結果ですけれど」
有栖は優雅に微笑みながらも、容赦なく次のレバーに手をかける。まだまだ訓練は始まったばかりだ。
「さぁ、次はそこのあなたたちですよ。モルタデロたちの予測不能な行動力の前では、これくらいのトラップなんて可愛いものですからね。次々と来ますわよ!」
有栖の容赦ない宣告に、平田は青ざめながらも、周囲の生徒たちを鼓舞するように声を張り上げた。ここで自分がやらなければ、皆が脱落してしまうと判断しているのだ。
「みんな、落ち着いて! 坂柳さんの言う通り、ここで怯えていたらスペイン帰りの彼女たちに到底太刀打ちできないよ。僕たちが息を合わせて、タイミングよく避けるんだ!」
平田がしなやかな身のこなしで飛来する最初の鉄球を華麗にかわすと、綾小路たちも後に続く。過酷な訓練の結末はどうなるのか。
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
高度育成高等学校では、地獄の訓練が。生き残るのは何人だ?
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