一方の他クラスでは、私たちに対抗する訓練を行うことに。まあ、失敗するけどね。
では、今日も楽しんじゃおう!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
有栖による鉄球回避訓練は、龍園が一発で不合格という事態に。しかし、平田の励ましで態勢を立て直した一同は、急いで鉄球回避に向かい出した。
「くそっ! ここで諦めて……へぶら!」
石崎も鉄球に直撃してしまい、落下。そのまま爆発を受けて不合格となってしまった。
「はい。石崎君失格」
「くそっ、石崎の分まで……ここで躓いてたまるか!」
伊吹は石崎が消え去った大穴の底をひとにらみすると、闘志を剥き出しにしてさらに加速した。
頭上から猛スピードで迫り来る二つ目の鉄球に対し、伊吹はタイミングを合わせて見事なスライディングで足場の隙間をすり抜ける。さらに、追撃するように襲いかかる三つ目の鉄球を、壁すれすれの三角跳びのようなステップで華麗に回避した。
「ふんっ……! あんなアフロのバカ騒ぎに比べれば、こんな物理的な罠なんて大したことないわよ!」
気合の咆哮とともに細い足場を駆け抜けた伊吹は、一番乗りでゴールしていた平田の目の前へと見事に着地した。
「すごいよ、伊吹さん! 完璧な回避だった!」
「……っ、ふう。当たり前でしょ、あんな連中に後れを取るわけにはいかないんだから」
平田に声をかけられ、伊吹は少し息を弾ませながらも誇らしげな笑みを浮かべる。そのすぐ後ろから、神崎が無駄のない冷静な足取りで鉄球の周期を読み切り、静かにゴールへとたどり着いた。
「くそっ! 俺たちも行くぞ!」
須藤たちも覚悟を決めて突き進むが、鉄球に次々とやられて落下していく。まさに地獄絵図その物であり、どうする事も出来なかった。
「このぐらいは余裕だ」
「負けてたまるか!」
高円寺は余裕でクリア。葛城も無事にクリアした。ここまで生き残ったのは僅か五人。残るはあと半数だ。
「くそっ! ここで終わるか!」
「へばっ!」
「きゃっ!」
凄まじい轟音と爆発が響き渡る中、次々と仲間たちが足場から弾き飛ばされていく。そして、スタート地点のゲート前には、静かに佇む一人の綾小路が残っていた。
「あら。皆さんが次々と脱落していく中、最後に残ったのはあなたですね、綾小路くん」
特等席の椅子から身を乗り出した有栖の瞳が、面白そうに細められる。
モルタデロたちの巻き起こす理不尽なカオスとはまた違う、完全無欠の合理主義者である彼が、この地獄の特訓をどう切り抜けるのか。有栖だけでなく、対岸で固唾を飲んで見守る平田たちも息を呑んだ。
「……行くか」
綾小路は呟くと、無表情のままスッと一歩を踏み出し、深い大穴に架かる細い足場へと足を踏み入れた。
その瞬間、有栖が操作盤のスイッチを最大出力に引き上げる。
天井からはこれまでを遥かに凌駕する数の巨大鉄球が、不規則な回転と凄まじい重力を伴って一斉に射出された。上下左右から襲い来る、文字通りの死の弾幕だ。
「あんなの当たったら一巻の終わりだよ!」
「あいつ、大丈夫なのか……!?」
平田や他の生徒たちの悲鳴が響く中、綾小路は微動だにせず、ただ淡々と迫り来る鉄球を見据えていた。
――次の瞬間。
飛来した第一の鉄球が鼻先をかすめるが、綾小路は最小限の重心移動だけでそれをスタリと見送る。さらに、死角から襲いかかった第二の鉄球に対しては、まるで計算されていたかのように身をかがめ、足場の端ギリギリを利用した流れるようなスライディングで完全にいなしてみせた。
「なっ……! 嘘だろ、あんな複雑な軌道をノータイムで……!」
神崎が目を見張り、伊吹も信じられないものを見るような目で絶句する。
無駄な筋肉の動きが一切なく、まるで物理法則そのものを手玉に取っているかのような、完璧すぎる回避運動。恐怖すら感じさせないその機械的なまでの身のこなしに、有栖さえもわずかに目を丸くした。
「素晴らしい……。あの鉄球の不規則な揺らぎすら、彼の計算の範疇ということですの……?」
すべての障害をまるで風のようにすり抜け、綾小路は一歩も足を乱すことなく、見事に五人の待つゴール側の足場へと着地した。
――シーン……。
訓練室の静寂を破るように、高円寺がフッと満足げに笑い、パチパチと軽い拍手を送る。
「ブラボーだね、ボーイ。君のその無機質な身のこなし、なかなか魅力的じゃないか!」
「……ふう。これで全員だな」
綾小路は息一つ乱さず、何事もなかったかのように淡々と告げる。
それを見届けた有栖は、満足げにティーカップを置き、ふわりと上品な笑みを浮かべた。
「合格ですわ、綾小路くん。そしてそこに残った五人の皆さんも、よくぞ生き残りましたわね」
特訓をクリアした六人と、無残に脱落した者たち。しかし、訓練はまだ終わらないのだ。
「しかし、これで終わると思ったら大間違い。次の訓練は始まろうとしているのです」
「まだあるの?」
「そう。次は大縄跳びです。早速次のエリアに向かいましょう。あと、不合格の皆さんも一緒に」
有栖は皆を連れて、次の訓練の場所へと移動し始める。訓練はまだあるので休む暇はないのだ。
※
次の場所は普通のステージだが、何故かクラス毎に分かれていた。しかも一列に並びながら、自動で回る長縄マシンに配置されている。
「第二訓練は長縄。クラス毎に分かれ、皆で一糸乱れず五十回飛ぶ事。引っかかる度に連帯責任として、クラス全員の背中に強烈な電流が流れますので」
「はぁっ……!? な、なんだって……!?」
有栖のサラリとした一言に、先ほど地獄の鉄球回避を生き残った平田や伊吹たちだけでなく、先ほど穴に落ちて煤だらけになっていた龍園や石崎たちも一斉に青ざめた。
「ちょっと待て坂柳! 鉄球を避けたと思ったら、次は電流付きの大縄跳びだと……!? 引っかかったら全員がビリビリって、冗談じゃねぇぞ!」
石崎が引きつった顔で叫ぶと、有栖は不敵な笑みを浮かべたまま説明を続ける。その様子だと考えがあるのは明らかだ。
「あら、冗談ではありませんわ。スペインで命がけのスパイ任務をこなしてきたSクラスの彼女たちに比べれば、クラス全員で息を合わせて縄を跳ぶことなど朝飯前のはず。……あ、ちなみに制限時間は一回につき三分です。時間内に五十回跳べなければ、容赦なく全員まとめて特製電流の餌食となりますので、心してかかってくださいね」
有栖がパチンと指を鳴らすと、訓練室の中央がガギガギと音を立てて変形し、巨大な機械じかけの縄跳び装置が出現した。
その両端には、怪しく青い火花を散らす電流発生装置がガッチリとセットされている。
「くそっ……! あんなイカれた特訓の次は電流地獄かよ……!」
龍園は悔しそうに歯噛みしながらも、自分のクラスのメンバーたちを鋭い睨みで威圧した。こんな訓練に付き合ってられない気持ちも強いが、やるからにはクリアするしかない。
「おい、てめぇら! 坂柳の趣味の悪いつきあいに付き合ってビリビリ痺れたくなかったら、一回も引っかからずに完璧に跳びやがれ! 一人でも足を引っ張ったらタダじゃ置かねぇからな!」
「ひっ……! 分かってますよ……!」
龍園の脅しに、Cクラスの生徒たちはガタガタ震えながらもうなずく。こうなると一致団結してクリアするしかないだろう。
隣では、平田が不安そうな顔をしているクラスメイトたちに優しく声をかけていた。
「みんな、大丈夫だよ。息を合わせて、縄の回転をしっかり見れば絶対に跳べるから。お互いに声を掛け合っていこう!」
「うん、平田くんの言う通りだね。頑張ろう!」
一方、Aクラスの陣頭指揮を執る有栖は、自らも優雅に縄の脇へと歩み寄りながら、余裕の表情を崩さない。
そして、DクラスやBクラスの生徒たちも、それぞれのリーダーや生き残った実力者たちを中心に、嫌々ながらもどうにかポジションにつき始めた。
「それでは――第二訓練、『一糸乱れず! 電流回避大縄跳び』、開始しますわ!」
有栖の冷徹な合図とともに、ブーーーーンという重低音を響かせながら、巨大な機械の縄が猛烈なスピードで回転を始めた。果たしてその結末はどうなるのか。
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
鉄球の次は長縄。果たしてどうなるのか?
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