さて、今回も始まるよ。準備は良いかな?
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
有栖の合図でAからDクラスの長縄が始まった。制限時間三分で五十回。引っ掛かったり失敗したら、連帯責任でクラス全員に電流が流される。果たして四クラスの内、何クラス生き残るかがカギとなるだろう。
「さて、何処までやりきれるかですね」
有栖はクラスの様子を見ながら、あくどい笑みで楽しんでいる。
ブォン、ブォンッ! と凄まじい風切り音を立てて、青白い火花を散らす巨大な長縄が回転を始める。制限時間は三分。五十回。少しのミスも許されない極限のプレッシャーの中、各クラスのリーダーたちがそれぞれのやり方でチームを引っ張っていった。
「よし、リズムを合わせろ! 慌てるな、縄の軌道だけを見据えるんだ!」
Dクラスの先頭に立つ龍園は、ピリピリとした殺気を放ちながら部下たちを睨みつける。その気迫に押され、石崎や他の生徒たちはガタガタと震えながらも縄に飛び込んだ。
「いち、に、さん、し……!」と声を合わせて順調に数を重ねていくが、中盤の二十五回目に差しかかったとき、緊張のあまり足をもつれさせた一人の男子生徒が盛大につまづいた。
――バチバチバチィッ!!
「「「ぎゃああああっっ!!」」」
容赦なく流れた特製電流により、Dクラス全員が盛大に痺れ上がり、一斉に白目を剥いて地面に倒れ伏す。
頭から煙をモクモクと上げながら、龍園はビクビクと痙攣しながら這いつくばった。
「ぐっ……このクソ仕掛けが……っ! てめぇら、次ミスったら許さねぇからな……っ!」
この結果、やり直しをする事に。まあ、彼らとしてはいつも卑怯な事ばかりしていたので、こうなるのも当然と言えるだろう。
※
一方、Cクラスでは、平田が優しく、かつ的確にメンバーを支えていた。
「大丈夫、みんな呼吸を合わせて。怖がらないで、僕のタイミングについてきて!」
平田の美しいリードと抜群の運動神経のおかげで、Dクラスは危なげなく数値を伸ばしていく。三十回、四十回……ゴール直前、プレッシャーに耐えかねて誰かが足元を狂わせかけた瞬間、平田が瞬時に腕を引っ張り、見事にカバーしきった。
「今の内だ、一気に跳びきろう!」
「「「はいっ!」」」
Dクラスは全員の息を完璧に同調させ、見事に五十回をクリア。その場で安堵の息を漏らし、へたり込む者続出だった。
「やれやれ、助かったぜ。にしても、Sクラスもこんな感じだったよな……」
「ああ。あの様な動きをしているという事は、それ程頑張ったとしか言えないな。ヨーロッパサッカーでも凄い動きを見せたし」
「追いつけるにはまだまだ時間が掛かるな……」
須藤、池、山内の会話に、平田たちも同意しながら頷く。
確かに鈴音率いるSクラスは、モルタデロとフィレモン、佐枝の指示によって次々と過酷な訓練を乗り越えてきた。その出来事があったからこそ、今に至るだろう。追いつくには時間が掛かるが、焦らずに進む事が第一だ。
※
他方、Aクラスの陣頭指揮を執る葛城は、感情を排した無駄のない正確無比なカウントでチームを統率していた。
「乱れるな。己の体幹を信じろ。……よし、そのまま一定のペースを維持する」
葛城の鉄の意志と堅実な統率力により、Aクラスも一糸乱れぬ動きで淡々とノルマを達成。危なげなくクリアゾーンへと滑り込む。
「ふう。取り敢えずはクリアだが、考えてみればこの訓練はあった方が良かったかもな」
葛城はクリアした事を実感した後、この訓練をやって良かったと実感する。かつての授業ではこの様な訓練はやっておらず、Sクラスに殆どが翻弄される事態に。巻き返しとしてはある意味良いと言えるだろう。
※
そしてBクラスでは、神崎が冷静に周囲を見渡しつつ、メンバーの微かな焦りを声で打ち消していた。
「焦るな、相手のペースに合わせる必要はない。自分の足元だけを見ろ」
神崎の冷静な判断力に導かれ、Bクラスもまた、ギリギリのところで電流の洗礼を回避し、見事に完遂を果たした。
――結果、制限時間内に五十回をクリアできたのは、Dクラス、Aクラス、Bクラスの三組。そして、強烈な電流で全身をこんがりと焼き上げられたCクラスだけが、見事に(そして無残に)不合格の烙印を押されることとなった。
「ふふっ、素晴らしいですね。Cクラスの連携、Aクラスの堅実さ、Bクラスの冷静さ……そしてDクラスの……見事なまでのビリビリ具合ですこと」
特等席の椅子から立ち上がった有栖は、満足げに微笑みながらパチパチと手を叩いた。
煤だらけになり、全身からうっすらと煙を上げる龍園を尻目に、有栖はさらなる指示を告げる
「今日はここまで。明日以降は違う訓練を行い、夏休み中の間はこの様な訓練を毎日行いますので。まずは身体を休める様に」
有栖の指示に従い、綾小路たちはその場で解散。それぞれの持ち場に戻り始めた。Dクラスの中にはボロボロで担架で運ばれているのもおり、伊吹だけは自分の力で歩きながら立ち去っていた。
※
その後、静まり返った自室のデスクで綾小路は一人、手帳に今日の訓練データを淡々と書き留めていた。
(坂柳の狙いは、全校生徒の底上げだ。スペインで特殊な経験を積んだ堀北たちSクラスの異常な成長スピードに対し、この学校全体が危機感を持たざるを得ない状況を作り出している。……夏休み返上の毎日特訓か。平穏とは程遠いが、この状況がこの先の学園生活にどう影響するか、観察する価値は十分にありそうだな)
ペンを置き、夜の静寂に包まれた外の景色を見つめる綾小路の瞳の奥には、これから始まる嵐の二学期を見据える冷徹な光が宿っていた。
※
一方のスペインにあるT.I.A.本部では、他クラスの状況を鈴音たちがモニターを見ながらじっと見ていた。この様子を見た者は絶句したりしていたが、中には興味深そうな表情をしている者もいた。
「やっぱりこうなると思っていたけど、Dクラスはボロボロに打ちのめされているね」
「特に龍園は担架で包帯まみれ……良い薬ね」
この動画を見た恵と麻耶は、苦笑いしながら見つめていた。
リアルタイムで行われた他クラスの現状。少しでも鈴音たちに追いつこうと必死になっているのが丸分かり。だが、二学期が始まる前には、何人が生き残るかだ。
「あっちの学校も、私たちがいない間にすごいことになってるんだね……。坂柳さん、本気で全校生徒を鍛え直すつもりなんだ」
「ふふっ、なんだか面白そうな展開ね。『絶海の孤島や海外で修羅場をくぐり抜けた主人公たちを追う、留守番組の凄まじい逆襲劇』って感じの群像劇みたいで、ワクワクしちゃうな」
「……たしかに、あっちがそれだけの危機感を持って動いているなら、私たちも油断はできないわね」
帆波とひよりよ発言を聞いた鈴音は、真剣な表情で確認していた。その瞳には、かつて敵対し、そして競い合ったライバルたちの成長に対する確かな警戒と、負けられないという闘志が宿っていた。
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
他クラスはSクラスに追いつけるのか。二学期に注目です!
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