さっ、気を切り替えて頑張らないと! 準備は良いかな?
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
モルタデロたちは休暇の為、バルセロナに遊びに来ていた。そこは地中海に面していて、ビーチもある。当然鈴音たち女性陣が黙ってはいられない。
「せっかくのビーチ、ここで遊んでリフレッシュしないとね。さあ、行くわよ!」
「「「おう!」」」
鈴音の威勢の良い合図に合わせ、桔梗や帆波、恵、ひよりたち女性陣は一斉にスパイ用の私服を脱ぎ捨てる。するとその下から、色鮮やかで個性豊かな水着姿が次々と現れた。
真っ青な地中海の空と眩しい太陽の下、白砂のビーチに映える彼女たちの姿は、まさに南国リゾートの主役にふさわしい華やかさだ。
「わぁっ、すごい! バルセロナの海、すっごく綺麗……!」
「本当ですね、波の音も心地いいし、さっきまでの戦車に追われてた修羅場が嘘みたい!」
「浮き輪用意して正解だったね!」
「ねえ、向こうにジェラートの屋台があるよ!」
比瑪と愛里が歓声を上げながら波打ち際へと駆け出し、美雨や麻耶もテンションを上げる。この様な休暇を取るのは初めてなので、のんびり羽根を休めようとしているのだ。
佐枝は少し離れたパラソルの下に陣取り、サングラスを掛けたまま冷えたレモネードを一口飲んでフッと息をついた。
「ふん、たまにはこういう息抜きも悪くないか。……おい、そこのアフロ、じろじろ見るんじゃないぞ」
「おっと失礼! スパイの任務中とはいえ、美しい女性たちのビーチバカンスを特等席で拝むのも、我がT.I.A.のエージェントとしての重要な情報収集の一環です!」
「情報収集じゃねぇだろ、ただの変態覗き見だ! いい加減にしろ!」
「いてっ! ボス、暴力は反対です!」
モルタデロが怪しげな双眼鏡を構えながらニヤニヤしていると、隣にいたフィレモンが容赦なくビーチパラソルの柄で彼の頭をゴツンと叩きつけた。砂浜に突っ伏してジタバタするモルタデロを放置し、フィレモンはやれやれと首を横に振る。
「ねえ鈴音ちゃん、こっちに来て一緒に泳ごうよ!」
「もう、帆波は元気ね……。でも、確かにこの冷たい海水は気持ちいいわね」
鈴音たちはさっそく波打ち際で楽しそうにはしゃぎ始めていた。普段のクールな表情を少し和らげ、鈴音も波に足を浸しながら心地よい風を感じる。
「『青い海と笑顔の少女たち、そして背後でボスに怒鳴られているモルタデロさん』……うん、最高の小説のワンシーンになりそうだな」
ひよりは砂浜にレジャーシートを広げると、波の音を聞きながらさっそく持参したスケッチブックを開き、この美しい地中海の景色と仲間たちの姿をペンで描き留め始めた。
桔梗と恵もキャッキャと笑いながら冷たい海水を掛け合い、青春真っ只中といった様子で砂浜を駆け回る。
スペインの厳しい任務を乗り越えたご褒美として、モルタデロたちとSクラスの少女たちは、バルセロナの美しいビーチで最高の夏休みを満喫していた――が、もちろん、この一筋縄ではいかない面々がただの平穏なままで終わるわけがない。
「ふふふ……みなさん、そんなに海が楽しいなら、私からの『特製・水中ターボジェット機能付きシュノーケル』の実験台になっていただきましょう!」
「ちょっと待ちなさい。それはいくら何でもやり過ぎよ」
モルタデロの発明品に鈴音が待ったをかける。いくら何でも楽しい休暇でも、ぶち壊しになるのは勘弁だ。
すると、波留加がある事を思い出し、皆に声を掛ける。
「そう言えば、他のクラスでも地下でこの様な訓練があった様な……」
「えっ? そうなの!?」
波留加の発言を聞いた恵たちは、まさかの展開に驚きを隠せずにいた。他クラスでこの様な事があったのは予想外だが、有栖ならあり得るだろう。
「その様子が動画で映されているから、映像を流すね」
波留加がすっとスマホを取り出し、数回タップして画面をみんなに向ける。そこには、バルセロナの眩しい太陽とは対照的な、ひんやりと薄暗い高度育成高等学校の地下訓練室の様子がリアルタイム(あるいは録画データ)で映し出されていた。
「えっ、ほんとだ……! あれ、坂柳さん、今度は何をやらせる気なの……?」
恵がジェラートのスプーンを持ったまま画面を覗き込むと、そこには優雅に椅子に腰掛けた有栖が、面白そうにフフッと微笑みながら新たな指令を出している姿があった。
画面の向こうでは、龍園が顔を真っ黒に煤けさせながら歯ぎしりし、平田や神崎、葛城といった各クラスの面々も、息を整えながら次の過酷なメニューに備えて身構えている。さらに、綾小路は何食わぬ顔でその様子を冷静に観察していた。
「うわぁ……あっちの学校、私たちがいない間も相変わらず地獄絵図だね……。ねえ、龍園くんたち、髪の毛が逆立ったまま全然戻ってないよ?」
「ほんとだ。伊吹さんも相変わらず険しい顔してるし……。坂柳さん、夏休み返上でどんだけスパルタなことやってるわけ?」
「みんな、すごく必死だね……。私たちがあっちで美味しいタパスやチュロスを食べてるなんて言ったら、絶対に怒られそう……」
麻耶と比瑪がスマホの画面を指さしながらクスジタと笑い、帆波も苦笑いを浮かべる。鈴音は腕を組み、モニターに映る綾小路の姿と、過酷な訓練に耐え抜こうとする全校生徒の熱量をじっと見据えた。
「……坂柳の狙いは明確よ。私たちがスペインで得た経験や成長に危機感を抱かせて、学校全体の底上げを図っているのよ。あの様子だと、二学期が始まった瞬間から、彼女たちは以前とは比べ物にならないほど牙を研ぎ澄ませて私たちに挑んでくるでしょうね」
「ふふっ、いいねぇ! 向こうがその気なら、私たちもこのスペインでの特訓とバカンスを思いっきり満喫して、さらに差をつけて返り討ちにしてあげよっか!」
鈴音の冷静な分析に、桔梗も意味深な笑みを浮かべてうなずく。この様な動画を見た以上、自分たちも負けてはいられない。
その時、波留加のスマホを後ろからのぞき込んでいたモルタデロが、突然大げさな声を上げた。
「おっ、画面の向こうの若者たちは素晴らしい闘志ですな! 特にあの青いアフロ……じゃなくて、真ん中でビリビリしている態度の悪い少年の気合、我がT.I.A.の特訓生にスカウトしたいレベルです!」
「スカウトされたら全員精神崩壊するわ! ……って、人のスマホを勝手に覗き見ないの!」
「いやぁ、情熱は国境を越えると言いますからな!」
「まったく、お前は少しはその呑気さを見習えと言いたいところだが……まあ、いい」
鈴音がジト目を向けながらツッコミを入れると、モルタデロはケラケラと笑う。フィレモンも呆れ顔でため息をついたが、いつもの事なので、無理もないだろう。
「よし、日本の仲間たちが必死に頑張ってるのは分かったけど、今はせっかくのバルセロナのビーチだもの! 悩むのはここまでにして、思いっきり夏を楽しもっ!」
帆波の明るい声に背中を押されるように、少女たちの顔に再び満面の笑みが戻る。
日本で狂気的な特訓に挑むライバルたちの影を感じつつも、スペインの青空の下、彼女たちは波の音と眩しい太陽の中へと再び駆け出していくのだった――!
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
休暇は楽しまなきゃ損ですが、他クラスは……うわ……
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