モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

47 / 47
椎名ひよりよ。バルセロナのバカンスは楽しかったわ。お陰で新たなネタもあったし。けど、他クラスはちょっと可哀想だったかな?
さっ、今日も楽しみましょう!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第46話 ヘルメット騒動

「発明品ですか?」

 

 ある日のT.I.A.本部では、ヴィセンテの話に鈴音たちは疑問に感じる。バクテリオ博士の発明がある事は今聞いたばかりで、キョトンとするのも無理はない。

 

「そうだ。今後のスパイ活動において、重要な発明品を試して欲しいとの事だ。では、説明を」

 

 ヴィセンテが厳めしい顔でそう促すと、部屋の重々しい扉が「ギィィ……」と音を立てて開かれる。姿を現したのはバクテリオだ。

 

「ふふふ……お呼びでしょうか、長官! 今回私が生み出した最高傑作の数々は、世界中のスパイ組織の常識を覆すこと間違いなしのシロモノですぞ!」

 

 バクテリオは自信満々に胸を張り、大きな金属製のトランクをドンとテーブルの上に置いた。

 鈴音や桔梗、帆波たちは興味と一抹の不安を覚えながら、そのトランクをじっと見つめる。

 

「一体、どんな発明品なんですか?」

「まず一つ目はこれだ!」

 

 恵が恐る恐る尋ねると、バクテリオ博士は怪しく目を光らせた。

 博士がトランクから取り出したのは、なぜか妙にリアルな鶏のトサカがついた、不気味に光るヘルメットだった。

 

「その名も――『敵の心理を完全に読み取る! 鶏頭型マインド・リーディング・ヘルメット』です!」

「「「…………」」」

 

 あまりの直球すぎるダサさと怪しさに、鈴音たちは完全にフリーズする。しかし、モルタデロとフィレモンは顔を真っ青にして、一斉に後ずさりを始めた。

 

「それ、前につけたときに対象者の代わりに自分が鶏の鳴き声を三日間上げ続ける呪いにかかったやつじゃないですか……!」

「そうだぞ! 以前テストしたとき、モルタデロが三日三晩『コケコッコー!』って叫びながらオフィスを駆け回って大騒ぎになっただろうが!」

「なに、あれは微調整の失敗だ! 今回は完璧に改良してあるぞ!」

 

 博士のケラケラとした笑い声を聞いた瞬間、鈴音はスッと目を細め、静かに腕を組んだ。碌な発明を聞いた以上、関わったらお陀仏だ。

 

「……お断りします。そんな怪しげなものを装着する気はありません」

「おや、そんな冷たいことを言うな! 実際のミッションでは、こういう奇抜なアイテムが生死を分けるからな!」

 

 バクテリオがグイグイとヘルメットを押し付けてくると、鈴音はため息をつきながら受け取るしかなかった。こう頼まれてしまえば、無理もない。

 

 ※

 

 その後、モルタデロたちは外に出た後、とある任務へ向かっていた。その内容はある男の尾行であり、怪しげな現場へ向かうまで気付かれないように尾行する事だ。

 

「さて、このヘルメットを使う事になるけど、装着するのは誰になるかね」

 

 鈴音はため息をつきながら、持っているヘルメットを見つめる。いくら手渡されても、役に立たなければ意味がない。下手したら騒動になって失敗するだろう。

 

「じゃあ、指パッチンで誰に装着するかね。えいっ!」

 

 ひよりが指を鳴らした途端、鈴音の持っているヘルメットが桔梗の頭に被らされた。まさかの展開に彼女は目をパチクリしてしまう。

 

「私!? 本当に上手くいくのかな……」

「あぁ、桔梗ちゃんに被せられちゃったよ……大丈夫かな、これ……」

「何だか不安ね……」

 

 桔梗が頭にちょこんと乗ったリアルな鶏のトサカを触りながら、ひきつった笑みを浮かべる。周囲で見守る恵や帆波たちもハラハラした視線を送っていた。

 と、その時――。

 前方を歩いていた、黒いロングコートを着た怪しげなターゲットの男が、不審な動きをピタリと止めた。バルセロナの古びた路地裏を曲がり、誰もいない行き止まりのような場所で、なにやら怪しげなアタッシュケースをごそごそと開き始めたのだ。

 

「しっ、静かに。ターゲットが動きを止めたぞ。いよいよ怪しい取引の現場だな」

 

 モルタデロが物陰から双眼鏡を覗き込みながら小声で警告する。フィレモンも拳銃の安全装置(?)をカチリと外し、臨戦態勢に入った。

 その瞬間、桔梗の頭に被せられた『鶏頭型マインド・リーディング・ヘルメット』が、奇妙な電子音を立てて激しく発光し始めた。

 

 ――ピピピピ……ピッ! ブーーーーッ!!

 

「わっ……!? なになに、頭が熱いよ!? なんか変な電波が流れて――っ!」

 

 桔梗が慌ててヘルメットを脱ごうとするが、なぜか強力な磁石でも吸い付いているかのように、頭からビクとも外れない。それどころか、トサカ部分がブルブルと激しく震え出し、内蔵されたスピーカー(?)から奇妙な音が響き渡り始めた。

 

「こ、ココ……コケ、コケコッコーーーッ!!」

「「「…………っ!?」」」

 

 路地裏の静寂を切り裂くような、あまりにも見事すぎる鶏の鳴き声が、桔梗の口ではなくヘルメットのスピーカーから大音量で木霊した。

 ――ギクッ。

 そのあまりにシュールで大音量の鳴き声に驚き、前方にいた怪しげな男が「な、なんだ!?」と勢いよく振り返った。

 

「あ……」

 

 桔梗が青ざめ、モルタデロたちが「やべっ、見つかった!」と頭を抱える。すると、ヘルメットが突然爆発を起こしてしまい、モルタデロたちだけでなく、男まで巻き込まれてしまった。

 

「ゲホッ! ゴホッ! まさか爆発するなんて聞いてないよ!」

「しかも男は気絶しているし」

 

 桔梗は咳き込みながら涙目となっていて、美雨は前方の男を指さしていた。彼は黒焦げで目を回しながら気絶していたが、爆発に巻き込まれたのも運が悪かったのだろう。

 

「さらに私たちも黒焦げ。なんでこうなるのよ……」

 

 鈴音も涙目で黒焦げとなっていて、帆波たちも同じ状況に。モルタデロとフィレモンは黒焦げのまま立ち尽くしていた。

 

 ※

 

「助けてくれー!」

 

 その後、荒野でバクテリオは桔梗にヘルメットを被されてしまい、ニワトリの様に走り回っていた。あれだけ発明品で騒動を起こしたから、自業自得だ。

 

「少しは反省しろ、このバカ博士!」

 

 桔梗は怒りの声でバクテリオに告げた後、鈴音たちと共にその場を去っていく。彼がこれで懲りるかと思ったらそう簡単にはいかない。また碌でもない発明品が出てくるのも時間の問題だろう。




ED:SUMMER EYES(王バージョン)

バクテリオ博士の発明品はお約束となりました。しかも、まだまだ続きます。

感想等よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。