それじゃ、物語の始まりよ!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
モルタデロたちは目的地である自由の女神の像の前に移動し、目的のコードを探しに向かう。しかし、行列ができているので、順番に並ぶ必要がある。
「ルールだから我慢しないと」
「その通りです。スパイと怪しまれる事もありますので、普通に並びましょう」
「モルタデロの言う通りだな。良いか、他の客に迷惑掛けるなよ!」
鈴音とモルタデロの説明にフィレモンが同意し、皆に対して指示を飛ばす。それに桔梗たちも頷きながら、ルールを守って取り組む事を決断していた。
「中に入るまで時間が掛かるね。オフェリアさんはこの自由の女神を目的としていたのですか?」
「ええ。私もこの様な女神になりたいからね」
「けど、実際はなってないんじゃ……」
桔梗が思わず零してしまったその小声は、周囲の喧騒にかき消されるはずだった――が、オフェリアの耳には驚くほど正確に届いていた。
オフェリアの動きがピタリと止まる。その場にいた全員の背筋に、真冬の吹雪を思わせるような凍てつく悪寒が走った。
「……今、何か言ったかしら? 櫛田さん」
オフェリアがゆっくりと首を曲げ、作り物のような不気味な笑みを浮かべながら振り返る。その瞳の奥には、メラメラと黒い炎が立ち上っていた。
「ひっ……!? い、いえ、何も言ってません! 素敵な理想だと思います、はい!」
桔梗は血の気が引いた顔でブンブンと両手を激しく横に振り、必死の形相で否定する。
隣にいた鈴音や恵、帆波たちも、これ以上刺激したら何が起こるか分かったものではないと、必死に話題をそらそうと冷や汗を拭いながら声を上ずらせた。
「そ、そうよね! 自由の女神みたいに、こう……包容力があって、みんなを温かく見守るような大きな女性を目指すってことだよね!」
「そ、そうです! オフェリアさんの高い志、とっても素晴らしいと思います……!」
鈴音と帆波が必死の笑顔でフォローを入れると、オフェリアは満足げにフンと鼻を鳴らし、再び前を向いた。
「ふん……まあ、いいわ。私のこの圧倒的な存在感と美しさは、凡人にはなかなか理解できないかもしれないけれどね」
――はぁ……、危なかった……。
一同は一斉に大きく息を吐き出し、文字通り命拾いしたといった表情でぐったりと肩を落とす。一歩間違えれば、あのフィレモンのように地面に沈められていたところだ。スパイ任務の敵よりも、味方の秘書のほうがよっぽど恐ろしいかもしれない。
そんな緊迫した(?)空気の中、列はいよいよ入場ゲートの直前へと差し掛かる。
「さあ、いよいよ中に入るわよ。気を引き締めていきなさい!」
鈴音の低く引き締まった声に、全員が真剣な表情へと切り替える。そのまま自由の女神の中へと入り始めたのだ。
※
自由の女神の中へ入ったモルタデロたちは、自由の女神を上りながら上を目指していた。展望台の中にあるコードが、今回の目的の任務だ。
「確かコードは展望台か……確かどんなコードなのか気になるわね……」
「きっと歴史的な暗号とか、スパイ組織の極秘メッセージなんじゃないかな?」
「だとすると、あんまり変なものじゃなければいいけど……」
鈴音の呟きに、ひよりや恵もそれぞれ期待と不安が入り混じった表情を浮かべる。
――だが、モルタデロたちが絡む任務が、ただの「お堅いスパイ活動」で済むはずがなかった。
「ふむ、展望台までの道のりは長いし、階段を普通に上るだけではエージェントの名スタミナが泣きますな! というわけで、ここでバクテリオ博士の最新作――『自動吸着式・壁面スパイダーシューズ』の出番です!」
モルタデロが嬉しそうに取り出したのは、なぜか足の裏に吸盤がびっしりついた、不気味にグネグネと動く奇妙な靴だった。それを自分の足に無理やり履こうとする。
「おいモルタデロ、それを付けたら壁に張り付いたまま動けなくなって、観光客の笑いものになるのがオチだろ! いい加減にしろ!」
フィレモンが鋭くツッコミを入れ、モルタデロの後頭部を強烈にひっぱたく。
しかし、その勢いでモルタデロの手から離れたスパイダーシューズがポーンと宙を舞い、よりによって――先ほどから不機嫌そうに歩いていたオフェリアの顔面にドンピシャで直撃してしまった。
「…………っ!」
「あ」
周囲の空気が、一瞬にして氷点下へと急降下した。
オフェリアの顔にペタッと吸盤で張り付いたスパイダーシューズ。ゆっくりとそれを引き剥がした彼女のこめかみには、怒りで血管が浮き出ている。
「モルタデロくん……今、私に何をしたのかしら?」
「ひゃあああっ!? ち、違います、靴が勝手に自立歩行を……!」
「お仕置きの時間ね……覚悟しなさいっ!」
ガシッ! とオフェリアの太い腕がモルタデロの襟首を掴み、そのまま展望台へ向かう螺旋階段の踊り場で盛大なプロレス技(?)が炸裂する。
「ぎゃーーっ! 助けてボス、骨が折れますーーっ!」
モルタデロの悲鳴を完全無視しながら、鈴音たちは冷や汗を拭いつつ、そっとその場を通り過ぎた。巻き込まれたらお陀仏ださとしか言えない。
「……見なかったことにしましょう。先を急ぐわよ」
「う、うん……そうだね……」
Sクラスの面々は、ある種の生存本能に従い、早足で展望台のフロアへと駆け上がっていった。目的の為が先決なので、ここで止まる理由にはいかないのだ。
※
すったもんだの末、ようやく自由の女神の最上部にある展望台へとたどり着いた一行。
窓の外には、ニューヨークの象徴であるマンハッタンの美しい高層ビル群と、広大なハドソン川の絶景がパノラマのように広がっていた。
「わぁ……! すごい景色……! マンハッタンの街が一望できるね!」
「本当に素晴らしい眺めだね。苦労して上ってきた甲斐があったよ」
比瑪や帆波が感動の声を上げる中、鈴音は周囲の壁や柱に目を凝らす。まだ任務が終わってない以上、油断はならない。
「景色に感動している場合じゃないわよ。ヴィセンテ総監の言っていた『コード』を探さないと」
全員で手分けして展望台の壁や窓枠を捜索し始めると、ひよりが窓の隅にある小さな金属プレートを発見した。
「みんな、こっちに来て! ここに何か刻まれているよ……!」
ひよりの声に、鈴音やモルタデロたちが駆け寄る。そのプレートを覗き込むと、そこには微細な数字とアルファベット、そしてなぜか妙にリアルな「アフロ頭のキャラクター」の落書きが刻まれていた。
「……これ、コードっていうか、ただの落書きじゃないかしら?」
「いや、待てよ……この数字の並び、我がT.I.A.の極秘暗号コードの形式にそっくりです!」
モルタデロが目を輝かせてスマホを取り出し、パシャリと鮮明に写真を撮影する。
任務完了を示すシャッター音が響いたその瞬間、背後からスッキリとした表情のオフェリアが歩いてきた。
「お疲れ様。これでスペインでの研修は終了となるわ。後はショッピングを楽しみましょう!」
オフェリアの合図に鈴音たちも頷き、ニューヨークのショッピングに向かう事に。スペインでの研修も終わりを告げ、残すは二学期を迎えるのみだ。
二学期は他クラスも反撃を開始するが、その結末はどうなるのか。それはその日を迎えなければ分からないだろう。
ED:SUMMER EYES(王バージョン)
いよいよ次回から二学期。果たしてどうなるのか?
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