モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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皆、櫛田桔梗だよ。
私たちが捕まえた不審者は、まさかの国家転覆を企むテロリスト! 一億ポイント貰えたけど、良いのかな?
さて、今日も物語が始まるよ!皆、見てね!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第5話 襲撃のCクラス

 Sクラスの初めてのスパイ任務から二日後。本部の巨大なエントラス前にはCクラスの龍園、伊吹、石崎がいたのだ。彼らは元クラスメイトのひよりを奪われた事を恨んでいて、調子に乗るとどうなるのか教える必要があるのだ。

 

「ククク……こんなふざけた要塞、俺たちが正面からぶっ壊してやるよ」

 

 エントランスの前に立った龍園は、不敵な笑みを浮かべながら堂々と自動ドアの前に立った。後ろには戦闘態勢の伊吹と石崎が控えている。

 龍園が勢いよく扉を蹴り開けた、その瞬間だった。

 

「ん? なんだ、こりゃあ……?」

 

 エントランスホールに広がっていたのは、なぜか足の踏み場もないほどに敷き詰められた大量のサボテンの鉢植え。このぐらいは何ともないだろう。

 

「チッ、ふざけた嫌がらせをしやがって。こんなもん蹴り飛ばして……」

 

 石崎がサボテンの一つに足を乗せた途端――カチッと不吉な音が鳴ってしまった。すると、サボテンの鉢植えの下に隠されていた巨大なスプリングが、いきなり作動してしまった。

 

「「ぎゃああっ!?」」

 

 石崎と伊吹の体がゴム鞠のように天井へと弾き飛ばされ、無情にもホールのシャンデリアに突き刺さって気絶してしまった。最初にモルタデロの仕掛けた罠の被害者でもある為、哀れとしか言いようがない。

 

「クッ……くだらねぇ小細工を……!」

 

 龍園は持ち前の反射神経でスプリングをギリギリ回避し、舌打ちをしながらホールの中央へと進み出る。さすがはCクラスの独裁者、この程度のギャグトラップでは沈まない。

 

「出てこい! コソコソ隠れてねぇで、俺と真っ向から――」

 

 龍園が上階に向かって叫ぼうとした、まさにその時だった。

 二階の吹き抜け部分から、震える手で超巨大な鉄球を抱え上げている小柄な少女の姿があった。元Dクラスの王で、渾名はみーちゃんである。

 

「え、ええと……モルタデロさんに『敵が来たらこれを落としてください』って言われたけど……本当にいいのかな……? え、ええいっ!」

 

 王がギュッと目をつぶりながら手を離すと、重力に従って鉄球が猛スピードで落下していく。

 

「あ?」

 

 龍園が頭上の影に気づいて見上げた時には、もう遅かった。

 

 ゴチーーーーン!!!

 

 以前、堀北を沈めたのと同じ鈍い音がエントランスに響き渡る。

 あの恐怖の対象であった龍園翔は、頭に巨大なタンコブを作りながら、白目を剥いてパタリとその場に倒れ伏した。完全なるKOである。

 

「大成功です! いやあ、素晴らしい! さすがはみーちゃん、完璧なタイミングでしたよ!」

「ひゃわわわっ……! わ、私、とんでもないことしちゃったかも……!」

 

 サボテンの被り物を着ているモルタデロが二階から満面の笑みで拍手を送ると、王は自分のしでかした事に青ざめながらオロオロとパニックに陥っている。まさかあの龍園を倒してしまうとは、予想外としか言えない。

 

「バカヤロー!! また鉄球か! しかもあんな怯えた素人の女の子に何をやらせているんだ!! 相手は死んでないだろうな!?」

 

 フィレモンが顔を真っ赤にしながらモルタデロの胸ぐらを掴んで絶叫する。取り返しのつかない事をすれば、警察行きは確定だろう。

 

「おやボス、ご安心を。我がT.I.A.特製の鉄球は、当たるとちょうどよく数時間ほど気絶するだけで後遺症は残らない、非常に人道的な作りになっているのですよ」

「物理法則を無視するな!!」

「良かった……」

 

 モルタデロの説明にフィレモンがツッコむ中、王は安堵のため息をつく。死ななくて良かったと思っているだろう。

 こうして、他クラスからの初めての襲撃となるCクラスの殴り込みは、モルタデロの理不尽極まりないサボテントラップと、完全に巻き込まれた王の鉄球落としにより、わずか数十秒で壊滅。

 Sクラス要塞の恐るべき(ギャグ次元の)防衛力が、高度育成高等学校に改めて見せつけられる結果となったのだった。

 

 ※

 

 数時間後のCクラスの教室。

 頭に巨大なタンコブを作り、全身トゲまみれ(サボテンのトゲがびっしり刺さったまま)になった龍園、石崎、伊吹の三人が、這う這うの体で自分たちの拠点へと戻ってきた。

 

「ぐっ……いててて……。なんだあの要塞は……。ただの変態集団かと思いきや、本物の狂人の城じゃねぇか……!」

 

 普段は冷酷非道な独裁者として恐れられている龍園が、頭の痛みを堪えながら床に崩れ落ちる。あの無敵の龍園が、あんな理不尽な鉄球一撃で沈められたのだから精神的ダメージも計り知れない。

 

「いてて……最悪だ……」

「もう二度とあんなところ近づかない……」

 

 後ろでは石崎が半泣きになりながら服についたサボテンをむしり取り、伊吹は完全にトラウマを植え付けられた顔で壁に突っ伏していた。その異様な有様を見て、事情を知らないCクラスの生徒たちがざわつき始める。

 

「な、なんだよその姿……! 一体何があったんだ、龍園さん!?」

「あそこのSクラスに喧嘩売りに行ったんじゃなかったのか!?」

 

 クラス全体が緊張と恐怖に包まれる中、龍園はゆっくりと顔を上げ、血走った目でクラスメイトたちを見渡した。そして、かすれた声で力強く、かつ絶対的な命令を下す。

 

「……よく聞け、お前ら。全校生徒に通達だ」

「つ、通達って……?」

「あの『Sクラス』には、今後一切――絶対に近づくな!!」

 

 龍園のその言葉に、Cクラスの全員が絶句してしまう。まさか彼がこの事を言うのは予想外であろう。

 しかし、Sクラスは理屈や知略が一切通用しない、サボテンと鉄球が支配する恐怖の魔境。それだけでなく、他の罠も仕掛けてある可能性があるのは確実だ。

 こうしてCクラスの間では、「Sクラスの要塞に近づく者は即座に勘当、または破門」という不文律が、誰から言われるでもなく全会一致の鉄の掟として可決されたのだった。

 

 ※

 

 その頃、Sクラスの教室では、王がこれまでの事を軽井沢たちに話していた。当然彼女たちは苦笑いしていたが。

 

「災難だったけど、無事で良かったです……」

 

 佐倉の苦笑いに一之瀬たちも一斉に頷く。まさか龍園の頭の上に鉄球を落とすのは前代未聞で、彼女が新たな歴史を塗り替えた事も噂されるだろう。

 

「いやぁ、本当にびっくりしたよ……。私、あんな怖い人が倒れるなんて思ってもみなかったから、今でも足が震えちゃって……」

 

 王が両手で自分の胸を押さえながらパタパタと座席の上で落ち着かない様子でいると、軽井沢が優しく彼女の肩をポンと叩いた。

 

「いいのよみーちゃん、結果オーライってやつよ! あの龍園を文字通り一撃で沈めたんだから、あんたはもうこの要塞の隠し英雄なんだからね」

「そうそう! モルタデロさんの無茶振りに応えちゃったみーちゃんはすごいよ!」

「うん……みーちゃん、お疲れ様……」

 

 一之瀬も満面の笑みで親指を立てる。佐倉も自分のことのようにほっと胸をなで下ろしていた。王はそれを見て安堵したように、ニッコリと微笑み返した。

 教室全体が和やかな空気に包まれている――その時、教室の自動ドアが豪快に開き、派手なスパンコールの入ったタキシード姿のモルタデロと、頭を抱えたフィレモン、真顔の茶柱が入ってきた。

 

「皆さん、盛り上がっているところ失礼します! 我がSクラスの華麗なる防衛劇、大成功でしたね!」

「大成功で済むか! 一歩間違ったら大惨事だったんだぞ!」

 

 フィレモンが相変わらずの絶叫ツッコミをかます横で、モルタデロはピッと人差し指を立てて高らかに宣言する。

 

「ですが、いつまでも要塞の中に引きこもっていては、T.I.A.のエリート諜報員の名折れというものです。……というわけで! 本日は待ちに待った『校外活動および外部任務』の解禁日です!」

 

 その言葉に、生徒たちの表情がパッと明るくなった。前の授業で外出できる事は知っているが、とうとうこの時が来たのだと実感していた。

 

「授業で聞いていましたが、本当に外に出てもいいんですか……?」

 

 佐倉が期待に満ちた目をパチパチさせると、モルタデロは力強く頷いた。勿論許可は得ているので、当然というべきだ。

 

「もちろんです、愛里さん! あなたには以前の輝ける舞台――『グラビアアイドルの撮影現場』へ直行してもらいましょう。もちろん理事長から許可を得ていますし、万全のセキュリティとT.I.A.特製の超極秘カモフラージュ体制を敷いていますから、学校の目を気にする必要は一切ありません!」

「本当……? よかったぁ……!」

 

 佐倉は嬉しさのあまり両手を合わせ、心の底から安堵の笑みをこぼした。制限のなかったかつての夢が、この破天荒なSクラスとモルタデロのおかげで再び動き出すのだ。

 

「私としては、街の古い書店や、噂に聞く非公開の地下図書館を巡ってみたいですね」

「じゃあ私は街の様子を見て、ついでに買い出しでもしていかないと!」

「……まあ、外の情勢を把握しておくのも、今後の活動において無駄ではないわね」

 

 椎名が目を輝かせながらスケジュール帳を開き、一之瀬も楽しそうに手を挙げる。堀北は小さく息をつきつつも、外出を拒む様子は見せなかった。

 

「何だかワクワクするね」

「私もこういうのは楽しみにしているんだよね」

 

 櫛田は外に出る事を心から楽しみにしていて、今でもドキドキしている。長谷部も笑顔を見せながら、これから待ち構える物語を楽しみにしているのだ。

 

「ボス、帆波さん、そして皆の者! 我がSクラスの『外部進出作戦』、これより開始します!」

 

 モルタデロの威勢の良い合図とともに、要塞の巨大なエントランスがゆっくりと開放される。

 常識外れの要塞から一歩外の世界へ踏み出す彼女たちを待ち受けているのは、一体どんな大騒動と新たな出会いなのか――。




ED:Rock'n Rouge(一之瀬バージョン)

次回は佐倉がメイン! 撮影はどうなるのか?
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