さあ、二学期も頑張らないとね! 準備は良いかな?
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
第49話 二学期の始まり
高度育成高等学校では二学期スタート。モルタデロたちもSクラスの教室に戻り、佐枝の授業を受けていた。因みに二学期からはヴィセンテ、オフェリア、バクテリオ博士もいる。スペインでのドタバタ劇は日本でも続く事になっているのだ。
「さて、いよいよ二学期といえば体育祭がある。我々Sクラスも参加するが、容赦なく徹底的にやる事だ。因みに女子たちはいつもの運動服だ」
「そうなると思いましたけどね。いくら他クラスが鍛えても、また同じ展開になりそうだけど」
佐枝の説明を聞いた波留加は、苦笑いしながら無人島での出来事を思い出す。
無人島では自分たちのスポブラとジャージズボンという大胆な服装によって、殆どの男子生徒が悶絶して倒れるという事態が起きてしまった。今回の体育祭も同じ展開が起きるのは確実だろう。
「そうよね、あの時の男子たちのリアクション、今思い出してもちょっとすごかったもん……。今回もあの格好で競技に出るとなると、相手クラスの男子たちはまともに戦えるのかしらね」
「確かに、競技そっちのけでクラクラしちゃう男子続出かもね!」
「まあ、こっちは勝てばいいんだから問題なしっ!」
恵がクスリと笑いながら言うと、比瑪や美雨も気楽に返す。自分たちの実力を発揮できていれば大丈夫だ。
その時、教室の後方に陣取っていた特別講師席から、ヴィセンテがもっともらしい顔で腕を組んで声を上げた。
「ふむ、体育祭か! 我々T.I.A.にとっても、スパイの機動力と圧倒的な存在感を学校全体に見せつける絶好のチャンスだ。まあ、今までの研修をこなしている限り、大丈夫かも知れないだろう。オフェリア、敵のデータはどうなっている?」
「調べましたわ。一年の中で危険なのは坂柳、葛城、神崎、綾小路、平田、高円寺、伊吹の七人です。堀北生徒会長も手強いですし、一筋縄では行きません」
オフェリアからの報告に、鈴音たちは真剣な表情で頷いていた。
坂柳の訓練で多くが脱落し、最後まで残った六人は厄介な存在。更に現生徒会長の学もいる限りは、簡単に優勝は不可能だ。
「確かにそうですね。兄さんもいる以上は油断できませんからね」
「何れにしても油断ならない。何とかしないとね」
鈴音と桔梗の真剣な発言に、美雨たちも一斉に頷く。敵もSクラスに黙ってばかりではいられず、抵抗するのは確実だ。恐らく一致団結して反乱を起こすかも知れないだろう。
「ふっふっふ……他のクラスの精鋭どもがどれだけ牙を研ごうとも、我々T.I.A.の科学力と、彼女たちの圧倒的な実力の前には赤子の手をひねるようなものさ!」
教室の後方、特別講師席の隅に陣取っていたバクテリオが、白衣をバサリと翻しながら自信満々に割って入った。その手には、またしても怪しく不気味に光る不審なリモコンが握られている。
「……博士。嫌な予感しかしないんだけど、また変な発明品を持ち出したわけ?」
恵がジト目を向けながら突っ込むと、バクテリオ博士はフンと鼻を鳴らした。その様子だと嫌な予感しかしないが。
「失礼な! 今回は体育祭の競技を劇的に有利にするための最高傑作――『全自動・相手を勝手に転ばせるバナナピール発射型スニーカー』だ! これを履けば、どれほど運動神経抜群の綾小路くんや高円寺くんと言えども、一瞬で華麗にすっ転ぶこと間違いなしだぞ!」
「そんな反則スレスレどころか完全にアウトな道具を体育祭で使ったら、即座に退学処分か公安に通報されるわよ!」
鈴音が生理的な嫌悪感を隠さない冷徹な声で一喝すると、桔梗たちも一斉にコクコクと頷く。こんな物を使ってしまえば、体育祭はぶち壊し確定。皆から追いかけられるのも当然だ。
「じゃあ、体育祭の競技の一部を理事長と話して改良した。因みに障害物競走のみだが」
「それなら良いけど……」
バクテリオの説明に、鈴音が不安そうな表情をしながら納得する。
障害物競走ならまだ良いとしても、バクテリオの発明で自分たちや多くの生徒が巻き込む恐れもある。もし、それが現実になったらどうなるのか分からないだろう。
「だが、他クラスも夏休みの特訓を経て、今回の体育祭には並々ならぬ意気込みで挑んでくるはずだ。油断すれば、足元をすくわれるのはこちらの方かもしれん。各自、心して準備をしておくように」
佐枝の引き締まった言葉に、鈴音たちはピリリと気を引き締める。何れにしても油断はできない。この体育祭から本当の勝負になるのは確実であるのだ。
※
一方のCクラスでは、綾小路たちが飛山の話を真剣に聞いていた。その内容は体育祭の事についてだ。
「体育祭はSクラスも参加するから、彼らによってクラスの今後がどうなるかだ。Cクラスで特訓で生き残ったのは、綾小路、平田、高円寺の三人だけだったな。他の皆は傷だらけとなっているが……」
飛山が生徒たちをよく見ると、綾小路、平田、高円寺以外の生徒たちは、傷だらけや包帯を巻いている姿が目立っていた。特に山内と池は全身包帯まみれという不幸な展開になっている。
「無理もないな。まあ、あれだけやられていれば……」
「他人事みたいに言わないでくださいよ……」
「動く度に骨が軋む……」
飛山の苦笑いに山内が涙を流してしまう。池も同様の表情だ。
他の生徒たちも、あちこちに青あざを作っていたり、松葉杖をついていたりと、まともに歩ける者が数えるほどしかいない。坂柳有栖が課した夏休みの狂気的な特訓は、彼らの肉体と精神を徹底的に破壊していたのだ。
「仕方ないさ……あの状況で生き残るだけで精一杯だったんだからね。それに、僕たちにはまだ……」
平田が苦笑いを浮かべながら自身の腕の痛みをこらえ、視線を教室の隅に向ける。そこでは、傷一つなく相変わらず優雅に自分の姿を鏡でチェックしている高円寺六助が、マイペースに髪をかき上げていた。
「ふっ、美しい肉体には傷一つ似合わないのさね。まぁ、今回の体育祭も私の華麗な走りで全校の視線を独り占めするとしようか!」
「高円寺はいつも通りだな。まあ、これは仕方がないとしか言えないが、ともかく諦めずに頑張ってくれ。狙うはAからDクラスの中でトップに立つ事を忘れるな」
「いや、この身体でトップとか無理ゲーでしょ……」
「むしろ生き残るだけで精一杯だよ……」
飛山の力強い(しかしどこか説得力に欠ける)ハッパに、山内や池は青い顔で項垂れる。平田と高円寺以外の他の生徒たちも同様だ。
だが、綾小路は冷静に周囲を見渡し、静かに思考を巡らせていた。
(坂柳の特訓は確かに地獄だったが、そのおかげでクラス全体の肉体的・精神的な底上げは図られた。問題は、あのSクラスと、彼女たちの背後にいる奇妙なスペインのエージェント連中だ……特に、あのバクテリオという科学者の発明が障害物競走にどう絡んでくるか……)
綾小路はそう考えながら分析する中、体育祭は近づいていく。爆笑と破茶滅茶な展開が待ち受けるが、Cクラスに明日はあるのか。
ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)
体育祭は……お約束連発となります。
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