モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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茶柱佐枝だ。二学期が始まり、まずは体育祭からだ。やはり他クラスも鍛え上げたのは確実だが、我々も黙ってはいられない。これから先がどうなるかだ。
さて、物語のはじまりだ。準備は良いかな?

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第50話 体育祭の始まり

 いよいよ体育祭の日がやってきた。誰もが皆、勝つ為に張り切っている。だが、Sクラスがいる限りは悪夢の展開が起きるかどうかだが、訓練で生き残った綾小路たち六人が鍵を握る。

 

「選手整列!」

 

 放送委員の鋭いアナウンスが秋晴れのグラウンドに響き渡る。その合図と同時に、各クラスの代表選手たちが一斉にトラックへと姿を現した。

 ざわめいていた周囲の空気が、ピリリと張り詰めた緊張感に包まれる。

 特に、Sクラスの選手たちが整列場所に歩み寄ってきた瞬間、他クラスの男子生徒たちの間からあちこちでごくりと生唾を呑み込む音が聞こえた。

 スポーツブラとジャージズボンという、鍛え抜かれたスタイルを存分に際立たせる戦闘服。その圧倒的なビジュアルと、スペインでの過酷な任務で培われたただならぬ気迫の前に、早くも気圧されて膝を震わせる者続出だ。

 

「ふん、みんな気合だけは十分みたいね。でも、隙だらけだわ」

 

 鈴音が涼やかな笑みを浮かべながら真っ直ぐ前を見据える。その隣では、桔梗が人懐っこい笑顔の裏で鋭く周囲を観察し、帆波や恵、比瑪たちもウォーミングアップをしながら闘志を燃やしていた。

 対する他クラス――坂柳の狂気的な特訓を生き抜き、見事に這い上がってきた精鋭たちも負けてはいない。

 Cクラスの列には、冷徹な瞳を光らせる綾小路、相変わらずマイペースに髪をかき上げる高円寺、そして痛む体を必死に支えながら立つ平田の姿があった。さらに、Aクラスから葛城、Bクラスは神崎、そしてDクラスの伊吹なども、それぞれのクラスの威信を背負って険しい視線を送っている。

 

(坂柳の地獄のような特訓の成果を試すには絶好の舞台か……。だが、それ以上に厄介なのは、あのSクラスの後ろに控えているスペインの連中だ)

 

 綾小路は静かに思考を巡らせながら、グラウンドの隅で怪しげな双眼鏡を構えつつ、すでに変なボタンを押そうとしているモルタデロとフィレモンの姿を視界の隅にとらえた。さらに、その近くではバクテリオ博士が不敵な笑みを浮かべて「ふっふっふ、いよいよ実験の幕開けだ……!」と呟いているのが見える。何れにしても嫌な予感は避けられないだろう。

 

 ※

 

 第一種目は百メートル走。モルタデロ、鈴音、帆波が出る事に。因みに罠や道具は無いので、真剣勝負となる。何れにしても大丈夫と言えるが。

 まずは第一組。モルタデロの番だ。そのままスタートしたその時、モルタデロはチーターに姿を変えてダッシュしてしまった。当然彼は一着となり、決勝進出。因みに道具は使わずに変装となっているのだ。

 

「言い忘れたが、モルタデロは動物などに変装が可能。これもありとなりますが、悔しかったら彼みたいに変装する様に」

 

 審判の説明に他クラス全員がずっこけてしまう。この体育祭は明らかに異常としか思えず、何でもありなのかと思えるぐらいだ。

 

「動物に変装って……それ、もはや競技じゃなくて生物の枠を超えた反則だろっ!」

「そんなのありか!」

 

 観覧席にいた山内や池が、思わずずっこけた勢いのまま地べたにひっくり返り、激しくツッコミを入れる。

 

「ふはは、我がT.I.A.のスパイ技のスピード、思い知りましたか!」

「変装はいいが、動物そのものになるのは目立ちすぎるだろ!」

 

 トラックの脇では、モルタデロがチーターの姿から元の姿に戻り、胸を張っている。フィレモンは当然観客席から飛び出し、モルタデロにツッコミを入れた。

 ルール無用、何でもありのこの特別ルールに、他クラスの生徒たちは絶句するしかなかった。

 

(坂柳が仕掛けた特訓の成果を試す場のはずが……いきなり根本からルールを破壊してくるか。流石はスペインからの刺客といったところか、侮れんな)

「ふふっ、面白いですね。私たちの予想を軽々と超えてくるそのスタイル、嫌いではありませんよ」

 

 綾小路は冷静に分析しながら、次はどの競技にどんなトンデモ要素が仕込まれるかを警戒する。更に観覧席の特等席で、坂柳有栖は小さくクスクスと笑いながら、面白そうに紅茶を口に含んでいた。

 

 ※

 

 

 そして――いよいよ、注目の女子第一組の出番がやってきた。

 トラックのスタートラインに立ったのは、圧倒的なオーラを放つ堀北鈴音と、爽やかな笑顔を浮かべる一之瀬帆波だ。彼女たちが身にまとうスポーツブラとジャージズボンの戦闘服は、周囲の視線を完全に釘付けにしている。

 

「ふん、モルタデロがああいう形で見せたなら、私たちが正攻法で圧倒するまでよ」

「私も負けないように頑張るね!」

 

 鈴音がキリッとした表情でスタートの姿勢を取る。その隣で、帆波も軽くストレッチをして気合を入れる。

 スタートのピストル音が響いた瞬間、鈴音は地を蹴るような鋭い踏み込みで一気に加速した。

 無人島やスペインでの過酷な任務で鍛え上げられた脚力は伊達ではなく、一歩ごとに周囲を置き去りにしていく。帆波も負けじと美しいフォームで軽やかに追いすがる。

 

「「はやっ……!?」」

 

 他クラスの女子選手たちが圧倒的なスピードの差に目を見張り、観覧席の男子たちは(目のやり場に困りつつも)その圧倒的な走りの美しさに息を呑む。

 結果は、鈴音が堂々の1着でゴールイン。 帆波も僅差の2着で難なく予選を突破した。

 

「ふう……どうにか、格好はついたかしらね」

「さすが鈴音ちゃん、完璧だったよ!」

「この調子でどんどん勝っちゃおう!」

 

 息を整えながら涼しい顔で戻ってくる鈴音に、桔梗や恵たちが歓声を上げる。今の彼女たちに敵はなく、このぐらいなら大丈夫と言えるだろう。

 

「まずは百メートル走が終わったか。次は障害物競走だな」

 

 バクテリオはこの様子を見た後、すぐに障害物競走の準備を行う。そしてこれがパニックになる事を、この時の誰もが考えてなかったのだ。




ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)

何でもありの体育祭。爆笑展開となりますのでお楽しみに。

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