さて、物語が始まるわ。準備は良いかな?
第二種目は障害物競走。バクテリオが既にコースを用意しているが、どうせ嫌な予感しかしないのは確定と言えるだろう。他クラスが不安になるのも無理はない。
因みにSクラスからはフィレモン、美雨、恵、桔梗の四人だ。しかも各組一人ずつ挑む事になっている。
「バクテリオ博士。本当に大丈夫なのか?」
「心配するな。面白くする様に仕掛けてある」
バクテリオ博士が不敵に嗤いながらリモコンの赤いボタンを押し込んだ瞬間、グラウンドに設営された障害物競走のコース全体が、ゴゴゴ……と不気味な地響きを立てて変形し始めた。
「「「絶対面白くないやつだーーっ!!」」」
Sクラスの生徒だけでなく、他クラスの観覧席からも一斉に絶叫が上がる。
スタートラインに控えていた平田、そして他のクラスの選手たちも、思わず顔を引きつらせてコースの異変を見つめるしかなかった。
「ふふっ、流石はバクテリオ博士……。あんな危なっかしいものをよく堂々と持ち込めますね」
坂柳有栖は特等席からパラソルを傾け、面白そうにその様子を高笑いしながら見守っている。この様子だと絶対にとんでもないコースであるのは明らかだ。
※
「コースは鉄球振り子を駆け抜け、空からのマシンガンを回避。そして最後は地雷ゾーン……私たちSクラスは大丈夫だけど、他のクラスがやられそうかもね……」
第一組では恵がスタートラインに立ち、ストレッチしながら前を向く。自分たちはこの様な経験をしたから大丈夫だが、他のクラスはやられる確率が高いだろう。
「位置について……よーい!」
スタートの合図と共に、第一組の選手たちが一斉に飛び出した。恵はスペインや無人島での過酷な任務を思い出し、冷静かつ俊敏な動きで最初の難所へと向かう。だが、バクテリオ博士が仕掛けたコースは、そんな生易しいものではなかった。
※
第一関門の鉄球振り子は通常の競技であれば、少しタイミングを計ってくぐるだけの障害物。だが、バクテリオの改造によって、鉄球がジェット噴射つきのロケット弾仕様にパワーアップしている。
「うわっ、なんだこれ、速すぎるでしょ!?」
恵が身をかがめてギリギリで回避した背後を、ゴオォォッと凄まじい爆風を上げて鉄球がかすめていく。他クラスの男子生徒は、その風圧だけで見事にふっ飛ばされ、コース脇のフェンスに激突してあえなく沈没した。
※
第二の関門である空からのマシンガン。上空からバラバラと降り注ぐのは、本物の実弾……ではなく、バクテリオ特製の「超強力・激臭インク弾」だ。
「きゃっ! ちょっと、これ絶対にかかったら臭いやつじゃん!」
恵は機敏なステップでインク弾を完全に回避し、一滴も浴びることなく華麗に駆け抜けていく。
一方、何も知らずに飛び込んできた他クラスの生徒たちは、頭から全身へと容赦なく激臭インクを浴びせられてしまった。
「くせぇーーっ!?」
「視界が真っ暗だーーっ!」
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。観客席の誰もが唖然とするのも無理なかった。
※
ラストは地雷ゾーン。最後の直線に敷き詰められた地雷原。もちろん爆発して怪我をするものではないが、踏むとどうなるのか気になるところだ。
「ふん、これくらい、私なら――!」
恵はスペインでの特殊訓練で培った軽やかな身のこなしで、足元を完全にクリア。見事に第一組の1着でゴールテープを突き破った。
「やったぁ……! なんとか無傷でクリアできたよ!」
息を整えながらガッツポーズをする恵の背後では、地雷を踏み抜いた他クラスの生徒たちが、次々と頭から大量のカラフルな羽毛を噴き出すモフモフの鳥の着ぐるみ姿に変えられてしまった。まさに絶望としか言えない。
「ふふっ、流石は我がSクラスの精鋭ですね! 障害物競走を単なるサバイバルに変えてしまうとは素晴らしい!」
「……まったく、あんな危険なコースを平然とクリアしていくなんて、あいつらもすっかりスパイの体になってしまったか」
観覧席の特等席で、坂柳有栖がパチパチと手を叩いて大喜びしている。その隣では佐枝は深いため息をつきながら、苦笑いしていた。まあ、この様な経験をしたのだから、そうなるのも無理はないが。
※
「第二組、位置について……よーい!」
ピストルの音が響き渡ると同時に、第二組の選手たちが一斉にスタートを切った。
Sクラスから出陣したのは美雨だ。彼女は鋭い眼光で前方を捉え、無駄のない動きで第一関門のロケット弾仕様・鉄球振り子へと突入する。
「っ……、この軌道なら、タイミングはここね!」
凄まじい爆風を上げて左右に揺れ動く巨大な鉄球を、美雨はまるで舞うかのような軽やかなステップで次々とスレスレにかわしていく。その横を掠めた他クラスの男子生徒は、風圧に耐え切れず見事に吹き飛ばされ、あえなくコースアウト。
続く第二関門の「空からのマシンガン(激臭インク弾)」地帯でも、美雨はひらりと身を翻し、飛んでくるインクの弾を華麗に避けていく。
「こんなもの、当たるわけないでしょ!」
一滴のインクすら浴びることなく、完璧な身のこなしで第ニ関門を突破した美雨。
そして最後の地雷ゾーン――。足元にびっしりと敷き詰められた怪しげなスイッチを前にしても、彼女の足取りは微塵も揺るがない。スペインでの過酷な特訓で鍛え上げられた動体視力と平衡感覚をフルに活かし、地雷の隙間を縫うようにして軽やかにステップを踏んでいく。
背後で他クラスの生徒が地雷を踏み抜き、盛大にモフモフの鳥の着ぐるみに変身して「コケコッコー!?」と叫ぶ声を背に聞きながら、美雨は見事に第2組の1着でゴールテープを切った。
「ふう……どうにか、無傷でクリアできたわね」
額にうっすらと汗を浮かべながらも、涼しい顔でゴールインする美雨。観覧席の恵や帆波たちから「お疲れ様、さすがだね!」「完璧な走りだったよ!」と大きな歓声と拍手が送られる。
※
第三組の桔梗も素早い動きを駆使しながら無事に突破し、地雷ゾーンへ。すると、彼女は素早い跳躍を仕掛け、地雷ゾーンをあっという間に跳んで行く。その光景に誰もが驚きを隠せない中、桔梗は余裕でゴール。しかも第一着だ。
「残るは俺の番だな」
残るはフィレモン。そのまま第四組も始まり、彼も問題なく障害物をくぐり抜ける。そのまま全ての関門を乗り越えてゴールするが、いきなり足元にある地雷を踏んで爆発に巻き込まれた。
「あっ、しまった! 爆発地雷を用意していました!」
「やっぱり……」
モルタデロはハッとした表情である事を思い出し、波留加たちは呆れてしまう。これも一つのお約束としか言えないだろう。
※
「いつもいつも余計な事をしやがって!」
「勘弁してくださいよ!」
モルタデロは車椅子に乗るお婆さんに変装し、ハンマーを持つフィレモンから逃げていた。この光景に他クラスからは爆笑の嵐。しかし、鈴音たちは苦笑いで見つめていた。
「取り敢えず障害物もトップで終わったけど、次の騎馬戦はどうなるかね。ここは波留加たちに掛かっているわ」
「OK。私たちの手で勝たないとね!」
鈴音からの忠告に、波留加、愛里、麻耶、比瑪、ひよりの五人が笑顔で応える。
騎馬戦は数が多いほど有利になるが、Sクラスからは五人が出場。果たしてどうなるのか。
ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)
障害物競走はお約束展開となりました。
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