モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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オフェリアよ。長縄では皆が頑張る姿を見て感動したわ。後で彼らに駆け寄ろうとしたけど、何故か皆逃げたけどね……なんでかしら?
さあ、今日も始まるわよ!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第54話 Sクラスのチアリーディング

「さあ、続いてのプログラムは――特別エキシビション! Sクラス女子十人による、スペシャル・チアリーディングパフォーマンスです!!」

 

 放送委員の気合の入ったアナウンスがグラウンドに響き渡った瞬間、観客席の空気が一変した。

 先ほどまで長縄の激闘や障害物競走でボロボロになり、地面に這いつくばっていたはずの男子生徒たち――特に須藤、池、山内の三人を含む全校の男子の目が、カッと怪しく血走る。

 

「おい、マジかよ……! チアリーディングってことは、あの最高の戦闘服(スポブラ&ジャージ)で踊るってことか……!?」

「うおおおっ、生き返ったぁーーっ! 俺のスマホのバッテリー、全快だぜ!!」

 

 先ほどの疲労や怪我などどこへやら、男子たちはまるでゾンビが蘇生するかのように一斉に跳ね起き、カメラ機能を開いたスマートフォンをピッとグラウンドに向けて構え構える。その執念と素早さは、もはや一種の超能力と言っても過言ではなかった。

 そんな男子たちの熱視線を浴びながら、トラックの中央へと堂々と歩み出るSクラスの女子十人――鈴音、帆波、恵、桔梗、美雨、比瑪、ひより、愛里、麻耶、そして波留加。

 彼女たちが身にまとっているのは、いつものスタイリッシュなスポーツブラとジャージズボンだ。

 

「やれやれ。まさか男子たちがこの演技で復活するとはね……」

「まあ、今回はバクテリオ博士の発明品も無し、モルタデロさんには大人しくしてと言ったからね。やるからには盛り上げないと!」

 

 恵の苦笑いに麻耶はウインクしながら応えた後、彼女たちはそれぞれの配置につく。Sクラス女子たちのアクロバティックなチアリーディングに、男子たちは興奮しながらこの時を待っていた。

 

「まさかここで男子たちが復活するとはね……それによって……」

 

 平田が苦笑いしながら向こうを見ると、女子たちが座り込みながら須藤たちをジト目で見ていた。今の光景を見て呆れるのも無理ないが、男はケダモノだと感じているのも少なくない。

 

「無理もない。だが、ここで休憩するのは良い事になる。あれは異常過ぎる一部としか言えない」

「そ、そうかな?」

 

 綾小路の推測に平田が苦笑いしたその時、Sクラスの演技が始まる。誰もが皆、この時を待っていた。

 音楽のテンポが加速するとともに、鈴音と帆波が中心となって美しくもダイナミックなフォーメーションを展開していく。

空中にふわりと舞い上がる愛里や麻耶を、比瑪や美雨が屈強かつしなやかな体幹で完璧にキャッチし、息ぴったりのピラミッドを瞬く間に組み上げてみせた。

 

「いっけえぇーーっ!!」

「ふっ!」

 

 その圧倒的な身体能力と、プロのスパイ顔負けのキレッキレな動きの融合に、観覧席の男子たちはもう理性を保つことができない。まさに神業としか言いようがない。

 

「うおおおっ、すげぇ……! 綺麗すぎるし、動きがもはや人間業じゃないぞ……!」

「写真、連写モードの手が止まらん……っ! スマホのストレージがパンクするぅ!」

「くっそ……! あんなの直視したら心臓が持たないぜ……!」

 

 池と山内が感動のあまり号泣しながらシャッターを切り続け、須藤もと鼻血を押さえたまま崩れ落ちる。多くの男子たちはこの光景を見て良かったと思い、幸福感に包まれていた。

 一方、平田や綾小路といった冷静な面々も、その完成度の高さには思わず目を奪われていた。

 

「いや、本当にただのチアリーディングの枠を超えているというか……運動神経のレベルが違いすぎるね」

「ああ。だが、彼女たちが本気で取り組んでいる以上、見惚れる以外の選択肢はないようだな」

 

 綾小路が静かに分析しているその時――。

 グラウンドの片隅、Sクラスの席でじっと様子を伺っていたモルタデロとフィレモンが、何かを企むような顔で顔を見合わせる。

 

「おいモルタデロ、今回はおとなしく見てろよ? 余計な発明品を出したら茶柱先生に冷たい目で見られるぞ」

「わかってますってボス! それに彼女から中盤になったらスイッチを押せと言われています!」

 

 モルタデロがフィレモンに説明をした直後、佐枝が片手を上げるのが見える。それにモルタデロがスイッチを押した途端、バルーンが次々と姿を現した。

 

「バルーンね。ここは私が行くわ!」

 

 比瑪が素早く動き出し、バルーンを多く掴む。そのまま彼女はジャンプしたと同時に、バルーンを使ったアクロバティックを披露し始めた。

 

「ほっほう、バルーンを使った空中戦とは、なかなか面白い趣向じゃないか!」

 

 グラウンドのあちこちから次々と膨らみ現れた巨大なカラフルバルーンの群れ。その中を、比瑪は忍者のような身のこなしで次々と飛び移りながら、まるで無重力空間にいるかのような超絶アクロバットを連続で決めていく。

 

「それっ、いっくよー!」

 

 バルーンを踏み台にして空中高く跳ね上がった比瑪が、宙返りを二回転しながら華麗に着地すると、観覧席からは「すげぇ……! 忍者かよあれは!」「サーカス顔負けの曲芸だぞ!」と、どよめきと大歓声が沸き起こった。

 その比瑪のパフォーマンスを皮切りに、他のSクラスのメンバーも次々とバルーンを取り入れた演出へと移行する。

 

「私たちも頑張らないと!」

「負けられないからね!」

 

恵と麻耶が大きなバルーンをパスし合いながらリズミカルにステップを踏み、弾けるような笑顔で観客席へハートマークを送る。これには池や山内だけでなく、他クラスの男子たちまでもが完全にノックアウトされていた。

 

「それ!」

「はい!」

 

鈴音がシャープなキックでバルーンを軽やかに弾き飛ばし、その軌道を桔梗が満面の笑みでキャッチして華麗なポーズを決める。息の合ったコンビネーションに、佐枝も思わず苦笑いを漏らしていた。

 

「ふふ、空の上から眺める景色も、なかなか風情があって良いものですね」

 

なぜかバルーンの上にフワフワと乗ったまま、片手に文庫本を開いたひよりがと優雅にページをめくっている。周囲の生徒たちは「いや、どうやって浮いてるんだよ!?」と激しくツッコミを入ざるを得ない。

 グラウンド全体が色鮮やかなバルーンと、Sクラス女子たちの圧倒的なパフォーマンスによって、さながら巨大なテーマパークのパレードのような狂騒と熱狂に包まれていく。

 

「ふははは! 我がT.I.A.のサプライズバルーン作戦、大成功ですぞ!」

「お前な。先生の指示であるにも関わらず、変な仕掛け増やすなよ……!」

 

 Sクラスの席でモルタデロが得意げに胸を張り、フィレモンがやれやれといった様子で頭を抱える。まあ、今回は佐枝の指示があったからなので、何も言えないが。

 

 ※

 

 そして、パフォーマンスはいよいよ最高潮のフィナーレへ。

 十人の少女たちがグラウンドの中央に一斉に集結し、全員で息を合わせて両手を大きく掲げると――頭上で大量の特製バルーンが一斉に弾け飛び、中からキラキラと輝く無数の紙吹雪と、なぜか「Sクラス、完全勝利!」と書かれた巨大な横断幕が盛大に空へと打ち上がった!

 

「「「これにて、エキシビション・パフォーマンス、終了ーーっ!!」」」

 

 少女たちの弾けるような笑顔と決めポーズとともに、チアリーディングが終了。体育祭はそのまま昼休みに入ろうとしていた。




ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)

チアリーディングは大成功。昼休みへ!

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