モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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フィレモンだ。昼食は普通に行われたが、最強決定戦はスポーツチャンバラとなった。だが、油断はならない。モルタデロが何するか分からないからな。
それじゃ、今日もスタートだ!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第56話 Sクラスは止まらない(前編)

 体育祭午後の部がきた。まずは綱引きだ。しかし、Sクラスが強過ぎるとの事で、何故かSクラスVSA〜Dクラスの連合軍の組み合わせとなっているが。

 

「恐らく我々が強過ぎるのが原因ですね。平田君、審判お願いします」

「まさかここでも審判をやるなんてね……じゃあ、公平に行きますね」

 

 グラウンド中央に引かれた白線の両脇に、異様な緊張感が立ち込める。

 審判を務める平田は、手に持ったフラッグとホイッスルを確認し、両チームの様子を見渡した。AからDクラスの連合軍は、午前中のダメージを微塵も感じさせないほどの気迫でロープを握りしめ、対するSクラスは鈴音を筆頭にどこか余裕の笑みを浮かべている。

 

「……それじゃあ、両チームとも準備はいいね? いきます……よーい!」

 

 平田の鋭いホイッスルの音と同時に、勝負の火蓋が切って落とされた。Sクラスにリベンジできるか返り討ちになるかが、この勝負の瀬戸際だ。

 

「うおおおおおっ! 今度こそ絶対勝つぞーーっ!!」

 

 須藤の絶叫を合図に、A〜Dクラス連合の男子たちが一斉に地面を蹴り、渾身の力を込めてロープを引きずる。その筋肉がミシミシと音を立てるほどの猛烈な引力だった。

 

「ふふ、無駄な努力その物ね」

 

 鈴音が涼しげな瞳でそう呟いた瞬間、Sクラス側の陣営から凄まじい威圧感と、どこからともなく怪しげな駆動音が響き渡る。

 ――そう、待っていましたとばかりにモルタデロが取り出したのは、またしてもT.I.A.製の怪しげなハイテク装置だった。

 

「お待たせしましたぁ! 綱引きにはやっぱり圧倒的なパワーですよ!」

「おい、また勝手に変な発明品を動かすな……!」

 

 フィレモンのツッコミが間に合うよりも早く、機械から放たれた強力なモーター音と、Sクラス全員の底知れない身体能力が完璧にシンクロする。

 

「なっ……!? うそだろ、引く力どころか重さがケタ違いすぎるっ……!?」

 

 わずか一瞬の攻防すら許されず、A〜Dクラスの連合軍はまるで木の葉のように引きずられ、勢いよく宙を舞ってグラウンドの彼方へ一直線にすっ飛んでいく。やはりお約束としか言えないだろう。

 

「「「うわぁぁぁーーっ、また空の旅だぁぁぁーーっ!?」」」

「勝者、Sクラス……! いや、いくらなんでも強すぎでしょ……」

 

 砂煙の向こうへ消えていく男子たちの悲鳴を聞きながら、平田は苦笑いを浮かべつつ、やれやれといった様子でSクラス側へと白旗を上げた。綱引きでも完全勝利となったが、いくら何でもこれはどうかと思う。

 

「リレーまでに帰ってくるかな?」

「多分数分で帰ってきますよ。落下してきますから」

「そんな理由ないだろ」

 

 桔梗の呟きにモルタデロはそう応えるが、フィレモンは冷静にツッコミを入れる。あれだけ空へ飛ばされたにも関わらず、数分で帰ってくるのはあり得ないだろう。

 

 ※

 

 お次は障害物パニックリレー。各クラスの男子たちは数分で戻り、何事も無かったように平然としている。恐らくギャグマンガの特性が、彼らの身体に染み付いたのだろう。

 

「無事に戻って良かったが、障害物リレーってどんなのだ?」

「分からない。だが……」

 

 須藤の質問に綾小路は首を横に振るが、とある場所を指さす。それはバクテリオであり、彼はスターターとして指定の位置に立っている。恐らく彼がコースを設計したに違いない。

 

「どうせ碌でもない展開になりそうかもな……」

 

 須藤が冷や汗を流した後、第一走者が配置に着く。Sクラスは美雨、恵、麻耶、波留加、鈴音という順番だ。

 

「さて、第一走者のみなさんは位置についてください。……ふふふ、今回の障害物コースは、私の最高傑作である『理不尽耐性テスト・特製デスロード』だからな。生きてゴールできることを祈るぞ!」

 

「おい、絶対にとんでもない罠が仕掛けられてるぞ……!」

「リレーなのに、ゴールできる気が全くしないんだけど……!」

 

 バクテリオが不敵な笑みを浮かべながら、スタート地点の脇で怪しげなスイッチボックスを構える。その姿を見ただけで、須藤や池、山内たちは先ほどの空の旅のトラウマが蘇ったのか、顔を真っ青にさせて後ずさった。

 

「それでは――よーい、スタート!!」

 

 バクテリオが押したピストルの音代わりに、グラウンドの地面が盛大にガタガタと揺れ動き、パニックリレーの幕が切って落とされた。

 Sクラスの第一走者である美雨は、表情一つ変えずにスッと身構えると、驚異的な反射神経で最初の障害物エリアへと飛び込んでいく。

 一方、他クラスの第一走者たちも必死に食らいつこうとするが、 足を踏み入れた瞬間、凄まじい熱気とツンと鼻を突く刺激臭が立ち込める特設プールが待ち構えていた。

 

「あちぃっ!?」

「辛いっ、目が痛いっ!!」

 

 他クラスの生徒たちは見事に悶絶してその場でひっくり返る。

しかし、美雨はあらかじめT.I.A.製の「耐熱防毒ゴーグル」を秒速で装着していたため、全く動じずバタフライの要領で優雅に泳ぎ切ってしまった。

 更にコースの途中で、なぜか巨大なタコさんウインナーがビュンビュンと音を立ててランダムに飛んできた。これも美雨は無事に乗り越え、第二走者の恵へとバトンを叩き込む。

 

「いっくよー、次はおねがいね、恵ちゃん!」

「任せてっ、華麗に抜けてみせる!」

 

 美雨からバトンを受け取った恵は、弾けるような笑顔を浮かべながら次のエリア――「回転地獄の平均台」へと軽やかに駆け出していく。そのままアクロバティックな動きを見せながら、余裕で突破。後続との差を広げまくった。

 

「よし! 麻耶!」

「ええ!」

 

 Sクラスは麻耶にバトンが渡され、彼女は軽快かつ洗練されたステップで次なる障害物エリアへと突入していく。

 待ち構えていたのは、バクテリオ博士が仕掛けた「全自動・磁力反発式巨大ピンボール地帯」だ。足元がランダムに激しく弾き飛ばされる難所だったが、麻耶は持ち前の優れた動体視力とバランス感覚で次々とピンボールをかわし、まるでダンスを踊るかのように華麗にクリアしてしまう。

 

「よし、完璧! 波留加、あとはお願いね!」

「オッケー! ここからは私の独壇場だから!」

 

 麻耶からバトンを受け取った波留加は、急いでスピードを上げ始める。ここで待ち構えているのは、前方のスクリーンから突如として立体投影された「理不尽な巨大3Dホログラム・メカ恐竜」だった。ガオーッと威嚇して進路を完全に塞ぐ凶悪な障害物である。

 

「なるほどね。けど、私の敵じゃないから!」

 

 波留加は素早い動きでメカを回避し、そのままアンカーである鈴音にバトンを渡す。ラストは障害物のないシンプルな実力勝負だ。

 

「私の方は普通ね。本気で行かせてもらうわ!」

 

 鈴音は素早く全力で駆け出し、ぶっちぎりでトップを死守。そのままゴールインする事に成功した。

 

「Sクラス勝利! これで優勝は確実!」

 

 放送委員の実況に、Sクラスの観客席は大興奮。今回の体育祭で圧倒的勝利による学年クラス総合優勝を収める事に成功したのだ。

 しかし、彼らの競技はあと一つある。ペアによる二人三脚は果たしてどうなるのか。




ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン) 

綱引きとリレーは圧倒的勝利で学年クラス総合優勝。しかし、二人三脚は何が起こるのか分からないので。

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