モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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一之瀬帆波です。後半戦がスタートしたけど、綱引きとリレーは余裕の勝利。トラップもあったけど、難なく突破に成功したよ! これでSクラスの優勝は確実となったけど、まだまだこれから!
さあ、今回も盛り上がろう!


第57話 Sクラスは止まらない(後編)

 お次は二人三脚となるが、Sクラスはこれが最終競技となる。因みにこの競技は仕掛け無しのガチの実力勝負である為、純粋な絆と力がカギとなるだろう。

 Sクラスからはモルタデロと帆波、フィレモンと桔梗が出る。他クラスの方は誰が出るかだが、Dクラスからは伊吹と龍園は確実である。

 

「さて、他のクラスは誰が出るかね。えーっと、Dクラスは龍園君と伊吹さんは決まっているけど、もう一組と他クラスはどうなるかだね」

「男女での二人三脚だからな。一体誰になるのやら」

 

 桔梗とフィレモンが話していたその時、須藤がとある女性をペアにしていた。よく見たら……何故か山内が女装されていた。

 

「おや、山内君。どうしたのですか?」

「俺たちはクラスの女性たちとペアを組もうとしたが、全員断って逃げられてしまった。それで俺が女装される羽目に……」

 

 モルタデロの質問に対し、山内は涙を流しながら説明していた。まさか彼が女装される羽目になるとは予想外としか言えない。

 

「もう一組は綾小路と池だが、彼もまた女装されているぞ」

 

 須藤が指さす方を見ると、池も女装の被害者でシクシクと泣いていた。あまりにも理不尽としか言えないだろう。

 

「まさか、他のクラスの男子も全員……?」

 

 帆波が信じられないといった様子で目を丸くし、AクラスやBクラスの陣営へと視線を向ける。すると、そこにはかつらの下に涙を溜め込み、スカートの裾を恥ずかしそうに抑えながら震えている男子生徒たちの悲惨な姿がズラリと並んでいた。

 どうやら午前中の障害物競走や騎馬戦、そして数々の暴挙によって女子たちの怒りを完璧に買ってしまった。「女装して出ないなら今後一切口をきかない」という恐ろしいクラス内裁判を経て、この屈辱的な処刑台(二人三脚)に立たされる羽目になったらしい。

 

「ふむ……! 男子のプライドを完膚なきまでにへし折った上で、女装のデータを収集するとは。各クラスの女子たちの統率力、なかなかにスパイの教官顔負けの冷徹さですね!」

「感心してないで、モルタデロさんも真面目に準備しなさいよ!」

 

 モルタデロが手帳を取り出してメモしようとした瞬間、帆波の冷ややかなツッコミが炸裂する。

 その隣でフィレモンと組んだ桔梗が、怯える池と淡々と並ぶ綾小路を一瞥し、くすくすと笑っていた。

 

「いやぁ、世の中には色々な苦難があるものね。でも、仕掛け無しのガチ勝負なら、私たちも手加減なしでいかせてもらうから」

「そうだな。本気で頑張るとするか!」

 

 桔梗が不敵に微笑むと、フィレモンも頷く。相手が誰であろうとも、容赦は無用だ。

 

 ※

 

 そしてグラウンドの中央。スターターの位置に立つ教員の合図とともに、いよいよ最後の競技である二人三脚のスタートラインに緊張が走った。

 

「それでは、二人三脚決勝……位置について、よーい――」

 

 パンッ!!

 

 乾いたピストルの音がグラウンドの空気を切り裂いた瞬間、各ペアが一斉に飛び出した。因みに女装の男性陣はブルマと体操服の姿であり、そう簡単に転ぶ事はないだろう。

 

「ふん、格好だけは一人前か。だが、足並みが揃わなけりゃ意味がねぇんだよ!」

「確かにそうかもね」

 

 スタートダッシュを決めた龍園が、周囲の視線を気にすることなく怒涛の勢いで引っ張っていく。伊吹も抜群の運動神経で息を合わせ、凄まじいスピードでトップ集団に食らいついていた。

 一方、その脇を通り過ぎていくのは――ブルマと体操服に身を包んだ、精神的ダメージ極まりない一部の男子生徒たちだ。

 

「うおおおっ、見ないでくれぇーーっ! 俺の青春は今日ここで死んだぁーーっ!!」

 

 池が絶叫しながら、涙を流しつつも驚異的なスピードで足を動かす。その隣で、綾小路はなぜか一切の表情を崩さず、モデルのような無機質なステップで淡々と距離を詰めていく。そのシュールすぎる光景に、観覧席からは爆笑とドン引きの歓声が入り交じっていた。

 

「池君と山内君はご愁傷様だね……二人にとっては良い経験となるんじゃないかな……」

 

 観客席の平田が苦笑いしている中、モルタデロペアとフィレモンペアがトップに。こうなるとSクラスの独断場と言えるだろう。

 

「チッ、こんなところで負けてられるかよ! ん?」

 

 龍園がスピードを上げようとしたその時、隣に女装された石崎を見つける。しかも彼は恥ずかしさのあまり、涙を流していた。

 

「お、おい、石崎……!? お前までその格好で何やってやがる……!」

 

 突如として視界に飛び込んできた、かつらを被りブルマ姿で号泣しながら走る自クラスの不良・石崎の姿に、さすがの龍園も思わず動きを止めてしまった。

 その瞬間、ガッチリと結ばれていたはずの二人三脚の布紐がピキッと悲鳴を上げ、足並みの揃っていたはずのコンビネーションが完全に崩壊する。

 

「龍園さん、恥ずかしすぎて前が見えないっすよぉーーっ!!」

「てめぇがよそ見したせいでバランスが……! うわっ、おい! 伊吹、傾くぞ……っ!」

「ちょっと、何やってるのよ龍園――きゃああっ!?」

 

 ドテッ!!

 

 盛大すぎる音を立てて、龍園と伊吹のDクラス最凶ペアは仲良く砂煙の中へと前のめりにダイブ。そのままゴロゴロと豪快に転がり、あえなく失速してしまった。

 

「あはは、Dクラスの皆さん、ドラマチックな転倒ですね!」

 

 その後を見たモルタデロたちが笑っている中、ゴールまで後僅かとなっている。残すはあと数百メートルだ。

 

「あと少しでゴールです、帆波さん! 我がT.I.A.の歴史に、また一つ新たな栄光の金字塔が……!」

「モルタデロさん、油断しないで! 後ろからすごい勢いで迫ってくる足音が聞こえるわよ!」

 

 帆波の警告通り、背後からは不気味なほど統率された無機質な足音が響いていた。振り返ると、ブルマと体操服姿でありながら一切の乱れを見せない綾小路ペア。それに負けじと気合を入れ直した須藤や神崎、葛城たちのペアが、凄まじい執念で食らいついている。

 

「くそっ、あいつら最後まで速えぇ……! だが、ここで負けたら男がすたるぜ!」

「須藤、足並みを乱すな! そのまま一気に突っ込むぞ!」

 

 誰もが皆本気で、ゴールを目指している。しかし、Sクラスはここでは終わらず、そのまま差を広げて行こうとする。

 

「残念だけど、ゴールはいただくわ!」

「おうとも、一歩も譲らんぞ!」

 

 フィレモンと桔梗のコンビが絶妙なタイミングで最後の一蹴りを決め、モルタデロと帆波も息を合わせてそれに続く。そのままSクラスのペアがワンツーフィニッシュ。モルタデロペア、フィレモンペアという順番の結果となった。

 他のクラスもゴールし、これで二人三脚は終了。残すはスポーツチャンバラによるAからDクラスの戦いだ。

 

「これで我々の出番は終わり。あとはAからDクラスによる最強決定戦のみです」

「じゃあ、私たちは観客席へ戻りましょう」

 

 全ての競技を終えたSクラスは、余裕の表情で観客席へ。残すはAからDクラスの戦いなので、あとは観戦するのみであった。




ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)

残すはAからDクラスの最強決定戦。果たしてどうなるのか?

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