さあ、この戦いはどうなるのか。スタート!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
体育祭も残すはAからDクラスによる最強決定戦。スポーツチャンバラとなっているが、防具に当てられてブザーがなった時点で失格となる。普通の競技であるが、クラス昇格を賭けた戦いでもあるのだ。更にこの戦いは女子生徒も勿論参加している。
因みにSクラスは該当していないので、観客席に座っている。あとはモルタデロがイタズラしないかだが、鈴音たちの指導があれば問題なし。
「いい? これはAからDクラスの戦いなの。私たちは見学よ」
「分かりました。ですが、これではつまらないので、賭けありの展開にしましょう」
「賭け?」
モルタデロの発言に鈴音たちは疑問に感じる。いくら何でもこの体育祭で、賭けをするのは予想外としか言えないだろう。
「そう、れっきとしたスリルがなければ観戦の醍醐味が半減してしまいます! 例えば――どのクラスがスポーツチャンバラを制するか、各々の持ちポイントを賭けて予想するのはどうでしょう?」
「今回は純粋なA〜Dクラスの戦い。余計なちょっかいは出さないで」
鈴音が冷ややかな視線をモルタデロに向けるのも無理はない。ここは大人しく観戦するのが一番だ。
広く取られた特設リング。AからD各クラスの精鋭たちが、頭部を防ぐメンテ付きのヘッドギアと胴着、そして安全性の高いエアクッション製のスポチャン刀を手にズラリと並んでいた。
「ふん、Sクラスの高みの見物とは気楽なもんだな。だが、ここで勝てばクラスの評価を一気にひっくり返せる。……行くぞ、お前ら!」
Dクラスの陣営からは、先ほどの二人三脚での不覚を晴らすかのように、龍園が鋭い眼光を光らせて刀を構える。その傍らには冷静に周囲を観察する山田や、闘志をみなぎらせる二十数名の生徒たちの姿があった。
対するAクラスからは葛城が微動だにしない鉄壁の構えをとり、Bクラスからは神崎が冷徹な分析眼で相手の隙を伺っている。Cクラスも綾小路を中心に、統率の取れた陣形を組んで待ち構えていた。
「それでは、始め!」
審判である平田の合図と同時に戦いがスタート。この戦いは油断できないだけでなく、クラス全体の実力を何処まで発揮できるかだ。
特設リングは一瞬にして、怒号とエアクッション刀がぶつかり合う鈍い音に包まれた。誰もが皆本気であるのは確実だ。
「おらぁっ、邪魔な壁から片付けてやるよ!」
戦闘の口火を切ったのは、やはりDクラスの龍園だった。闘争心を剥き出しにした彼は、周囲の牽制などお構いなしに猛然と突撃。Aクラスの鉄壁・葛城めがけて強烈な一撃を叩き込む。
「ふん、単騎特攻とは愚かな……!」
葛城は微動だにせず、構えた刀で龍園の豪快な一撃を受け止める。しかし、その衝撃の重さにわずかにバランスが崩れた瞬間、Bクラスの神崎が冷静なステップで背後から鋭い突きを繰り出した。
「隙ありだ、葛城君!」
「ぬっ……!」
AとBクラスの精鋭同士が激しく牽制し合う中、最も異彩を放っていたのはCクラスの中心に陣取る綾小路だった。周囲が激しく斬り結ぶ中、彼一人だけはまるで公園を散歩しているかのようにアンニュイな目をしている。そのまま飛んでくるクッション刀を紙一重で、ヒラリ、ヒラリと躱していく。
「あいつ……全く動揺せずに全部避けてやがるぞ!」
「Cクラスの陣形、綾小路君を囮にして完全に機能してるわね……」
観覧席からその様子を見守っていた桔梗が、面白そうに目を細めて呟く。綾小路の予測不能な動きは実に見事であり、これからどうなるのか気になるのも無理はない。
すると、観客席にいる有栖は優雅にお茶を飲みながら、あくどい笑みを浮かべていた。
「ふふっ、静かな観戦など退屈ですからね。これくらいのスパイスがあった方が、青春という名のドラマは盛り上がりますのよ」
有栖が上品に微笑みながら手元のリモコンを押し込んだ瞬間、特設リングの天井付近に設置されていた隠しハッチが勢いよくパカッと開いた。
不気味な羽音とともに、リングの上へ容赦なく放たれたのは……なんと、リアルすぎる特製のドッキリ用ラバーの大群だった。
「なっ……なんだこれ、蜂だっ……!? いや、待て、ロボットか……!?」
「きゃああっ!? こっちに来ないでよ!」
「っ! 毒針に刺されたら致命傷だ……!」
先ほどまで一触即発の睨み合いを続けていた龍園や葛城、そして前線に出ていた女子生徒たちが一斉にパニックを起こす。普段は冷静沈着な神崎も青ざめながらクッション刀をブンブンと振り回し、周囲の虫を追い払おうと必死にステップを踏み始めた。
「……流想定外だな。流石の俺も、この状況での省エネ回避はプログラムエラーを起こしそうだ」
いつもはアンニュイな目をしている綾小路さえも、頭上をかすめる怪しげな蜂の大群を前に、冷や汗を浮かべながらキレのある側転で華麗に回避する。もはやスポーツチャンバラではなく、完全に生き残りをかけたサバイバルゲームと化していた。
「ちょっと有栖! あなた、一体何を考えているのよ! 競技をめちゃくちゃにする気!?」
観覧席の最前線で、鈴音が信じられないといった表情でAクラスの陣営を睨みつける。しかし有栖は、優雅にカップの紅茶を傾けながら楽しげにクスリと笑う。
「あら、鈴音さん。ただのスパイスですよ。ピンチをどう切り抜けるかこそ、彼らの真価が試されるというものですわ」
「ほうほう、Aクラスの黒幕たる有栖さん、素晴らしい攪乱戦術ですな。まあ、これぐらいしないと盛り上がりませんし」
「アンタはそこで納得するな!」
有栖の意見にモルタデロが納得するが、それに鈴音がツッコむ。この二人を合体させてしまえば、絶対に碌な事にはならない。
「それにここまでしなければ盛り上がりませんので……っと、これは少々お手元が滑りましてよ?」
有栖がふと見せた油断――いや、計算された悪戯心か。彼女が指に引っかけていたおもちゃの手榴弾(安全なはずのジョークグッズだが、見た目は一級品の爆発物)は、クルクルと綺麗な弧を描きながら、蜂ロボットが飛び交うカオスな特設リングの真ん中へとポトリと落下した。
「おい……! なんかヤバいもん落っこちてきたぞ!?」
「ま、まさか本物か……!? 伏せろぉっ!!」
リング上で蜂を避けて踊り狂っていた龍園や葛城たちが、冷や汗を流しながら一斉にその場から逃げ出す。そのまま手榴弾は爆発を起こし、彼らを巻き込んでしまった……。
※
「おほほほ、もっと足腰を鍛えておきなさい!」
「待てぇーーいっ!!」
「今日こそその澄んだ目を濁らせてやる……!」
その後、試合は中止となり、有栖は須藤たちに追いかけられていた。
有栖は涼しい顔を装いながらも全力でペダルを回し、その背後を包帯まみれの龍園や葛城、須藤たちがと血走った目で追いかけ回す地獄絵図が展開されていた。Sクラスで起きた出来事が、まさか他クラスで実現するとは予想外としか言えない。
「こうなるのも無理ないわね……」
この光景を見た鈴音たちが呆れるのも無理なく、彼女たちはこの光景をずっと見続けるしか無かった。
こうして体育祭はSクラスの優勝で終了したが、バカげた結末に終わってしまった。今後も予測不能な展開が訪れるが、Sクラスなら問題なく乗り越えられるだろう。
ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)
お約束展開の結末となりました。
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