おっと! そろそろ始まりの時間だね。じゃあ、元気に頑張ろう!
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
Sクラスによる外出解禁が始まりを告げられ、三グループに分かれて行動開始。グラビア班、調査班、買い出し班に分かれての行動だ。
まずはグラビア班。佐倉は撮影を受けていて、モルタデロと長谷部が同行。因みに長谷部は佐倉の臨時マネージャーとして行動しているのだ。
「驚きました。まさか波瑠加さんが自らマネージャーとして立候補するとは」
モルタデロがなぜかテレビ局のチーフマネージャー風の派手なスーツとサングラス姿で感心したように声を漏らすと、長谷部波瑠加はれっきとしたプロのマネージャーのように腕を組み、冷ややかな視線を向けた。因みに彼女は制服姿である。
「当たり前でしょ。愛里が初めて外部でグラビアの仕事を再開するっていうのに、モルタデロさんやいつ暴走するか分からない変なスパイ組織に丸投げできるわけないじゃない。私がそばにいて、変な虫が寄らないようにガードしてあげないとね」
「波瑠加ちゃん……ありがとう。私、すごく心強いよ……」
撮影用の華やかな衣装を身にまとった佐倉が、控え室の鏡の前で頬を赤らめながら嬉しそうに微笑む。その表情は、かつてクラスの隅で怯えていた頃とは違い、どこか自信と輝きに満ちていた。
一億ポイントという莫大な財力、そしてT.I.A.が誇る完璧な要塞のバックアップがある今、佐倉にとって外部での芸能活動は、学校の目を盗む必要のない堂々とした誇りとなっていた。
「よし! それでは本日の撮影のスケジュール、完璧にサポートさせていただきますよ、愛里さん!」
「モルタデロさんは余計なことしないで、そこで大人しくお茶でも飲んでて」
モルタデロが張り切って胸を叩くが、長谷部がすかさず冷たくあしらう。その掛け合いを見て、スタジオのスタッフたちも「なんだか楽しそうなマネージャーさんたちだな」とクスリと笑っていた。
(こんなにもサポートしてくれるなら、そろそろ変わらないとね……)
佐倉は心の中で思いながら、ある決意を固める。それは自分自身を変える決意であるのは明らかであるが、どんな姿になるかだ。
※
調査班はフィレモン、椎名、堀北、櫛田の四人。椎名が地下にある図書館に魔法の本を発見した事で、四人は慎重に進みながら調査していた。
「おい、ひより。ここで合っているのか?」
「はい。ルートによればこの辺りです。地下にある図書館に魔法の本がありますので」
「魔法の本……? そんな非科学的なものが、T.I.A.の管理する地下施設に本当にあるというの?」
堀北は呆れたような、しかしどこか警戒を怠らない鋭い視線を向けながら、暗い地下通路の壁を懐中電灯で照らす。
「ふふっ、堀北さん、固いこと言わないの。こういう謎めいた場所って、なんだかワクワクしちゃうじゃない?」
櫛田は完璧なクラスメイトスマイルを浮かべつつも、その足取りは周囲の状況を完全に把握するかのように軽やかだ。彼女の本性がどうあれ、この探索において頼りになる戦闘・情報収集要員であることは間違いない。
「そうですよ! 伝承や古い文献には、時として科学をも凌駕する真実が隠されているものです。ほら、あそこに何か見えてきましたよ!」
椎名が嬉しそうにパッと駆け出す。
その視線の先――地下通路の突き当たりには、近代的なセキュリティゲートと、なぜか中世ヨーロッパの古城のような重厚な石造りの扉が奇妙に融合した、怪しげな区画が広がっていた。
「おいおい、待て待て! モルタデロがいないからって、お前たちまで冒険家気分になるなよ。ここはT.I.A.の極秘調査区画だぞ。変な罠が仕掛けられていたらどうするんだ!」
フィレモンが青ざめた顔で二人の背中を追いかけながら必死に声を荒げるが、知的好奇心に火がついた椎名と、任務の効率を重視する堀北の足は止まらない。
「フィレモンさん、心配しすぎです。行けばわかりますよ」
椎名が迷うことなく重厚な扉に手をかけ、押し開いた――。
ギィィィ……ッと重苦しい音が響き渡り、室内に差し込んだ光が照らし出したのは、壁一面にずらりと並んだ古びた書物の山、そしてその中央の台座にぽつんと置かれた、怪しく青い光を放つ一冊の分厚い古文書だった。
「あれが……『魔法の本』……?」
四人が息を呑んで見つめる中、その古文書がふわりと勝手にページをめくり始め、室内に奇妙な電子音と機械的なアナウンスが響き渡る。
《――警告。セキュリティ解除コードが入力されていません。これより、侵入者に対する『最終防衛プログラム』を起動します》
「っ……! やっぱり罠じゃないか!」
フィレモンが絶叫する中、部屋の四隅から突如として機械仕掛けの巨大なガーゴイルたちがガシャガシャと動き出し、冷たい赤色の光を放ちながら四人へと狙いを定めてきた。果たして彼らは無事に任務を終える事ができるのか?
※
買い出し班は茶柱、一之瀬、王、軽井沢の四人。彼女たちは既に買い出しを終えていて、皆がリクエストしたスパイ衣装も買っている。後は自分たちで衣装を改造するだけだ。
「にしても、今後スパイ活動をする時には、スパイ衣装が必要だなんて驚きました……」
「本部と学園からの命令だからな。制服のまま行ったら、怪しまれる恐れもあるからな」
軽井沢の意見に茶柱が冷静に説明。彼女たちが納得したその時、モルタデロ、佐倉、長谷部の三人が駆け付けてきた。しかし、佐倉はストレートヘアで眼鏡なしのイメチェンとなっているのだ。
「あれ? 愛里、イメチェンしたの?」
王が目を丸くして尋ねると、ストレートヘアを揺らし、眼鏡を外した佐倉愛里はふわりと優しい笑みを浮かべた。以前の様なオドオドした雰囲気が嘘のように消え去り、その表情には確かな自信と輝きが満ちている。
「うん……私、少しだけ変わってみようと思って。波瑠加ちゃんや、みんながこうして支えてくれたから……これからは、自分の足でしっかり前を向いていきたいんだ」
「すごいよ愛里ちゃん! めちゃくちゃ可愛いし、似合ってる!」
「ほんとだ、モデルさんみたい! これじゃ本職のグラビアでもっと人気が出ちゃうね」
一之瀬が両手を叩いて大絶賛すると、軽井沢も嬉しそうに頷く。担任の茶柱も教え子の変化を静かに見つめながら、小さく口元を緩めた。
「……悪くない判断だ。見た目を変えるだけでなく、内面から変わろうとする意志があるならな。その調子でSクラスの活動にも励むことだ」
「はいっ!」
佐倉が力強く返事をした、――その時だった。
「待て待て待てぇーーっ!! 早く逃げろ、ガーゴイルだぁーーっ!!」
けたたましい悲鳴と共に、地下通路の方からボロボロになったフィレモンが猛ダッシュで飛び込んできた。その後ろからは、冷徹な表情のまま鮮やかな回し蹴りで追跡してくるガーゴイルのパーツを粉砕した堀北と、飄々とした笑顔の櫛田、そして腕に分厚い古文書をしっかり抱え込んだ椎名が涼しい顔で歩いてくる。
「逃げ切れた……なんでガーゴイルがいるんだよ……」
「調査班の皆さん、お疲れ様です!」
フィレモンが冷や汗を拭いながらヘタリと床に座り込むと、一之瀬たちが声をかけた。これでようやく全員揃ったと言う事だ。
「ふふっ、色々ありましたが、無事に目的の『魔法の本』――いえ、T.I.A.の極秘機密文書を手に入れましたよ!」
「やれやれ……危うく命まで奪われるところだったわ。あんな罠を放置しているなんて、T.I.A.の管理体制もどうかしているけれどね」
「でも、みんなが無事でよかったですね♪」
椎名が青く光る古文書を嬉しそうに掲げて見せる。堀北は軽く息を整えながら、綺麗に制服の乱れを直した。櫛田は完璧な笑顔を振りまき、長谷部がやれやれといった様子でため息をつく。まさにいつも通りの展開だったとしか言えないだろう。
「まったく、そっちも大変だったみたいだね。……で、こっちはこっちで愛里が大イメチェン大成功ってわけ」
「素晴らしい! グラビア班も調査班も、そして買い出し班も――全員が見事な成果を挙げましたね!」
モルタデロが両手を大きく広げ、満面の笑みで宣言する。それに一之瀬たちも微笑み、フィレモンは安堵のため息をついていた。
「これより、我らT.I.A.特別Sクラスの全メンバーがここに集結しました! さあ、本日の大成功を祝して、我が自慢の要塞へ帰還しましょう!」
こうして、グラビアでの新たな一歩を踏み出した佐倉、機密と古文書を手に入れた調査班、そしてスパイ衣装の買い出しを終えた買い出し班――個性豊かな面々とトラブルメーカーのボスたちは、互いに絆を(強制的に)深めながら、自分たちの城である超要塞へと意気揚々と戻っていくのだった。
ED:Rock'n Rouge
互いに絆を深めながら、無事に任務完了しました!
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