さて、今回も始まるよ! 準備は良いかな?
OP:モルタデロとフィレモンのテーマ
キュッ、キュッと三階の運動ルームの床を蹴るシューズの音と、ドリブルされるバスケットボールの弾む音が心地よく響き渡る。
中間テストを完璧にクリアし、学年末に向けた緊張感が漂う中でも、Sクラスの体育の授業は活気と熱気に満ちあふれていた。
チームは5対5の本格的な紅白戦。
コートを縦横無尽に駆け回るのは鈴音と帆波、桔梗と愛里に美雨。更にひよりと波留加、比瑪と恵、麻耶の十人だ。普段の非日常的な任務とは打って変わり、青春真っ只中といった爽やかな汗を流している。因みに彼女たちはスポブラとジャージズボンだ。
「いくよ、帆波ちゃん!」
「うん、任せて!」
帆波からの絶妙なパスを受けた美雨が、鮮やかなドリブルで相手のディフェンスを抜き去り、ゴールへと正確なレイアップシュートを叩き込む。
対する鈴音も、冷静なコートビジョンでパスコースを完全に読み切り、鋭いインターセプトから速攻を主導する。桔梗やひより、波留加たちも抜群の運動神経とチームワークを発揮し、一歩も引かない白熱した展開を見せていた。
――だが、そんな真剣勝負の試合を、一筋縄ではいかせない男がいた。
コートの真ん中にデンと陣取るのは、なぜか審判服を着たモルタデロである。
「両チームとも素晴らしい動きです! ですが、ここで私のスペシャル判定ルールを導入します!」
「「「「「「「「「「余計なルールを追加しないでよ!!」」」」」」」」」」
十人の女子生徒が一斉に放ったツッコミの合唱は、体育館の天井を揺らすほどの迫力だった。彼女たちは現在モルタデロのツッコミの役割を持っていて、彼のやり過ぎを止める役目も持っているのだ。
「やれやれ。モルタデロは相変わらずだな……」
フィレモンがため息をついたその時、佐枝がこの場に姿を現す。恐らく何か用事があるだろう。
「ヴィセンテ総監から呼び出しがあった。新たな任務だ」
「任務ですか?」
佐枝の説明に鈴音たちはキョトンとする。体育の最中に任務があるのは初耳であり、どんなのか聞く必要はあるだろう。
※
「集まったな。では、これより任務を説明する。場所はフィレモンたちが前に行った地下の迷宮だ」
「地下の迷宮?」
Sクラスで作戦会議が開かれ、ヴィセンテからの命令に恵たちは疑問に感じる。フィレモンたちが以前行ったのは知っているが、この場所に何があるのか気になるのも無理はない。
「そうだ。あの地下の迷宮――表向きは旧校舎の地下に眠る広大な未開通エリアとされているが、その最深部には、かつて我がT.I.A.が封鎖したはずの『古代の遺産』と、今回の闇バイト組織が隠した極秘のバックアップサーバーが繋がっていることが判明した」
ヴィセンテ総監の重々しい声が、Sクラス全体に響き渡る。
モニターには地下深くに入り組んだ複雑な迷宮の3Dマップと、怪しく明滅するセキュリティコードが映し出されていた。
「責任者は逮捕したものの、組織の海外口座の暗号キーや、まだ国内に潜伏している可能性のある『共犯者』のリストがそのサーバーに眠っている。それを完全にハッキングし、データを押さえるのが今回の任務だ」
「なるほど……。以前私たちが探索したときも数々の罠や仕掛けがあったけれど、今回は組織のセキュリティがさらに厳重に掛けられているってわけね」
鈴音は腕を組みながら、鋭い眼光でモニターの迷宮図を分析する。
確かに地下迷宮には危険な罠がいっぱいある。下手に近づけば一発でやられる恐れもあるのだ。
「大丈夫! 迷宮の構造は複雑だけど、私のハッキング技術とみんなのチームワークがあれば、どんなセキュリティも必ず突破してみせるよ!」
「さすが愛里ちゃん、頼もしいですぞ! ですが、地下の迷宮といえば……お約束の『転がる大岩』や『天井から落ちてくるタールの罠』、そして『行き止まりの美女の幻影』など、ロマンと危険が満載のスポットですな!」
「モルタデロ、余計な死亡フラグを立てるな……! お前が一番最初にその罠を踏み抜きそうだから、後ろを歩かせるのも怖いわ!」
隣で愛里がポータブル端末を操作しつつ、頼もしい笑みを浮かべる。そんなモルタデロの発言にフィレモンがやれやれといった表情で頭を押さえるが、その場の空気は自然と戦闘モードへと切り替わっていた。
「よし、体育の授業はこれにて強制終了! 全員、直ちにスパイ衣装および迷宮探索用の特殊装備に換装しなさい。目的地へは学内の隠しエレベーターから直行する!」
佐枝の冷徹かつ素早い号令のもと、モルタデロたちはキビキビと動き出し、あっという間にスパイ衣装に変化。そのまま学内の隠しエレベーターへと向かい出した。
※
「へ? 旧校舎の近くに古代の遺産が?」
その頃のCクラスでは、山内の発言に須藤たちが興味深そうに聞いている。まさかこの旧校舎にそんなのがあるとは予想外だ。
「これはとある噂だが、江戸時代に何者かによって大判小判が埋められたとの事だ。確か江戸に神出鬼没の盗賊たちだったが、その後に捕まって釜茹でにされたけどな」
「はあ? 大判小判って、お前それ完全に時代劇の見過ぎだろ!」
「いや、マジだって! 図書室の古い郷土史の資料に少しだけ載ってたんだからな!」
池が呆れたようにツッコミを入れると、山内は必死に反論する。確かにこの件については郷土史の資料にあるのは確実だが、この件についてはSクラスも絡んでいるので、あまりお勧めできない。
「まあ、この件については気になるが……Sクラスも黙ってないと思うぜ。それに下手したら犯罪組織に巻き込まれる恐れもあるし」
「「あ」」
須藤の意見に山内と池はその場で凍りついてしまう。確かにSクラスと同行すれば、モルタデロによって酷い目に遭う。お約束展開で追いかける羽目になるだろう。
「そうだな……って、あれ? あそこにいるのはDクラスじゃないのか?」
「?」
山内が窓の外を見ると、龍園と伊吹、石崎の三人が歩いているのが見えた。恐らく彼らは旧校舎の地下に立ち寄り、財宝を手に入れようとしているのだろう。
「本当だ! けど、あいつらは終わったかもな……あのSクラスに見つかったら、何されるか分からないぞ」
「おいおい、あいつらマジであの旧校舎の地下に入る気かよ……?」
須藤と池が冷や汗を流しながら呟く。いくら何でも危険過ぎるし、クラスも崩壊するんじゃないかと思うだろう。
※
窓の向こうでは龍園と伊吹、石崎の三人が周囲を警戒しながらも、足早に旧校舎の怪しげな裏口へと消えていくのがバッチリと見えていた。
「ククク……噂の大判小判か。そんなお宝が眠っているなら、俺たちが先にいただいておくのも悪くないな」
作戦会議の数分前、龍園はニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、石崎と伊吹を引き連れて旧校舎の敷地内に侵入していた。
伊吹は腕を組みながら、周囲の物々しい空気に眉をひそめる。
「おい龍園。いくらなんでもこんな古い旧校舎の地下に、大判小判なんて転がってるか? なんだか嫌な空気だぞ。まるで何かの軍事施設か、ヤバい秘密基地みたいじゃないか」
「だからこそ面白いんだろ、伊吹。学校側がひた隠しにしている秘密のエリアに、一獲千金の財宝……。これを見つければ、俺たちのクラスの状況が一変するかもしれないぜ」
「龍園さんの言う通り! 行けば分かる!」
龍園と石崎の意見に伊吹もやれやれと頷き、同行する事に。だが、この行為が破滅を生む事を、この場にいる誰もが気付いてなかった。
ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)
地下迷宮の宝はどちらが先に手に入れるのか?
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