モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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長谷部波留加よ。地下迷宮にあるサーバーを探す事になったけど、まさかDクラスまで来るなんてね。こうなると徹底的に彼らより早く手に入れないと!
さあ、今回も盛り上げましょう!

OP:モルタデロとフィレモンのテーマ


第64話 地下迷宮の危険な罠(前編)

 モルタデロたちは地下迷宮に到着し、慎重に進みながら歩いている。そこにはモンスターたちもいるので、用心しなくてはならない。 

 

「ともかく、この事を他の人たちに見られたら大変な事になるわ。もし、他の奴らが来た場合は、誰であろうともボコボコにしないとね」

「それならみーちゃんが頼りになるわね。トラップお願い」

「ふふっ、任せてよ! T.I.A.の技術力を結集した『特製お仕置きスパイ・トラップ』、たっぷり味あわせてあげるんだから!」

 

 美雨が目を輝かせながら、オーバーオールの胸ポケットから次々と奇妙なアイテムを取り出す。

 床に仕掛けられたのは、踏んだ瞬間に相手をぐるぐる巻きにして天井へ吊るす「高速伸縮粘着ワイヤー」と、触れると強烈な笑いガスが噴き出す「爆笑スフィア」だ。

 

「よし、これで良し! 秘密を覗き見に来る不届き者がいたら、まとめて盛大に返り討ちにしてあげるから!」

「みーちゃん、罠のクオリティが高すぎて逆に怖いんだけど……。まあ、一般生徒に秘密を知られるよりはマシか」

 

 波留加が苦笑いしながらも、美雨の職人技とも言える手際の良い罠の設置を見守る。すると、奥の方からドタバタと慌ただしい足音と、野太い叫び声が響いてきた。

 

「おい、なんだこの通路! 行き止まりじゃねぇか!」

「待て石崎、天井から変なタールが垂れてきてるぞ……っ!?」

「うわっ、なんだこれ、ベトベトして――うおおおっ!?」

 

 ――ズシーン!! と轟音と共に、通路の奥から見事なまでの「転がる巨大スフィア(大岩)」が猛烈な勢いで転がってきた。

 その直前を、ジャージ姿で絶叫しながら全力疾走で逃げる龍園たちの姿がバッチリと飛び込んでくる。

 

「あれ? 龍園たちだ!」

「なんでDクラスの不良どもがこんなところにいるのよ!?」

 

 まさかの龍園たちの姿に皆が唖然。彼らがドタバタした足音が遠ざかっていくのを確認し、フィレモンは改めて気を引き締めた。

 

「油断するなよ。この地下迷宮には、組織が放った野生のモンスターや、旧校舎の古くから棲みつく厄介な生物もウロウロしている。サーバーのある最深部まで、一気に駆け抜けるぞ!」

 

 フィレモンの号令のもと、Sクラスの十二人と佐枝は再び慎重に歩みを進める。

 苔むした石畳の通路を抜けると、目の前には幾重にも分かれた複雑な分かれ道と、怪しく青く発光するセキュリティ・ドローンが飛び交う巨大な地下ホールが姿を現した。

 

「おや、あそこに見えるのは……今回の闇バイト組織が残した無人警備ロボットです! なかなかレトロでかっこいいデザインですが、我がT.I.A.の特製ハッキング・デバイスの前には赤子同然ですな!」

 

 モルタデロが意気揚々と前に出ようとした瞬間、その警備ロボットがガシャンと不気味な音を立てて赤く発光した。絶対に嫌な予感しかしない。

 

「モルタデロ、余計な刺激を与えるな……! 来るぞ!」

 

 フィレモンが鋭く声を張り上げたその時、ロボットから一斉に電撃ビームが放たれた。しかし、ひよりが魔術でバリアを発動し、弾き返す事に成功した。

 放たれたビームは何処かに行ってしまったが、恐らく龍園たちの元へ向かったのだろう。

 

「今の内に!」

 

 ひよりの合図に全員が頷き、この先にある秘宝とサーバーがある場所に向かい出す。早めに任務を終わらせなければ、二度と出られない可能性があるからだ。

 

 ※

 

 目的のサーバー室へと続く通路を駆け抜けるSクラスの面々。背後からは、ひよりが弾き飛ばした電撃ビームが直撃したのか、あるいは美雨の仕掛けた「爆笑スフィア」を踏んだのか、龍園たちの盛大なくしゃみと怒号が遠くから聞こえてくる。

 

「くっそ、なんだこのベトベトしたワイヤーは……って、笑いが止まらねぇぞおい! 伊吹、石崎、笑うな!」

「ぶっ、龍園さん、顔が真っ黒になってるっスよ……!」

 

 Dクラスの面々が散々な目に遭っている声を背に聞きながら、モルタデロたちは迷宮の最深部へと到達した。

 目の前に現れたのは、苔むした巨大な石造りの神殿のような空間だった。その中央には、古代のモニュメントと不気味に赤く明滅する最新鋭の闇バイト組織のバックアップサーバーが異様なコントラストを放って鎮座している。

 

「愛里、サーバーのハッキングをお願い! 私たちは周囲の警戒と防衛に徹するわ」

「うん、任せて!」

 

 愛里が素早く端末を接続し、驚異的なスピードでキーボードを叩き始める。モニターのプログレスバーがみるみるうちに上昇していく。やがて無事に成功し、今回の任務も問題なくクリアだ。

 

「あとは古代の遺産……あった!」

 

 恵と麻耶は古代の遺産がある場所に移動し、慎重にその石造りの台座へと近づいた。

 

「せーのっ……!」

 

 二人で力を合わせて重い石の蓋を持ち上げると、中から現れたのは――金色に輝く大量の古銭、そして見慣れないレトロな形状の超小型スパイガジェットの山だった。

 

「って、これ本当に大判小判じゃない! 前に山内くんが言ってた噂、あながち嘘じゃなかったんだ……!」

「うわ、すごい……でもこれ、歴史的価値があるだけじゃなくて、なんだか怪しい機械も混ざってるよ?」

 

 麻耶が目を丸くして驚くと、恵もキョトンと首をかしげる。そこへ、モルタデロがピョンピョンと跳ねながら割り込んできた。

 

「おぉ! それこそ我がT.I.A.がかつて極秘裏に江戸時代へタイムスリップ……ではなく、密偵を潜入させた際に見失った『初代・入れ歯型通信機』と『黄金のバナナ型文鎮』です! まさかこんなところで眠っていたとは!」

「……やっぱりT.I.A.の忘れ物じゃない。歴史的遺産でも何でもなくて、ただの組織のゴミ溜めじゃないのよ!」

「ははは、歴史のロマンです!」

 

 鈴音がジト目でモルタデロを睨みつけると、モルタデロはごまかすように笑う。まさかこの場所がゴミ溜めとは予想外であると、彼以外誰もが思っているだろう。

 

「まあ、サーバーのデータ回収も完了した。この遺産も回収して本部へ持ち帰れば、今回の任務は完璧にクリアだ」

 

 佐枝が腕を組み、満足げに頷く。

 その時、通路の奥からボロボロになった龍園たちの「ううっ、頭が痛ぇ……なんだあのベトベトした罠は……」といううめき声が、いよいよこの部屋へと近づいてくるのが聞こえてきた。見つかったら大事だ。

 

「っと、Dクラスの不良どもがここまで来ちゃうね! 長居は無用、全員撤収!」

 

 帆波の鋭い合図とともに、Sクラスのメンバーと佐枝は動き出し始める。愛里が完全ハッキングして回収したサーバーデータと「古代の遺産」をしっかりと抱え、隠しエレベーターへと一目散に駆け戻っていくのだった。

 

 ※

 

 数分後。

 フラフラになりながらようやくサーバー室にたどり着いた龍園、伊吹、石崎。しかし、そこはもぬけの殻となった空間と、そこに取り残された「謎のバナナの皮」のみだった。

 

「……おい、大判小判はどこだ?」

「知るかよ……っていうか、ここ何なんだよ……」

 

 Dクラスの面々が頭にハテナを浮かべる中、地上へと戻ったSクラスの面々は日常の制服へと着替え直し、何食わぬ顔で午後の授業へと向かうのであった。




ED:淋しい熱帯魚(恵&麻耶バージョン)

財宝は無事に回収しました。

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