モルタデロとフィレモン よう実スパイ大作戦   作:蒼牙王

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皆さん、椎名ひよりです。
スパイ服がようやく決まり、新たな一歩を踏み出しました。私もワンピースとジーンズが気に入っています。
さて、皆さん。今回も物語がスタート! では、どうぞ!

OP:モルタデロとフィレモン


第8話 生徒会長の訪問

 Sクラスでは中間テストとスパイ訓練で大忙しだが、皆で協力しながら熱心に取り組んでいる。

 中間テストは堀北、一之瀬、椎名、王などのアドバイスもあり、授業については問題なく進んでいる。後はテストで本番の実力を出せば、全てが完璧だ。

 スパイ訓練はモルタデロとフィレモンの指示で、誰もが確実に成長している。特に椎名はモルタデロの変装をやろうと考えているが、流石にフィレモンたちに止められていた。真似をしたら馬鹿な事になると予測しているからだろう。

 

 ※

 

 そんなある日、本校舎にある生徒会室。堀北鈴音の兄である堀北学が、生徒会役員から報告を受けていた。

 

「Sクラスか。まあ、騒動はなくて良いが、近付いたら酷い目に遭うのは確実と言われているな」

「どうしますか?」

「まずは見学としよう。鈴音が大変なのはよく分かるが、モルタデロという奴も気になるからな」

 

 学は椅子から立ち上がった後、妹の鈴音のいるSクラスへと向かい出す。果たしてどうなるのか気になるが、何事もない事を祈るしかないみたいだ。

 

 ※

 

 学は自分の目でその実態を確かめるべく、Sクラスの本部へと足を運んでいた。

 

「……ここが、噂のSクラスか」

 

 要塞のような近未来的な外観を目の当たりにしつつも、学園の生徒会長である学は冷静な足取りでエントランスをくぐり抜けた。Cクラスの龍園たちが「絶対に近づくな」と恐れをなした魔境だが、学にとっては単なる学内の調査対象に過ぎない。

 中に入ると、そこには意外すぎる光景が広がっていた。帆波やひより、そして元Dクラスの面々が広々としたロビーの机を囲み、真面目に中間テストの勉強に励んでいる。スパイ訓練の合間とは思えないほど、和やかで落ち着いた雰囲気だ。

 

「あっ、兄さん」

「真面目に取り組んでいるな。モルタデロは?」

「それが……」

 

 鈴音が言い切ろうとしたその時、その静寂を盛大にぶち破るように、吹き抜けの天井から何者かが突然ぶら下がってきた。その正体は――なぜか全身を分厚い国語の辞書や教科書で覆い尽くしたモルタデロだった。

 

「おや、これは生徒会長殿! 我が要塞へのご視察、心より歓迎いたします!」

「……君は、いったい何をしているんだ?」

 

 生徒会長としての威厳をかろうじて保ちつつも、学は思わず眉間を押さえてフリーズする。今までこんな人物は見た事ないからだ。

 

「ふふふ、まもなく中間テストということで、私が自ら『歩く試験対策本』に変身したのです! さあ、私の体をめくればどんな難問もスラスラと……って、わわっ!?」

 

 モルタデロが調子に乗って身動きした瞬間、ロープがスルスルとほどけ、見事に床へと真っ逆さまに落下していった。

 

「変な事するからよ!」

(最近、堀北さんがツッコミ役になっているような……)

 

 フィレモンに対して鈴音のツッコミが炸裂。それを聞いた桔梗は心の底から思いながら苦笑いしていた。Sクラスに入ってからは、ツッコミ役がピッタリ似合うのも無理はない。

 

「鈴音。いつもモルタデロはこんなのか?」

「ええ。本当に大変としか言えません……」

 

 学の質問に対し、鈴音は盛大なため息で応える。彼の大ボケには本当に困った物であり、自分がしっかりしないといけないとの事だ。

 

「あと、Sクラスの施設についても案内しないとね。軽井沢さん、兄さんのガイド宜しくね」

「任せて!」

 

 鈴音からの頼みを受けた恵は、学を連れてSクラスの案内をする事に。他の皆は勉強を再開した。

 

 ※

 

「成程。他のクラスが攻め込まない理由がよく分かったが、モルタデロについては異常としか言えないな……」

 

 学が恵の案内を受けながら、要塞の至れり尽くせりな設備に感心して小さく呟いたその時だった。

 

 ピピッ――! ガガガガガーーッ!!

 

 要塞全体に鳴り響く、けたたましい赤い警戒警報音。

 ロビーの壁に設置されたメインモニターがパッと切り替わり、校舎の敷地内に侵入した怪しい影の映像が映し出された。

 

「なっ、なんだのこのアラートは!?」

 

 学が驚きの声を上げると、ロビーで勉強していた帆波やひよりたち、そしてモルタデロも動きを止める。

 モニターに映っているのは、先日のテロリストとはまた別の、学園の裏口から忍び込もうとしている不審な男たちの姿だった。どうやらSクラスの機密情報を盗み出そうと企む別の組織の工作員らしい。

 

「外部からの侵入者ですね。では、実戦開始です!」

「みんな、戦闘態勢に入るわよ!」

 

 鈴音が鋭い声を上げ、その場にいたメンバーが一瞬で臨戦態勢へと移行し、制服からスパイ衣装へと変化する。かつてのDクラスでのギスギスした雰囲気は微塵もなく、息の合ったチームワークがそこにはあった。

 

「兄さん、少し見ていてください。私たちがこの学園を守ってみせますから!」

「……ふっ、いいだろう。見せてもらおうか、君たちの成果を」

 

 学が腕を組んで静かに見守る中、鈴音を先頭にしたSクラスの女子たちが一斉に動き出した。自分たちの学園を守る為、ここで立ち止まる理由にはいかないのだ。

 

 ※

 

 学園の裏口通路。

 侵入者の男二人が学園内をコソコソと移動している時、背後からスルスルと忍び寄る影があった。

 

「あのさぁ、勝手に人の家に入ってくる不法侵入者って、何処のどいつかしら?」

「なっ……!?」

 

 恵が挑発的な笑みを浮かべて声をかけた瞬間、男が振り返る間もなく、桔梗が華麗なフェイクを交えた足払いで見事に体勢を崩させた。

 バランスを崩した男が倒れこむところに、王が(なぜか四次元機能付きのオーバーオールの胸ポケットから取り出した)麻酔パチンコを正確に命中させ、一瞬で眠らせる。

 

「一人目、確保!」

「ふふっ、連携バッチリだね♪」

 

 もう一人の男が慌てて銃を取り出そうとするが、その隙を逃す鈴音ではない。

 彼女は鋭い踏み込みから風のような速度で間合いを詰め、見事な回し蹴りを男の側頭部に叩き込んだ。

 

「そこ!」

「グエッ……!」

 

 二人の侵入者は抵抗する間すら与えられず、ものの数秒で綺麗に床へと沈み込んだ。帆波がすかさず手際よく拘束ロープを取り出し、完璧に縛り上げる。

 

「お疲れ様! みんな、完璧なコンビネーションだったね!」

「ええ、日頃の訓練の成果がしっかり出ましたね!」

 

 帆波と愛里が互いにハイタッチを交わし、波瑠加もうんうんと頷く。初めての実戦となる任務は無事に成功し、自分たちもスパイの一員として自覚する事ができたのだ。

 

 ※

 

 数分後。

 綺麗に拘束された侵入者たちを警察に引き渡し、要塞のロビーに戻ってきた鈴音たち。そこには学とフィレモン、茶柱、そしてモルタデロの四人が待っていた。

 

「兄さん、お待たせしました。侵入者の身柄の確保を完了し、二人は警察に引き渡しました」

 

 鈴音は息一つ乱さず、堂々とした態度で学に報告する。

 その光景を目の当たりにした学は、驚愕を通り越して深く納得したように頷いた。

 

「……素晴らしい。かつてDクラスで孤立していた鈴音が、これほどの仲間たちと完璧な連携を見せるとはね。……Sクラス、侮っていたわけではないが、想像以上の実力だ」

「でしょう、生徒会長殿! 我がT.I.A.特別Sクラスは、いついかなる時も完璧な要塞であり、最強のチームなのです!」

「お前は何もしてないだろ!」

「確かにそうだな」

 

 モルタデロが胸を張ってドヤ顔を決めると、フィレモンがすかさず激しいツッコミを浴びせる。茶柱は相変わらず冷静だが。

 学は、その騒がしくも温かい(そして圧倒的な戦闘力を誇る)空間を見渡し、小さくフッと笑みをこぼした。

 

「……これなら、この学園の古いシステムも、本当に君たちがひっくり返してしまうかもしれないな。期待しているぞ、鈴音、そしてSクラスの諸君」

「「「はい!」」」

 

 学からのエールを受けたSクラスの生徒たちは、一斉に敬礼をしながら応える。こうして生徒会長のお墨付きをも得たSクラスは、さらなる高み(とカオス)へ向けて、今日も一歩を踏み出していくのであった。




ED:Rock'n Rouge(帆波バージョン)

Sクラスの勢いは止まらずです!

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