バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる 作:冰藍雷夏
『いらっしゃいませ~! いらっしゃいませ~!』
『ようこそ、ようこそ、お客様~!』
『ご注文は野ウサギですか〜?』
カストの地下。
転移門をくぐるとおかしな人形たちが接客する露店、屋台、レストランなどの食に関する店が異形たちによって接客されるダンジョンだった。
「……これはなんとも摩訶不思議なダンジョンだな」
通常、モンスターは知能がそれほど高くはなく、言語能力を有するのも上級者ダンジョンの奥まで行かないと出くわさない。
それがどうだ?
ここのモンスターとも異形の存在ともとれる曖昧な奴らは客もいない場所で商売をしている。
「………そんな未発見のダンジョンが都内のレストランにあるとはな」
しかし、不思議な奴らに殺意は感じられない。一定の知識があるように見受けられる。
このタイプのダンジョンは初めて入る。
未知のわくわくと少しの怖さが入り交じったダンジョンだな。
「……今回は管理局の監視もなし、管理されていない未発見ダンジョンでの単独行動。最高だな」
こういうダンジョンの場所にはお宝が眠っているケースが多い。
ジャンヌ店長に見つからずに隅からすみまで探索開始だ。
「亭主」
『はいはい、何だいお客様。スライム焼きそばでも注文かい?』
魔法使いみたいな異形とのコミュニケーションを取ってみる。
このダンジョンでの何かしらの情報が分かるかもしれない。
「いやいや違う。蜘蛛のモンスターの素材なんだけど、これをあげるからこの世界のことを教えてくれないか?」
『蜘蛛の?……ほほう~! 良い素材だね。貰っておくよ』
「は? いや、ちょっと!」
持ってた素材を奪われた?
一瞬でだと?
「極東の素材かい?……いいねいいね。もらっとくよ」
「いや、懐にしまうなよ! このダンジョンの情報くれ、魔法使いの婆さん」
「爺さんだって? ワシはピチピチのギャルだぞ」
どこがだよ。
どこからどう見てもよぼよぼの婆さまじゃねえか。
「お礼するから着いてきな。聖堂にね」
「聖堂だと?」
「……いいから着いてきな。殺るなら先手必勝がいいよ。そうしないとあんた等はいつ襲撃されるか分からないからね」
なんだこいつ?
アルと同じ感じ……底知れない何かを感じるんだが。
「襲撃?」
◇
ボロアパートに着いたのじゃ。
そしてわらわたちを裏切り、先に帰ったフルーたちを呼びに来た。
「あ? あのぼったくり店長の名はジャンヌと言ったのかでありんす?」
「ひもじい……早く戻って来てよ。2人共」
数日振りに会った1人と1匹は少しだけ痩せこけていたのじゃ。
「そうなんじゃ禿げ狐よ」
「禿げ狐言うなでありんす!……それになぜそんな大切なことを先に言わなかったでありんすか。このままでは、あのクソガキが危ないでありんすよ」
「うむ。1人で先にダンジョン内に入っていたぞ。宝探しをすると言っておったのじゃ」
「宝探しでありんす!? 妹の聖女はともかく、姉の騎士王は今のあの小僧では太刀打ちもできないでありんすよ。小僧とは「主従の輪」で繋がっている身、小僧が死ねばわっちの首がどうなるかも分からんでありんす~! 龍娘、わっちの「シロンの玉」はどこでありんす?」
相変わらずうるさい狐じゃのう。
ご主人様なら前よりも魔改造したので大丈夫じゃろうに。
「シロンの玉ならここにあるぞよ。お主、雌なのに下品じゃのう。もう少し恥じらいを持つべきではないか?」
「それを早く寄越せでありんす! 今回は特別にお前たちの味方側に立ってやるでありんすから。さっさと小僧を助けに行くでありんすよぉ!」
……初めて会って以来、シロンがこんなに慌てることがあったかのう?
あれ? 今回は本当に色々と不味いのじゃ?
「九尾・変化京―――――ウォオオオオオオオ!! 行くぞ! 龍娘、フルー! 小僧を助けてわっちの首が吹き飛ぶのを防ぐでありんす!!!!」
「おお、でかいのじゃ、禿げ狐から黄金のお毛毛が生えてきたのじゃ」
「全部そぎ落として売れば大金持ち!」
この日の夜、都心の夜空に九本の尾を持つ巨大な狐が空を飛んだと世間は騒いでおったと、シルフィーから風の知らせをもらったのじゃった。
◇
魔法使い婆さんに案内されること十数分。
地下水路を抜け、全体が白い大聖堂みたいな建物の中へとやって来た。
「……あんまり声は立てるんじゃないよ。本部の連中に聞かれたら厄介だからね」
「本部? なんだよそれ」
「まだまだ弱いあんたが知る必要がないことさね。黙って息を殺してな。ベールは絶対に取るんじゃないよ」
「お、おう」
ハリー・○ッターに出てくるような姿隠しのベールを渡された俺は、何がなんだか分からないまま婆さんの言うことに従う。
黙っていること5分くらい経った時、ことが動き出した。
大聖堂の扉が開き、金髪のジャンヌ店長と
「………片方の金髪が聖女で表の世界で生きている。もう片方の銀髪が聖騎士で秘匿管理局で働いている」
「秘匿!? むぐぉ!?」
婆さんの臭い手に口を塞がれた。
な、なんてことをしやがる。シロンと同じくらい臭いじゃないか。
「静かにしな。会議が始まるよ」
会議?
「……………………」
「ハロー、ハロー、ハロー、騎士王ジャンヌ……いえ、秘匿管理局所属のフローライトがここに」
大聖堂の中央は十二の席が用意された謎空間だった。その1席に座ったのはジャンヌ店長じゃなく、銀髪の女性……たしかフローライトとか言う女性だった。
『……ザッ……こんにちは〜! こんにちは〜! 東の國から〜! こんにちは〜 こんにちは〜 世界の皆様〜 ケラケラケラケラ!!』
『…………九尾の気配が消えたね。死んだの? ジャンヌ、フローライト』
他の席にも半透明な体のピエロと……羽の生えた妖精のような奴が現れた。
「架空映像だね。ああやって奴らは世界中のダンジョン内で連絡を取り合ってるんだ」
「なる…ほど?」
なんでそんなことをこの婆さんは知ってるんだよ。
『
「はい、現在行方不明です。一般的な情報は妹が、管理局側にはわたしのスパイに情報収集させてます」
『お~! 流石、流石、第二師団長姉妹~! 有能、有能、有能ですね~!』
『それよりもボクは少し心配だね。極東に戦力を集中し過ぎてない? 過度と言ってもいい。師団長クラスが3人も取られてるなんて、これじゃあヨーロッパエリアの秘匿の仕事が遅れまくるよ』
「ですがそれは仕方ありません。ユーラシア大陸の秘匿案件たちの最後に辿り着く場所は、スパイ天国“日本”です。この国のダンジョン治安が維持されなければ世界の均衡は保たれません」
『保つもなにも、それで師団長クラスが行方不明になったら不味いんだって。だから早く戻って来てよ、フローライト』
「水虎と玉藻を救い出したら戻りますよ、妖精王。それではこれにて定期報告会は終わりにしましょう。少々用事もできたし」
『あっ! 待ってよ! 話はまだ終わってないよ! 援軍に来てほしいんだ! 大図書館がさぁ……ブツンッ!』
『オホホホ、そっちの応援はあちしが手伝いましょう。フローライトさんはやることができたようですしね。1人で殺れますかな?』
「ええ、お気遣いに感謝します、プリン殿」
『えぇ、喜劇王はなんでもお見通しなので……では武運を……ブツンッ!』
どうやら会議が終わったようだ。
そして……
「………どうされました? ジャンヌお姉様?」
「このダンジョン内ではフローライトと呼んで下さい、聖女ジャンヌ……ええ、ええ、わたしたちは聖なる聖石により選ばれた対になる聖女と聖騎士。試練の時来たり――――因縁深き邪龍の血肉を持つ者が来たり。排除、排除排除排除排除排除排除排除しなくてはなりません――――銀聖・一閃……死になさい!!! 誰の許可を得て、この聖なる聖女を司る大聖堂に足を踏み入れるか? 愚か者!!」
光の銀閃が俺へと向かって来る。
「おい、婆さん。バレたぞ! どうすんだ……てっ! もうあんな所に逃げてやがる!?」
「馬鹿たれ! 何やってんだい! 逃げるんだよ!」
魔法使い婆め、見かけによらずなんつう足の速さだ。
「いや、今はそうじゃねえ――――
口から火の玉を凝縮して放つ。
飛んでくる斬撃を防ぐのと煙幕による目眩ましだ。
「あれは真也君?……どうしてこんな所に居るんですか?」
「後をつけられたのでしょうね。それとわたしたちの姉妹の秘密もバレてしまいました。消しましょう! ジャンヌ」
「で、でもフローライトお姉様……」
「……消します!」
銀の甲冑と銀の長剣を持った騎士が怒声を上げてやって来る。
「……あの殺気マジかよ」
本物の殺意を抱いた存在が俺を本気で殺そうと動き出した。