バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる 作:冰藍雷夏
ポヨンッ!
頭全体に柔らかい感触が広がる。
なんだこの感覚は? まるでマシュマロ肌みたいな――――
「…………ん?」
「スゥー……スゥー……ご主人様~!」
ただの金髪巨乳ドラゴン美少女の柔らかいおっぱいだった。
「てっ! 誰だお前ッ!」
「ふにゃぁ~? おはようございますなのじゃ、ご主人様よぅ……眠」
「二度寝するな! この状況を説明しろ! 厄災ドラゴン!」
俺、全裸。
ドラゴン娘、全裸。
そんな状態で、俺を大きなお乳の谷間で包み込み気持ち良さそうに眠っている……たしか名前はアルビオン。
「そうだ! 俺はアルビオンの尻尾…ドラゴンテールを食べて……アルビオンの尻尾が生えて?」
意識を覚醒させた俺は、アルビオンのお尻辺りを見ると昨日切り落とされていたはずの尻尾がウネウネと動き回っていた。
朝食、アルビオン……いや、アルの奴が絶品の肉サラダ朝食を振る舞ってくれるというので食べている。
「わらわの尻尾はだいたい5分程で再生するのじゃ、そんなの当たり前なのじゃ。地球の森羅万象じゃろう? おお、そういえば、ご主人様はわらわの尻尾がニョキッ!と再生する前に気絶したのじゃったな。可哀想にのう」
「どんな森羅万象だ。どんな……しかし、この肉サラダ旨いな。いったいこんな新鮮な肉をどこから」
ニョキッ!
「わらわの尻尾、ドラゴンテールじゃ。そして、タイミング良くニョキッ!と生えてきたじゃろう?」
「おええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
「は、吐き出すでないわ! それはわらわの血肉なのじゃぞおおぉ!! ご主人様よう」
その後、アルのお馬鹿に無理やり完食させられて、昨夜よりも強力な火を口から吹けるようになってしまった。
「くそぉがよう! 朝からなんつうもん食わせてくれてんだ! このホームレスドラゴン娘、完食させやがって、おかげで1限目に間に合わなくなったじゃねえか!」
「何じゃ? 間に合えばよいのかのう? それならば、わらわがその大学というやつの所まで飛んで送って行ってやるのじゃ」
「は? なに言ってんのお前。一限目開始までもう20分もな…い?」
いきなり立ち上がり外へ出て首元をゴキゴキ鳴らしたかと思えば、アルの奴身体パキパキ言わせてどんどん巨大化していっている?
「ごぎゃあああああああああああああああああ!! それでは大学と言う者の元へと参ろうぞ、ご主人様よ!」
「ぎぃやああああああああああああああああああ!!」
俺は音速を越える速度で空を飛んだんだ。
数百メートル級はあるであろうドラゴンの背中に乗って空を飛んだんだ。
そして一限目には開始15分前に楽々と着いた。
◇
「死ぬかと思った。なんだあの化物は?」
「何が化物なの? 真也《しんや》くん」
「うぉ? シルフィーか? おはよう」
「おそようだよ~! 今日も遅刻ギリギリ登校は駄目だよ」
「ん? あぁ、悪い。朝から色々あったのだよ」
「そうなの? 何か困ったことがあったらいつでも言ってね。私たちは長い付き合いなんだからさぁ。ね?」
幼馴染みでエルフ族のシルフィーが話しかけてきた。
流石はエルフ、今日も美少女だな。
「たくよう。朝から自傷料理なんか食べさせやがって、アルの奴はよう。許せん」
「アルって誰?」
「え?」
「アルって誰? 料理してもらったの? アルって誰? 幼稚園からずっとストーカ……一緒にいる私に隠し事ってなに? 真也くん。浮気は駄目だよね?」
「……………………」
「ねぇ? 何か言ってよ! 何が悪いの? 幼馴染みで可愛い私の何が悪いのかな? 真也くん? ねぇ? ねぇ? ねぇ? ねぇ?」
シルフィーの目のハイライトが消えてとても怖いのでスルー、その後俺は真面目に授業に集中した。
そういえばアルの奴、俺を大学に送り届けた後変なこと言ってたな。
(追手が来てないか見張りに行って来るのじゃ、お昼は、わらわが丹精《たんせい》込めてご主人様に作ったドラゴンテールの巻き寿司を頬張るのじゃぞ。行って来るのじゃ、ごぎゃあああああああああああああああああ!!)
何だったんだあれ?
「つうか、また昼飯がドラゴンの肉かよ。どうなってんだドラゴンテール……めちゃくちゃ旨いけどよ」
『ピー、メッセージは一件です……真也くん今どこに居るのかな? 勝手になんでシルフィーの前から居なくなるの? 何かやましいことでも抱えてるの? それなら一回真也くんのお家にお邪魔していいかな? 真也くんの幼馴染みであるシルフィーには、それができる権利があるはずだよね?……以上です』
「…………怖」
午前の授業が終わると同時に、誰も来ない旧校舎へと避難して来たんだが。
プルプルと鳴り止まない俺のスマホ。
「シルフィーの奴、何かとんでもない勘違いしてないか? なんでいきなり機嫌悪く…」
「見つけた。貴方の身体から奴の手がかり」
「は? いやいや、そんなわけあるか。ちゃんと気配は殺して…」
「―――氷刀」
「は? ちょっと待て! なんでいきなり攻撃を……つっ!」
真後ろから問答無用の一撃。
誰だよいったい?
「蒼い服? 魔女のコスプレイヤーか?」
「違う、我は奴を追いかける者。君から漂う姫の手がかりを吐いてもらおう―――氷刀・振り」
「は? 大学内で刀を振り回すな!……いや、氷の刀かそれ?」
「……随分と冷静な手がかり君。ますます怪しい人」
蒼い魔女のコスプレイヤーが氷の刀を俺へと振るう。
どんな非日常だよ?
俺の貧乏で平穏なキャンパスライフを脅かさないでくれよな。
「おらッ! 真剣白刃取りじゃ!」
「掴もうとしても無駄。掴んだ瞬間、身体が凍っ……て、タオル?」
気づかれたか?
鞄の中に入っていたコンビニ退職祝いでアホ店長から押し付けられた白タオルだ。
それを蒼い魔女に投げつけて、氷の刀と接触した瞬間に両手でキャッチして……刀の弱点を見抜いて叩き折る。
「おらっ!」
パキンッ!
「そ……んな? 私の氷刀が折られちゃった? 貴方、すごく戦い慣れているの?………かくなるうえは―――氷柱」
蒼い魔女の頭上に鋭利な氷の柱が出現する。
「何だ? そのイカれた大きさの氷塊は?」
「半殺しにして連れていく。私は貴方を一般人とは認めない――――氷柱・投擲」
大きな氷塊が俺の真上へと落ちてくる。
このままあれを喰らえば俺は間違いなく死ぬ。
「どんな昼飯だ。俺はただアルのドラゴンテールの料理を食ってただけなのに、どんな理不尽な死にかただよ!」
ふと、ダンジョン探索者として活躍していた時の苦い思い出が走馬灯のように思い出される。
俺はまた死にかけるのか?
いきなり降って湧いたような理不尽に屈服しないといけないのか?
違うだろう。そんな人生!
くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
誰か……いや、違う。
こういう時、自分の力で理不尽には抗うものだ。
そして、そんな力を俺は昨日の夜に手に入れたじゃないか。
龍魔法とか言う意味の分からない魔法をよう。
「たしか、漫画でサスケが口から火を吐く時は口の面積を小さくしていた。硝子細工も、上手く一点に集中させるために中が空洞化した道具を使ってたな」
「……何をぶつぶつ言ってるのかな? 君は私に半殺しにされて着いて行くんだよ」
「行くかアホ、俺はお前に屈しない。そして受けてみろよ、龍の吐息ってやつをよう!――――火口龍炎(ドラゴンブレス)!!」
右手の親指と人差し指で輪っかを作り、口はひょっとこのように尖らせる。
そうすれば、昨日の夜のようにデタラメに口から吹かなくて済む。
狙いを定めた一点集中高火力の火炎放射を放つことができた。それを落ちてくる氷塊へと放ち――――
「嘘? 私の氷柱が全て溶かされた?」
「それだけじゃねえよ。あんたの後ろも取った。寝てろ!」
蒼い魔女の首根っこに強烈な手刀を噛ます。
「な? いつの間に後ろ……に? 貴方なに……もの?」
意識を失い倒れ込む蒼い魔女。
「単なる苦学生だ。アホ、喧嘩売る相手を間違えたな。魔女っ子コスプレイヤーさんよう」
俺はこの日、ドラゴンブレスをマスターし、口の中に小さな4本の牙が生えたことに気がつかなかった。